■よくぞ承認された! ユニークすぎるデザインのクルマたち
よいデザインというのは感じ取る人それぞれなので「正解」というものは存在しません。ただし、多くの人に受け入れられるデザインは存在します。
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多くのユーザーに共感が得られるのが好まれるデザインであり、だれが見てもわかりやすいデザインともいえます。
しかし、かつて常人では理解が難しいデザインのクルマもありました。
そこで、ユニークすぎるデザインのクルマ3車種をピックアップして紹介します。
●オーテック ザガート「ステルビオ」
日本がバブル景気で沸き立っていた1989年、日産の関連会社のオーテックジャパンと、イタリアの自動車工房「ザガート」との共同開発によってオーテック ザガート「ステルビオ」が誕生しました。
ザガートはアルファロメオやランチア、アストンマーティンなどから仕事を請負い、少数生産の特別なモデルのデザインと生産をおこなう会社です。
ステルビオは2代目日産「レパード」のシャシをベースとして、デザインと組み立てをザガートがおこない、日本に輸入された2ドアクーペです。
限定200台のみの生産で、内装も上質な本革と選りすぐられたウッド素材をふんだんに使い、多くの工程が手作業という、まさにバブル景気を象徴するようなクルマでした。
外観のデザインは他に類を見ないほどユニークな造形で、過去のザガート作品との共通項はありましたが、カッコいいかどうかの判断が難しい出来栄えでした。
特徴的だったのがボンネットと一体になったフェンダーミラーで、これこそがステルビオのアイコンとなっていました。
ちなみに、品質的には難ありで、日本に輸入された後にも工場に持ち込み、手を入れる必要があったといいます。
●アストンマーティン「ラゴンダ」
いまから約100年前に設立されたイギリスの高級車メーカーのアストンマーティンは、これまで多くの名車を生み出してきました。
近年では大排気量、大出力のV型12気筒エンジンを搭載するクーペモデルや、流れるようなフォルムのサルーンを発売するなど、大いに話題となりました。
このアストンマーティンが1978年に発売したサルーン「ラゴンダ」は、それまで誰も見たことがないようなデザインとなっていました。
クサビのように先端にいくにつれて尖ったボディのことを「ウェッジシェイプ」と呼びますが、ラゴンダはまさにクサビにタイヤを付けたようなイメージです。
当時のスーパーカーにグリルを取り付けたようなフロントマスクは大きく前方にオーバーハングしており、ヘッドライトは角型4灯のリトラクタブルを採用。
トランク部分も大きく後方にオーバーハングし、フロントと同様に絞り込まれたデザインとなっています。
内装も本革と本物の木を使い、伝統的なイギリス製の高級車の作法で作られていますが、先進的なデジタルメーターを搭載するなど、王道ではない異端な雰囲気を醸していました。
■コンセプトは良かったもののデザインで失敗!?
●フィアット「ムルティプラ」
いま、コンパクトミニバンというと日本車の独壇場ですが、イタリアはコンパクトミニバンの先駆け的存在のクルマを作っていました。
それは初代フィアット「ムルティプラ」で、同社のコンパクトカー「600」の派生車として1956年に誕生しました。リアエンジンのRR駆動で、3500mmほどの全長で3列シート6人乗りという、優れたパッケージングのクルマです。
そして、1998年に発売された新型ムルティプラは同じく6人乗りのワゴンでしたが、デザインが衝撃的でした。フロントマスクはまるで両生類のようで、別体のようなキャビンはクルマにクルマがめり込んだようだとも揶揄されます。
ムルティプラは2列シートながら、前席に3人、後席に3人が乗車可能で、それを実現するため全長3995mm×全幅1870mmと、全長に対して極端に幅を大きくしましたが、この比率では見た目のバランスが良いとはいえませんでした。
ムルティプラのデザインは酷評され、さすがにフィアットは無視することができず、2004年のマイナーチェンジでフロント全体のデザインを大幅に変更します。
しかし、後期型はあまりにも普通すぎて、あえて前期型を好むファンも多くいます。
※ ※ ※
今回、紹介した3車種のような奇抜なデザインのクルマは、もはやなくなりました。
自動車メーカーは利益を追求する企業ですから販売面で失敗が許されないのは理解できますが、画一的なデザインばかりでは楽しみがありません。
何年かに1度くらいは、デザインが大いに話題となるようなクルマがあってもよいのではないでしょうか。
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