舞台は一般道
サーキットでの1日はあっという間に終了し、異臭を放つブレーキがトラブルの予感を感じさせるかのようだ。だがこの3台に「ブラボー」という以外にかけるべき言葉などあるだろうか?
この3台は大掛かりなモディファイが決して見た目だけの問題ではなく、確かに驚くべき効果を発揮するということを証明してくれたのだ。
だが、ここからは違った種類の厳しいテストが待っている。今夜の宿はここから80kmほど西にいったカーマーゼンの街だが、その前にディスデールとともにアルファとジェンセンの2台に乗って、東に80kmの距離にあるマゴーのサービスエリアへと車両を移動させる必要がある。
簡単な仕事だと思うかも知れないが、道中はほとんどが暗く寒いラッシュアワーの時間帯であり、最新のモデルであればまったく問題ないが、われわれがステアリングを握るのはクラシックモデルなのだ。
ポルシェに乗って西へと向かうプライアーの旅がどんなものになるかは予想がついていた。まだ暗く夜も明けきらない午前6時にスタートしたあと、今朝ミッドランズから南ウェールズまでこのクルマを運転してきたのはわたし自身なのだ。
だが、筋力を要する操作系と盛大なサウンドを響かせるエグゾーストにもかかわらず、この御年47歳の911は非常に運転が容易なモデルだった。ブレーキは素晴らしく、ヘッドライトとワイパーも見事な働きを見せるこのクルマは、多くの点でまったくその古さを感じさせない。
ポルシェ ほぼ問題なし
このクルマの低くしたトーションバー式サスペンションは、鋭い路面不整に出会うとややぎこちない様子を見せ、そのステアリングを1/4回転以上させるにはかなりの腕力が必要だったが、それでもこうした点を除けば、思わずタットヒルにこの個体とは違ったポルシェを発注してみたいと思うに違いない。
つまり、どんなカスタマイズも思うがままであり、タットヒルでは古い911は最高のベース車両だと話している。
キャブ式のエンジンは滑らかでトルクとキャラクターに溢れるとともに、パフォーマンスも十分であり、唯一気掛かりだったのは長距離を巡航したあと、スピードを落とした時にストールし易いことだけだった。
低回転からアクセルを踏み込んでいく場合にはガソリンのオーバフローに注意する必要があるが、小気味よい操作感を持つギアボックスでは、昔懐かしいダブルクラッチとともに、相応しいタイミングでのシフト操作も容易に行うことができる。いずれにせよ、そのどちらの操作にもすぐに慣れるだろう。
その他に気を付けるべきは間違ってオイルタンクにガソリンを入れないようにしなければならないとうことだけだ(運転席側ドアの直ぐ後ろにあるオイルフィラーキャップはEシリーズ911における特徴のひとつだ)。
アルファ ヘッドライトが問題
アルファはどうだろう? マゴーからの帰りにディスデールと運転を替わってみたが、このクルマに慣れるにはポルシェよりも時間が掛かりそうだ。
非常にうるさいが、クルージング状態では少しはマシになる。それでも、ポルシェと同じく、このクルマでロングドライブをするには耳栓が欲しくなるだろう。
ロールケージと座面の深く沈み込んだシート、さらに4点式シートベルトがこのクルマを3台のなかでもっとも乗り込むのが難しい1台にしている。さらに、ペダル周りのスペースも他の2台に比べれば狭いと言わざるを得ない。それでも、一旦乗り込んでさえしまえば、そこは素晴らしい空間だ。
4500rpmを越えてからのサウンドは狂暴としか言いようのないもので、その後も凄まじいサウンドは続く。ポルシェよりも軽くダイレクトでバランスにも優れたこのクルマのステアリングは、どんな道であれドライバーを徹底的に楽しませてくれる。
だが、それも夕闇が迫るまでだった。どこもまったくの暗闇に包まれると、アルファのLEDヘッドライトは残念ながら時おり完全に光を失うような素振りを見せ、時にはわずか数秒の場合もあったが、灯のない高速道路ではそれで十分だった。
時にはウインカーを出したり、ヒーターをオンにするとこうした症状が現れ、また時には何の前触れもなく症状が発生することがあった。まさにイタリア製のマシンだ。10年選手のフィアットでさえこんなことは起こらないだろう。
ジェンセン ほぼ落第?
それでもこのアルファのヘッドライトは99.5%の時間はきちんと作動していたのだ。
その晩の最後のスティントをこなすためにジェンセンへと乗り換えると、われわれの旅は暗転するとともに、こうしたレストモッドを所有することの好ましくない一面を経験することとなった。
インターセプターのスモールランプはまったく問題無く点灯するものの、ヘッドライトのロービームは完全に機能しなかったのだ。
JIAへ電話してみるとフットウェルにあるディップスイッチとヒューズボックスを確認したほうが良いと言う。だが、どちらも問題を解決させることは出来なかった。
唯一の対応策はアルファとともに最寄りのガレージまで何とか辿り着き、絶縁テープを購入して、可能な限りジェンセンのヘッドライトを可能な限り覆い隠すか、ヒューズ切れのために今回のテストを途中で諦めるしかなかった。
インターセプターは快適なモデルであり、その快適性はアルファとポルシェをはるかに上回っていたことはお伝えしておくべきだろう。
だが、残念ながらベッドの替わりを務めたり、16時間も連続して働くこととなったロードテスターのために朝食を作ってくれるほど快適なモデルではなかったのだ。
マット・ソーンダース
アルファ 思わず汗ばむ
汗をかいていたが、それはこのアルファホリックス製GTA-R 290にエアコンがなかったせいでもなければ、そのしっかりと体を固定する4点式シートベルトのせいで手動の窓が開けられなかったからでもない。
汗の理由は、この軽量級のアルファを思い切り走り回らせるには、それなりの筋力が必要だったからだ。
夜が明け、気持ちの良い明るい朝を迎えたことで、昨夜のヘッドライト事件のこともすっかりと忘れることができた。
ペンディン近郊のホテルから出発すると(どこへ行っても注目を集めずにはおかないこの3台のせいで、予想よりも駐車場を出るのが遅れてしまった)、まさにこうしたモデルに相応しい走りを試すべく、ワインディングを求めてブラック山地へと向かったのだった。
ワインディングロードでのこの3台は、現代のモデルに比べれば2倍ほども頻繁な操作を要求し、パワーアシストに慣らされたドライバーにはその腕や足にかえって来る手応えは驚くべきものだろう。
それでも、この3台ではすべてが活気に溢れ、ドライバーの努力は素晴らしい喜びを与えてくれるのであり、GTA-Rであればその見返りも非常に大きい。
このコンパクトでクイックなアルファはまさにこうしたワインディングで見事な輝きを放つのであり、目が眩むほどの機敏さで踊るようにコーナーをクリアしていく(ルームミラーに写る、プライアーがステアリングを握るジェンセンが、まるで船のように大きくボディを揺らしながら、果敢にもGTA-Rについてこようとしている様子は、いかにこのアルファの敏捷性が優れたものであるかを物語っていた)。
ジェンセン 意外なトラクション性能
グリップとスリップの見事なバランスを備え、ステアリングは重いがクイックで正確、そして本物のフィードバックを返してくる。ポルシェには劣るかも知れないが、それも僅差でしかない。
硬くストロークの短いサスペンションは時に突然の乱れを見せるが、基本的にGTA-Rはフラットな姿勢で高いコーナリングスピードを保ったまま、不整路面も落ち着いて処理していく。
もちろんエンジンも素晴らしい。まさに天井知らずの回転上昇を見せるが、高速では早めのシフトアップによって、電子制御された扱いやすいトルクを利した運転をすることも出来る。
それでも、依然としてダイレクトな速さを感じさせるこのクルマは、今回集まったなかではもっともケーターハムに近い存在だと言える。
そして、ロードテスター全員がジェンセンにとってはサーキットよりもこうしたワインディングのほうがより相応しいと納得したものの、インターセプターにこうしたコメントはまったく当てはまらない。
もちろん、より大柄なボディと車重を備えたこのモデルが得意としているのは高速クルージングであり、アルファ・ロメオやポルシェとは違い、コーナーでは出口でようやくアクセルを踏み込むようなドライビングスタイルが求められる。
だが、驚くべきことにそのトラクション性能は素晴らしく、トラクションコントロールの必要性をほとんど感じさせないばかりか、パワーアシストを備えることでもっとも安楽な操作が容易なステアリングも、このクルマに相応しいフィードバックを返す。
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