バレンティーノ・ロッシをチームに迎え入れ、2022年のファナテック・GTワールドチャレンジ・ヨーロッパに参戦するWレーシング・チーム(WRT)のヴァンサン・ボッセ代表は、MotoGPの“レジェンド”とGTカーレースで契約することを「何年も考えていた」と語った。
2021年限りで、輝かしい成績を収めてきた二輪レーシングシーンでのキャリアにピリオドを打った9度のワールドチャンピオンであるロッシ。彼は今シーズン、WRTのアウディR8 LMS Evo IIをドライブして、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ・パワード・バイ・AWSのエンデュランスカップとスプリントカップに参戦する予定だ。
WRT、バレンティーノ・ロッシの2022年GTワールドチャレンジ・ヨーロッパへのフル参戦を発表
この契約がどのようにして結ばれたのか。WRTのチームプリシパルはその背景をSportscar365に対して語った。彼によれば、“四輪愛好家”であるロッシをスポーツカーレースに参加させようする試みは、これまでにも何度か行われたという。
「バレ(バレンティーノ・ロッシ)がヤマハからドゥカティに移ったとき(2011年)、また、ドゥカティがアウディに買収されたとき(2012年)、私はアウディに行き何かできることはないかと言ったんだ。バレと一緒にドゥカティのクルマを走らせるのはどうだ、とね」
「それからも、私は何年もそれについて考えてきた。もちろん、当時は一度切りのレースのためのものだったよ」
「私はMotoGPの大ファンなんだ。MotoGPのファンであることは、過去20年以上にわたってバレが成し遂げてきたことのファンであり、それに敬意を払わなければならない」
「彼は2、3回、ブランパンGTシリーズ(現GTワールドチャレンジ・ヨーロッパ)に足を運んでいる。明らかに四輪で何かをしたいと思っていたし、この3、4年はつねにそれを明言していた」
「彼はインタビューを受けたとき、二輪でのキャリアを終えたら四輪で何かをするだろうと言っていた。実際、彼はいつもラリーをやっていたし、アブダビでのレースにも友人たちと出場していた」
「私はこの5年間、スパやバサーストで何かをしようと、さまざまな方法で彼と連絡をとろうとしてきた。アイデアはテーブルの上にあったんだ。だが、バレと連絡をとることはできなかったよ」
■引退発表前に接触に成功
それでも諦めなかったボッセは昨年、ロッシへのアプローチを再開し2021年のWRTのエクステンドメンバーを経由し、彼の仲間内を通じてコンタクトをとることに成功した。
「その人物にメールを送って数週間経っても返事がなかった。だが、7月頃に返事があり(ロッシと)最初のコンタクトがあったんだ」と説明したボッセ。
「物事はそこから動いた。彼がどれだけチームのこと、そして私たちのことを知っているのか聞いてとても光栄に思ったよ。8月の終わりに私たちはビデオ通話で初めて対面したんだ」
「その場で私は彼の将来をどう見ているかを説明した。当時、彼はまだ引退を明らかにしていなかった。引退表明がなされたあと、私たちはもう少し先まで話を進めることができた」
「すべてはそこから始まった。彼は情熱にあふれた人物で、自分が何を望み何を望まないか、そしてどうしたいかを知っている、と言わざるを得ない」
ロッシは昨年12月にバレンシア・サーキットで初めてアウディR8 LMS Evo IIをテストしている。
バレンシアのテストでのパフォーマンスが、レースプログラムへの合意を最終的に決定することに拍車をかけたのか、と尋ねられたボッセは次のように答えた。
「私たちは合意に近づいていたと思う。そのうちにテストの可能性がそこにあった」
「テストはうまくいった。彼のアプローチと技術的なフィードバック……私はこの他には期待していなかった。彼のクルマへの適応の仕方は印象的だったよ。彼は運によって9回も世界チャンピオンになったわけではない」
「競争力を持つための方法などすべてを理解しようとする姿勢があり、彼がただ楽しむためにそこにいるのではないことは明らかだった」
「おそらく彼自身が楽しむことも非常に需要なことだろう。しかし、彼は楽しみながら競争力を持つこともできる」
ボッセは、ロッシが四輪モータースポーツで最初のフルシーズンを過ごすにあたって、トップカテゴリーのプロクラスに配置されることは「一般的な決定」であると付け加えた。
過去のGTレースにはプロ・アマカテゴリーで参加してきたロッシだが、2022年シーズンは他のふたりのワークスドライバーが彼をサポートすることになる。
「彼をシルバーカップなどで走らせようとは到底思っていなかった」とボッセ。
「私はいつも、彼をプロが乗るクルマで走らせるという考えを持っていた。プロクラスでの経験が豊富で、マシンやチームのことをよく知っているふたりのチームメイトがいることは、学び、前進し、大きなステップを踏むための助けになると思っているんだ」
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