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市民のクルマの完成形 フォルクスワーゲン・マルチバンへ試乗 T7世代へモデルチェンジ

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市民のクルマの完成形 フォルクスワーゲン・マルチバンへ試乗 T7世代へモデルチェンジ

完成形といえるVWのワンボックス

フォルクスワーゲン・マルチバンは、1つの完成形にある。先代のイメージを展開させたスタイリングに、低いフロアが生む広大な車内空間と充実装備、多彩な仕様で、多くの市民のニーズに応える。

【画像】T7世代へ進化 フォルクスワーゲン・マルチバン 欧州の競合ワンボックスと比較 全124枚

フォルクスワーゲンはT6世代まで、このワンボックスを英国ではカラベルと呼んでいた。T7世代への進化と同時に、マルチバンへ改めたようだ。

タイプ2を想起させる見た目の純EV、最新のID.バズがショールームへ並ぶ日は近い。だが、こちらは慣れ親しんだ構成で成り立っている。グループ内の多くのモデルが利用する、MQBプラットフォームをベースにしている。

このMQBは、コンパクトなアウディA3も採用するもの。洗練性と汎用性の高さを、証明する事実といえる。

ライバルは、フォード・トランジットからシトロエン・スペースツアラー、メルセデス・ベンツVクラスまで幅広い。だが、いずれも商用車用のプラットフォームがベース。質感ではマルチバンに及ばない。

新しいT7世代で注目すべきは、プラグイン・ハイブリッド版の登場だろう。150psを発揮する1.4気筒ターボガソリン・エンジンと115psの駆動用モーターが組み合わされ、システム総合218psを発揮する。

すべてのパワーは、前輪のみに伝えられるFF。最長49kmを電気だけで走れる、駆動用バッテリーも搭載される。

従来的なパワートレインとして、150psの2.0Lターボディーゼルと、135psの1.5Lガソリンターボ、203psの2.0Lガソリンターボもラインナップされる。今回試乗したのは、後者の2.0L版だった。

2.0Lターボが生むクラスで称賛すべき走り

サイズ・バリエーションは、標準ボディと、オーバーハングが200mm長いロングボディの2種類。トリムグレードは、英国では基本のライフと上級のスタイルから選べる。

近年はボルボXC90やランドローバー・ディスカバリー、アウディQ7など、7シーターのSUVという選択肢が少なくない。それでも、スクエアなボディを持つマルチバンを選びたいという層は少なくない。その嗜好は明らかに異なる。

SUVの場合は、躍動的なスタイリングや威勢の良い走り、悪路走破性などが強みとしてある。一方のマルチバンは、圧倒的な多様性や実用性がストロングポイントだろう。

車内のフロアには堅牢なレールが敷かれ、5脚か4脚のシートをスライドさせたり、回転させたり、取り外すことも可能。センターコンソールを後ろにスライドさせ、テーブルを展開すれば快適なリビングを作れる。在宅ワークにも丁度いい。

シートはどの列でも快適。クッションは適度に柔らかく、頭上空間も広々としている。

ホイールベースは3124mmあり、車重2850kgと軽くはないものの、2.0Lガソリンターボ・エンジンは大きなマルチバンを力強く進めてくれる。このクラスとして称賛すべき走りに、パパやママも喜ぶはずだ。

フォルクスワーゲン・ゴルフやポロ GTIにも積まれる4気筒エンジンだが、最大トルクが32.5kg-mと太く、さほど回転数を高めずとも高速道路をこなせる。アクセルペダルを踏み込むと、明確にノイズが車内へ届くけれど。

T6と比べると新世代感が大きい充実装備

着座姿勢は、ワンボックスらしく起き気味。運転席はだいぶ前方にあり、長く伸びるリアに気を使うことも事実だが、運転は難しくない。座面位置が高いことで視界は良好。遠くまで良く見え、駐車時はボディサイズを掴みやすい。

サスペンションは、コーナリング時のボディロールを巧みに抑えている。ステアリングホイールの反応は、素早く滑らか。手に伝わる感触が薄く、やや軽すぎるものの、許容範囲といえる。

7速デュアルクラッチATの変速は、キビキビしていて好感触。合流などで素早い加速を求めると若干躊躇するような癖は、従来から変わらない。

今回の試乗では、高速道路で約160kmを走らせてみたが、燃費は12.7km/L。大きさや車重を考えれば、褒めて良いだろう。

ダッシュボードには大きなタッチモニターが据えられ、運転支援システムも最新のゴルフと同水準。高機能で扱いやすく、数年前のT6と比べると新世代感はかなり大きい。

ただし、多くの車載機能のインターフェイスがタッチモニターへ集約されている。安くない価格に見合った装備ではあるものの、すべての人が扱いやすいとは感じないと思う。

エアコンの温度調整ができるタッチセンサー式のスライダーは、夜間にイルミネーションが灯らず、暗い状態では操作しにくい。操作時にクリック感が伴わず、ステレオなどは意図通りに反応したのか、わかりにくいことも気になった。

技術的なアップデートで価格も上昇

T7世代へとモデルチェンジした、フォルクスワーゲンの大型ワンボックス、マルチバン。技術的なアップデートを受けてか、価格も大幅に上昇している。

今回の試乗車の場合は、ロングボディでスタイル・グレードの2.0Lターボガソリンに数点のオプションが追加された状態だったが、英国価格は6万779ポンド(約1015万円)。7シーターの上級SUVも、文句なく選べる金額となっている。

ただし、7名が座れるとしても、SUVの場合は全員の大人が快適に過ごせるとは限らない。フォルクスワーゲン・マルチバンなら、取外し可能なシートに、キャンピングカー風のテーブルも付いている。定評のある訴求力は、しっかり受け継いでいる。

フォルクスワーゲン・マルチバン・スタイル・ロング 2.0TSI(英国仕様)のスペック

英国価格:6万779ポンド(約1015万円)
全長:5173mm
全幅:1941mm
全高:1907mm
最高速度:199km/h
0-100km/h加速:9.0秒
燃費:11.0km/L
CO2排出量:204g/km
車両重量:2850kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:203ps/6000rpm
最大トルク:32.5kg-m/1500-4500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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