かつてクルマは10年10万kmがクルマの寿命といわれてきた。人間の平均寿命にあたるクルマの平均車齢は、2023年3月末現在で、平均車齢は9.34年と前年に比べ0.19年延び、31年連続して高齢化するとともに29年連続で過去最高齢となった。なかなか新車が買えないため、何とか長持ちさせている状況なのだろう。ということで、新車で購入してから10万、20万kmと長くつきあっていくために最低限、注意すべき点をピックアップした。
写真/ベストカーweb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:Kesuku@Adobe Stock)
10年10万kmはまだまだ通過点!? 20万km乗るためのクルマを長持ちさせるための最低限のメンテナンスとは
【画像ギャラリー】クルマを長持ちさせたいなら守るべきメンテナンスの秘訣はこれだ!(10枚)
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■最初が肝心? 点検と慣らし運転について
12カ月点検の存在は知っていても罰則はないので、受けたことがないという人が意外に多い
まずは点検について。ユーザー自らが目視等で確認する「運行前点検」と、法律で定められている「法定点検」がある。「法定1年点検(12ヵ月点検)」と、2回目以降の車検と同時期に行う「法定2年点検(24ヵ月点検)」がそれだ。
一般的に、「24ヵ月点検」は「車検」と同時に実施するため、未点検になることはないが、「12ヵ月点検」は何かと怠りがち。車検切れで公道を走ると重い罰則・罰金があるのに対し、法定点検は義務ではあるものの受けなくても罰則がないからだ。しかし、クルマを長持ちさせないなら12カ月点検は怠ることなかれ。
レヴォーグはマニュアルに「1.8万kmごとに1回の70km/h以上5分間走行」とレギュラーガソリンエンジンを推奨している
次に、昔からやらなくてもいい、やったほうがいいと論争が起きている「新車から1000km」の慣らし運転。現代のクルマのエンジン部品の工作精度は高く、さらにフリクション低減のための表面処理など摩擦が厳しい部分には施されていることも珍しくない。そのため初期のなじみに必要な運転は、ほとんど必要ない。
それでも摩擦がゼロではない以上、最初は慴動面(こすれながら滑り合う部分)にアタリがつくまで摩耗して金属粉が発生する。特に鉄粉は硬く、鋼材やそのほかの金属部品の慴動面に挟まるとその部分の摩耗を進めてしまうことになる。だから新車から走行1000km程度でエンジンオイルを交換する必要があるのだ。
これはエンジンだけでなく、変速機など駆動系にも通じるもので、理想を言えば駆動系のオイルも1000km程度で1回交換した方が機械のためにはいい。しかし、オイル交換には異物混入やオイル量の変化というリスクも伴うので、近年はオイル無交換という変速機(AT、CVT)も多い。
つまり、慣らし運転や小まめなオイル交換をしなくてもエンジンや変速機が壊れることはないが、機械としてコンディションの良い期間はそれだけ短くなり、燃費や走りのフィーリング(回転フィールの滑らかさや加速時の力強さ)は確実に低下していくことになる。しかもこれはハイブリッド車やEVにも通じる。
EVはモーターやバッテリーには慣らしは必要ないが、駆動系はエンジン車と変わらないし、後述するサスペンションなど駆動系以外にも慣らし運転がコンディションを左右する機構はある。
ターボ車は、ターボチャージャーの軸受け部の潤滑と冷却をエンジンオイルが引き受けている(冷却水を用いる水冷を併用しているタービンも多い)ので、オイルに対する要求はNAエンジンより厳しい。
ダウンサイジングターボならタービンも小型で、慣らし運転中はタービンもそれほど仕事をしていないから影響は少ないが、オイルが汚れやすい新車時は、最初のオイル交換まではあまりブーストをかけないような走りを心がけたほうがいいだろう。
各自動車メーカーの公式ホームページなどで、慣らし運転が必要かというユーザーからの質問に対して、見解を見ることができる。トヨタ、ホンダ、三菱、スズキは「慣らし運転は必要ありません」と回答している。
トヨタの見解は、「慣らし運転の必要はありません。ごく一般的な安全運転に心がけていただければ、各部品のなじみは自然と出てきます。お客様が新しいクルマに慣れるまでの期間を慣らし運転の期間と考えてください」。
ホンダは、「現在のクルマは、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、慣らし運転を行う必要はありません。ただし、機械の性能保持と寿命を延ばすためには以下の期間はエンジンや駆動系の保護の為に、急激なアクセル操作や急発進をできるだけ避けて下さい。
●取扱説明書に慣らし運転期間の記載がある場合→その期間
●取扱説明書に慣らし運転期間の記載がない場合→1000km走行までを慣らし運転の期間」としている。
日産は、「エンジン車には一般的には、エンジン本体や駆動系など、クルマの性能を充分に引き出すためには慣らし運転は必要です。走行距離1600km~2000kmまでは、適度な車速、エンジン回転数で運転してください」。
一方、e-POWERに関しては、「VCM(車両制御モジュール)によって最適にエンジンをコントロールしていますので慣らし運転は必要ありません。ただし、安全や環境をいたわるためにも、急加速などの無理なアクセル操作を控えることをお奨めします」と回答している。
スバルは公式ホームページなどで慣らし運転に関する公式な見解はないが、スバル各車の取扱説明書には次の通り明記している。「1000kmまでの距離を目安にエンジンの回転数は4000回転以下に抑えて運転してください」。
各メーカーの慣らし運転の空気感を読み解くと、結論は、必ずしも慣らし運転をやる必要はないが、愛車をいたわり、長持ちさたいなら行ったほうがいい、としたい。
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■労わるあまりエンジン回転を回さないのは逆効果
高速道路をクルージングしたほうがエンジン、クルマにとってはいい
逆に慣らし運転をずっと続けてしまうことでデメリットが生じることもある。慣らし運転が終わっても、気を遣うことが習慣になり、あまりエンジンの回転を上げずに乗り続けたほうがクルマに優しいと思っている人もいるかもしれない。
クルマの寿命を長くしたいなら、時々、ある程度の回転まで回し、一定の速度で巡行することが必要だ。燃料を噴射する量を多くし、油圧経路の堆積を防ぐためにエンジンを中回転の3000rpmあたりまで回すといいだろう。
つまり、チョイ乗りでエンジン内部に溜まったものを外に出すイメージで、なるべく高速走行および高速巡行することを心がける(月に一度くらい)ことだ。
クリーンディーゼル車の場合もチョイ乗りや発進加速を繰り返しているだけの街乗りをしていると、DPFやEGRバルブにカーボンを堆積しやすくなってしまうため、加速時にギアを落としてしっかり回す、付着したPMを吹き飛ばすためにもエンジンブレーキを多用したほうがいいだろう。
当然、急の付く、急発進、急加速、急ブレーキは厳禁だ。
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■オイル管理が延命の秘訣?
新車購入後のオイル交換は昔から1000km走行後が目安といわれている
今、ほとんどの新車のマニュアルを見ると、エンジンオイルの交換時期は環境対応のため、長くなっている。メーカーによって微妙に異なるが、次のように規定されている。
●ガソリンNA車/1万5000kmまたは1年
●ガソリンターボ車/5000kmまたは6ヵ月
●NA軽自動車/1万Kmまたは6ヵ月
●ターボ軽自動車/5000kmまたは6ヵ月
高温かつ高回転となるターボ車はNAエンジンより交換サイクルは短く、さらにシビアコンディションだった場合は以下のようにさらに短くなる。
■シビアコンディションの場合
●ガソリンNA/7500km、または6ヵ月
●ガソリンターボ車/2500km、または3ヵ月
●NA軽自動車/5000kmまたは3ヵ月
●ターボ軽自動車/2500kmまたは3ヵ月
ハイブリッド車は、エンジン停止時間が長く、エンジンオイルが温まりにくいうえに、走行中にエンジンを何度も始動と停止を繰り返しているため、エンジンオイルにとってはシビアなコンディションとなっている。
したがって、例えばヤリスハイブリッドの場合、低粘度のオイル品質規格「JASO GLV-1」認定を取得した0W-8というハイブリッド専用の超低粘度オイルが使われている。
上記のようにメーカーが推奨しているエンジンオイル交換サイクルであれば問題ないと思うが、クルマをいたわり、長持ちさせたい人には1万kmまたは1年ごとでは物足りないハズ。
やはり愛車を長持ちさせたいなら、夏と冬、1年に2回、走行5000kmごとの交換をおススメしたい。ちなみにオートバックスでは5000kmの走行、または6ヵ月を目安としたオイル交換を推奨している。
当然、新車で購入した場合、摺動部から細かな摩擦粉が出たり、組立時に小さな金属粉が入る可能性がゼロではないため、新車購入後3000kmでの交換をおススメする。
また20年以上前のクルマの場合、夏場にヒート気味なら「20W-40」や「15W-50」といった硬めのオイルを、セルの回りが重くなる冬場は「10W-30」といった柔らかめを選定するといいだろう。
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■夏と冬の乗り方で気を付けるべきこと
冷却水はラジエーターリザーバタンク内の冷却水の量 が規定の範囲(FULLとLOWの間)にあるかを点検。 定期的な交換の必要性があり、定期点検などに整備工場で交換。 冷却水の量が減るとエンジンがオーバーヒートを起こし、最悪の場合エンジン交換が必要になる
エンジンオイル/エンジンの温度がただでさえ高まりがちな夏場、渋滞のノロノロ運転という状況はオイルへの負担が確実に増す。そんな状況下、オイル量が少なかったり、劣化したオイルでは満足な潤滑が行えないため、エンジンの回りが重くなったりアイドリングが不安定になり、オーバーヒートの要因になる。
冷却水/性能向上が著しい近年のクルマはオーバーヒートを起こし難くなっている。しかも、8年間交換不要の超・長寿命なスーパーLLCの普及によって冷却水もメンテナンスフリー化しつつある。が、乗りっぱなしで、必要最低限の日常メンテすら怠っていたとしたら、この限りではない。蒸発量が増えるため正常な状態でも冷却水が減る可能性が高まるので、冷却水量のチェックだけは確実に行っておきたい。
今の時代、暖機運転は必要なのだろうか?(Luca Lorenzelli@Adobe Stock)
冬になると、かつては儀式でもあった暖機運転。機械にはスムーズかつ快適に動作できる「適温」というものがある。エンジンであれば冷却水の温度が「80~90℃」の範囲で、昭和モデルの車両では走り出す前の儀式として、水温が上がるまでアイドリングさせる暖気運転が必須であった。
ところが、電子制御燃料噴射による燃料供給が一般的な現代のクルマは、コンピューターが燃焼状態をチェックすることで常に最適な混合気を供給してくれる。このため、基本的に上記の暖機運転は不要。エンジン始動後、すぐに走り出してOKだ。
しかし、「エンジン始動後すぐ全開運転OK」という訳ではない。水温が安定するまで、エンジンに無理な負荷をかけることなくゆっくり走らせることが肝心だ。
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■バッテリーを長持ちさせるには
愛車のバッテリーのチェックをちゃんとしてますか(Songkhla Studio@Adobe Stock)
乗らないで停めっぱなしの期間が長いほど、バッテリーの劣化は進む。2、3ヵ月乗らないと、バッテリーあがりが起きやすくなる。長く乗らないとわかっている時には、バッテリーのマイナス端子を外しておこう(ただし装備のメモリー機能などが失われるため前もって確認が必要)。しかし、マイナス端子を外しても自然放電はするため注意が必要だ。
こうした自然放電している時には、充放電によって極板によって硫酸鉛が結晶化して内部抵抗を増やしてしまうサルフューションが起きやすくなってしまう。
バッテリーを載せたままで充電できるスイッチングタイプの全自動パルス充電器
かつてはサルフューションがひどくなったらバッテリーを交換するしか手はなかったが、最近では、サルフューションがかなり進行した場合を除けば、パルス充電機能付きバッテリー充電器によって解消できる。パルス充電は、充電の電流に微細な周波数を与えることで、サルフェーションを解消させる。
実際、5年間で2、3回バッテリー上がりを起こしてしまったような乗り方でも、パルス充電を行なうことで交換することなく使い続けられるケースもあるという。
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■足回りを交換してもっと長く乗りたい
足回りがヘタるとどのような兆候が出てくるのか?
10万kmを超えてくると、足回りがヘタってくる。まだまだ乗り続けたいと思っているオーナーも多いが、足回りのヘタリを自分で見て判断することは難しい。ダンパーからオイルが漏れていれば(それだけで車検はNG)交換の必要があると分かるが、それ以外に見て分かるのはアッパーマウントやゴムブッシュの表面に亀裂が入っているくらいで、しかも内部にまでヒビが進行してしまっているかは判断しづらい。
ゴムが硬化してしまっていても見た目には分からない。ゴムブッシュが割れたり、変形してしまっているようなら、交換時期だがクルマをリフトアップして点検しないとそれも見つけられない。
やはり重要なのは異音と衝撃だ。特定の状況の時だけ異音が出るような状況なら、足回りの劣化やヘタリを見つけられる。例えば、片側のサスペンションが動いた時だけコトコト、ガタガタ音がするようなら、スタビリンクのボールジョイントか、アッパーマウントがダメになっている場合がある。
確かめる方法としては、普段より強めのブレーキを掛けた時にノーズダイブが大きかったり、その後の揺れ戻しが大きかったりする場合はダンパーが抜けてきている証拠だ。走行中の振動で常にユラユラと落ち着かない場合も、ダンパーのヘタリが原因であることが多い。
ブレーキを強めにかけると異音がするのなら、足回りのボールジョイントやブッシュを疑った方がいい。走行中にステアリングにコツコツと衝撃が伝わる、舵を切った時にコキンッと音と衝撃が来るような場合は、ステアリングのタイロッドエンドにガタが出ているかもしれない。
ブッシュ交換をすると、クルマの動きが見違えるように落ち着いて走りがしなやかになる。ダンパーだけでは上下動しか改善できなかった動きが、細かな前後左右の動きまで落ち着くようになるからだ。
サスペンションの部品点数と各パーツの価格は、メーカーや車種によって大きな開きがある。費用の参考までにヤリスやフィットなどのコンパクトカーの場合、アッパーマウントは4000円前後、純正ダンパーはフロント1本1万8000円前後、リアは1本5000円前後といったところ。ディーラーで交換してもらう場合は工賃を含めて12万~15万円くらいかかる。
黒いゴムの部分がサスペンションアームのブッシュ。ブッシュ類を交換することで見違えるほど乗り心地がよくなる
ブッシュ類は数が多く、車種によって変わってくるため、一概には言えないが(NAロードスターは22個と多いことで有名)、フルブッシュ交換となると10万~20万円(工賃のほうが高い)くらいはかかると見ておいたほうがいいだろう。ディーラーや足回り専門ショップに一度相談してみるとよい。
ロアアームのブッシュ交換も同時にやっておくことで工賃を節約できる。車種にもよるが国産車のロアアームのフロント、リアの新品部品をディーラーで購入すると工賃込みで1万5000円~。
10万kmを超えたら間違いなく足回りのリフレッシュは効果があるし、10万kmに届かなくても10年以上経過していれば、足回りはヘタっていると思って間違いない。愛車を長持ちさせたいなら、クルマの足回りもリフレッシュしてみることをおススメしたい。
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みんなのコメント
「暖機運転」「暖気運転」の混在からも、日本語力の不足を自覚せず何も考えずに書いていることがよくわかります。