大きすぎたパンデミックの打撃
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
【画像】クロスオーバーとSUVのブランド【英国で展開するスバル車4選】 全154枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
スバルの英国部門によると、英国と欧州における2020年の販売台数が「信じられない」ことになったため、同地域の事業について抜本的な見直しが行われているという。
新型コロナウイルスの流行の影響で、ほとんどの自動車ブランドが販売台数を大幅に減らした中、最も大きな打撃を受けたのはスバル(英国の独立輸入業者であるインターナショナル・モーターズが英欧で運営)で、前年比68%以上の減少を記録した。
2019年は3000台弱だったのに対し、2020年は951台しか販売されていない。8月は、69ある英国のディーラーの合計販売台数はわずか34台だった。
昨年夏に英国部門の責任者に就任したジョン・ハーティグは、「2020年はひどい年だった」と認めている。
「何と言えばいいのでしょうか?正直なところ、これ以上の状況はありません」
ハーティグは、2020年がスバルにとって最悪の年になった具体的な理由をいくつか挙げつつ、「数字が示すほど悪くはない」と述べている。
「スバルは2019年12月に非常に高い登録台数を記録しました。実際、スバルUKがこれまでに経験した中で最高の月でした。そのため、余裕のある状態で2020年に入ったのです」
ハーティグは、これは2020年1月に欧州連合のCO2削減規制が施行される直前、多額の罰金を回避するために一斉に新車登録したことによるものだと認めた。この時に登録された車両はすべて、年間を通じて割引価格で販売されたという。
最大の課題はディーラー網の再構築
スバルが新型コロナウイルスにより受けた影響は、大きく分けて2つの要因によるものだとハーティグは語る。その1つはスバルの顧客基盤だ。
「正直に言うと、当社のターゲットは高齢者です。彼らは外出することに対して非常に慎重になっていたため、それが当社の売上に影響を与えた理由の1つかもしれません」
もう1つは「ディーラー網を根底から再構築する」必要性にあるという。
「わたし達は、スバルUKの中で多くのことを変えてきましたが、ディーラー網の構造を全面的に変える必要があります。これまで欠けていたものが数多くあるのです。わたしはディーラーだけを非難しているのではなく、50%は組織としてわたし達にも責任があると思っています」
英国でスバルの存在感を高めるためには、マーケティングやブランド認知度向上のための投資が必要であることは認めつつ、それ以上にディーラーにブランドに関わってもらい、メッセージを伝えることが重要なのだという。
「適切なディーラーを必要としています。最高のマーケティングとブランド認知度を得ることはできても、ディーラーが同じ場所に立っていなければ意味がありません。そのため、手を取り合って取り組まなければなりません」
ハーティグは英国でのネットワーク拡大に向けて「積極的」な計画を立てており、今年だけでも15の拠点を新設したいと考えている。
スバルブランドのイメージ戦略
スバルはブランドイメージの混乱にも悩まされている。
1990年代と2000年代には、インプレッサWRX STiのラリーでの活躍によってブランドイメージは確固たるものとなった。しかし、インプレッサは欧州のホットハッチブームに直面して徐々に人気を失い、2018年には英国のラインナップから名前を消した。
「スバルUKは過去に多くの失敗をしてきました。インプレッサはパフォーマンスカーであり、ラリーカーでもありました。しかし、それは歴史の一部であり、今となっては遠い昔のことです。今のスバルブランドとは何の関係もありません」
インプレッサの英国からの撤退は、スバルがクロスオーバーとSUVのブランドとしてコアバリューに集中するための戦略的な決断だったとハーティグは語る。また、スポーツカーの新型BRZも欧州市場には導入されない。
ハーティグは、責任は自分たちにあるのだと正直に認めている。
「わたしは当社を擁護しているわけではありません。この数字は非常識で馬鹿げています。結局のところ、わたし達の組織、積極性、仕事のやり方に大きな問題があるのです」
「2020年の下半期に経営陣を変え、チームを変え、多くのことを変えてきました。今、わたし達は回復のためのスキームを開始しているのです」
しかし、残念なことに、過去12か月間にイングランドで3度のロックダウンに見舞われており、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドでも同様の規制が行われている。
「3度目のロックダウンは予想していませんでした。ディーラーとの会議を予定していた日の前夜にボリス・ジョンソン首相がロックダウンについて話していて、当日の朝に会議を延期しなければならなくなったのです」
それでも明るい未来が待っている
しかし、悪いニュースばかりではない。以前のロックダウンでは不十分だったオンラインサービスだが、今ではしっかり稼働している
「ロックダウンが始まる前に、わたしは非常に良いロールアウト計画を立てていましたが、今はもっと現実的にならなければなりません。成長を期待しており、第1四半期は30%が目標です。2021年にはもっと大きな成長を期待していましたが、この状況では少し謙虚にならざるを得ません。とはいえ、ただ座ってリラックスしながらロックダウンが終わるのを待つわけにもいきません」
現在予定されている新型車は、販売回復の遅れを取り戻すことが期待されている。最新のXVとフォレスター、そして第6世代となる新型アウトバックが5月に英国へ上陸する。
さらに、トヨタと提携して完全電動のSUVを開発し、2025年までに発売する。
また、スバルは欧州での販売台数が非常に少なく、「ニッチメーカー」に分類されているため、欧州の最も厳しいCO2目標を回避することができるという利点もある。また、ハーティグによれば、ブレグジットがビジネスに大きな影響を与えることはないとのこと。
一部では、欧州におけるスバルの将来に対して悲観的にとらえている人もいるが、ハーティグは将来をポジティブに見据えており、昨年の状況を早く「過去の話」にしたいと考えている。
「2020年は当社にとって災難な年でした。しかし、わたし達の視点から見れば、目の前には良い道があり、その先に良い未来が待っています」
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みんなのコメント
現実はトヨタの手助け次第で
運命は分かれるでしょうね。
時代の変化と要請に合わせれば生き残れる。