新型1シリーズが登場
BMWは2024年6月5日、新型「1シリーズ(F70)」を欧州で発表しました。4世代目モデルとなる 新しい1シリーズは、どのような系譜をたどってきたのでしょうか。BMWの歴史とともに振り返りつつ、日本導入が待ち遠しい新1シリーズの注目ポイントについて解説します。
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アップデートの最大のポイントは、フロントマスク
BMW「1シリーズ」の4代目が発表された。新型1シリーズは登場から世代を経て、ひと言でいうなら正常進化したといえる様相だ。BMWといえばキドニーグリルと丸目4灯ヘッドライト、Cピラー下部がリバースカーブを描くデザイン(ホフマイスターキンク)という3つの要素を頑なに守っていたが、今やそれも新世代へと進化した。
そもそもキドニーグリルは背の高いラジエターをカバーするデザインで、ラジエターフードをセンターで支えるピラー、つまり柱が残り左右対称のフロントフェイスを作ったのがはじまり。これがライバルに対抗するBMWを象徴するデザインとなって、近代モデルにはブランドデザインとして取り入れているのだ。
丸目4灯ヘッドライトは、ボッシュやヘラなどの電装メーカーの汎用品を取り入れたのがはじまり。Cピラー下部がリバースカーブを描くデザインに関しては、冬の日照時間が短くなるドイツでなるべく太陽光を取り入れ、細いピラーをボディにしっかりと取り付けるための構造で、視界を広げる工夫が凝らされていた。
いうなればメーカーとしての苦渋の選択を逆手にとってBMWブランドとしてきたが、新世代の1シリーズでは垂直キドニーグリルの歴史的な常識を覆し、一部が斜めのデザインを用いた。ヘッドライトはディスチャージやLEDなどの普及で大きな反射レンズを必要とせず、すでに他のシリーズでも見られるように丸目とはいえなくなっている。
4代目の1シリーズは、プレスリリースの中で、そのような伝統などなかったかのように新しいフロントマスクとして解説される。その一方でCピラーのデザインは細いピラーでは横転に対してキャビンの安全性が確保できないと指摘された時代から太く強固になったものの、今回のプレスリリースでは久しぶりにこのデザインをホフマイスターキンクという古語を用いて解説する。これは唯一の伝統の継承といったところだろう。
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FF車にもドライブする楽しみを熟成させてきた
BMWといえば、一定の世代には「六本木のカローラ」と揶揄された時代がある。そのほとんどは「3シリーズ」で、基本モデルは実用的なパフォーマンスにとどまったものの、レースのグループAという車両規定によって「M3」が登場した。結果的にM3を開発したM社を人々に強烈に認識させ、M社によるバージョンを「Mスポーツ」として導入した。
このアプローチにより、デコレーションだけでなくスポーティなイメージを取り込むことに成功した。これは大きな成功体験として継承され、1シリーズにも「M2 クーペ」を導入したことで、「Freude am Fahren(フロイデ・アム・ファーレン=運転する歓び)」というスポーティなブランドであることを構築した。当然のように1シリーズにも、Mスポーツのバリエーションが当初から加わっている。
バリエーションの開発に長けているBMWは、4気筒/6気筒エンジンを長年にわたり熟成し、ヘッドを新設するだけで「M」のエンジンはクランクケースを共用。4気筒に4気筒をV型に合体させることでV8エンジンを生み出し、同様の手法で6気筒を12気筒へと発展させた。現代ではモジュールシステムを採用した開発で、効率が良いとされる1気筒あたり500ccというシリンダーを3つないし4つ合体させてターボを加えたのが、「ミニ」とも共有している1シリーズのパワートレインだ。ミニとの共有というのもブランドとしては一世一代の変革であって、FR車にこだわってきたレイアウトも、先代1シリーズからFF車になった。
居室の快適性ではFF車のライバルに後れを取らざるを得なかったBMWは、執拗にFR車の優位性を説き、運転する楽しみを突き詰めてきた。しかし、ミニを傘下に収めたことで、クライスラーが持て余していたペンタゴンエンジンを使って新世代ミニを世に送り出して以来、FF車にもドライブする楽しみを熟成させてきた。そしてブランドらしいキャラクターを実現するために研究開発に莫大な予算を割いた結果、1シリーズのFF化でその回収を狙った。
2代目3シリーズに4WDモデルが存在したが、今では「X5」以来、ローバーの買収に伴って本格的な4WDのノウハウも手中に収め、あくまでスポーティなフィーリングを前提にバリエーションを増やしている。先代がFF化した時のメーカー解説には、メーカーがこだわるFRというレイアウトにはユーザーはほとんど注意を払っていないという一文があった。だが、やはりBMWとしては取り込んだ技術とデジタル制御によってFR車に劣らない運転を楽しめるパフォーマンスを狙う。
しかし、ターボによる低回転からのトルクを発揮したコンセプトで、このモジュールエンジンは2000回転も回すことなくスピードに乗る。高回転でエンジンを回して操るというキャラクターは環境問題によって抑制されたが、新世代の1シリーズも巧みなマーケティング戦略によって、Mスポーツ、Xドライブ、ツインターボにモーターアシストなどの設定により、BMWらしいシリーズとしてファンの期待を裏切ることはないだろう。市場投入は2024年10月の予定だが、日本導入時期などは未定だ。新型1シリーズの各モデルのスペックは下記のとおりだ。
■BMW 120(本国仕様)
・全長:4361mm ・全幅:1800mm ・全高:1459mm ・ホイールベース:2670mm ・車両重量:1425kg ・エンジン形式:直列3気筒DOHCツインターボ ・排気量:1499cc ・エンジン配置:フロント ・駆動方式:前輪駆動 ・変速機:7速デュアルクラッチ ・エンジン最高出力:156ps/4700-6500rpm ・エンジン最大トルク:240Nm/1500-4400rpm ・モーター最高出力:20ps ・モーター最大トルク:55Nm ・システム最高出力:170ps ・システム最大トルク:280Nm ・ラゲッジ容量:300-1135L ・燃料タンク容量:49L ・サスペンション:(前)ストラット、(後)マルチリンク ・ブレーキ:(前&後)ディスク ・タイヤ:(前&後)205/55R17
■BMW M135 xDrive(本国仕様)
・全長:4361mm ・全幅:1800mm ・全高:1459mm ・ホイールベース:2670mm ・車両重量:1550kg ・エンジン形式:直列4気筒DOHCツインターボ ・排気量:1998cc ・エンジン配置:フロント ・駆動方式:4輪駆動 ・変速機:7速デュアルクラッチ ・エンジン最高出力:300ps/5750-6500rpm ・エンジン最大トルク:400Nm/2000-4500rpm ・ラゲッジ容量:380-1200L ・燃料タンク容量:49L ・サスペンション:(前)ストラット、(後)マルチリンク ・ブレーキ:(前&後)ベンチレーテッドディスク ・タイヤ:(前&後)225/45R18
■BMW 118d(本国仕様)
・全長:4361mm ・全幅:1800mm ・全高:1459mm ・ホイールベース:2670mm ・車両重量:1465kg ・エンジン形式:直列4気筒DOHCツインターボディーゼル ・排気量:1995cc ・エンジン配置:フロント ・駆動方式:前輪駆動 ・変速機:7速デュアルクラッチ ・エンジン最高出力:150ps/3750-4000rpm ・エンジン最大トルク:360Nm/1500-2500rpm ・ラゲッジ容量:380-1200L ・燃料タンク容量:49L ・サスペンション:(前)ストラット、(後)マルチリンク ・ブレーキ:(前&後)ディスク ・タイヤ:(前&後)205/55R17
■BMW 120d(本国仕様)
・全長:4361mm ・全幅:1800mm ・全高:1459mm ・ホイールベース:2670mm ・車両重量:1495kg ・エンジン形式:直列4気筒DOHCツインターボディーゼル ・排気量:1995cc ・エンジン配置:フロント ・駆動方式:前輪駆動 ・変速機:7速デュアルクラッチ ・エンジン最高出力:150ps/3750-4000rpm ・エンジン最大トルク:360Nm/1500-2500rpm ・モーター最高出力:20ps ・モーター最大トルク:55Nm ・システム最高出力:163ps ・システム最大トルク:400Nm ・ラゲッジ容量:300-1135L ・燃料タンク容量:49L ・サスペンション:(前)ストラット、(後)マルチリンク ・ブレーキ:(前&後)ディスク ・タイヤ:(前&後)205/55R17
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