■数え上げたらキリがない!? 見どころだらけのスタイリング、走りの調律
ホンダ「CB1100EX」は、「CB1100RS」「CB1100」とともに、1960年代、70年代を飾った“HONDA CB”をオマージュしながら、セルフカバーにとどまることなくいまの時代にこそフィットする「スロー」で「クール」、さらにそれらの「クオリティ」を高めた点に注目したいモデルです。
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その中で今回紹介する「EX」は、ワイヤースポークホイールの装着などでよりビンテージ感を楽しめる1台に仕上がっています。
ホンダには「CB1000R」というスポーツネイキッドがあります。丸形ヘッドライトやタンクの造形で、ライダーの年齢や経験によって懐かしさや、いまの時代性など様々な感情を想起するデザインを採用しています。それはスズキ「KATANA」、カワサキ「Z900RS」も同様、ヘリテイジであり最新です。
この3台は、スーパースポーツ系のエンジンやシャーシをベースに造られ、最新の走りとスタイルを融和させたところに力点が置かれています。
対する「CB1100」は、200km/hが空を飛ぶのに等しく、100馬力が驚異的だった時代を思わせるバイク造りを追求した点で、前出モデルと一線を画す存在です。
見どころは当時のバイクを思わせる佇まいです。まずフレームは、太く丸いパイプが綺麗に曲げられたダブルクレードルを採用し、フロントサスペンションは正立フォーク、リアには2本ショックを採用します。1970年代のバイクのようにスイングアームが丸チューブではありませんが、スチール製で塗装も含め、メインフレームと融合しています。
搭載されるパワーユニットは、いまや貴重な直列4気筒の空冷エンジンです。冷却フィンの間隔、造形、手触りはもちろん、プラグホールの見え方、全体のサイズまでこだわっています。またそのエンジン特性は、ライディングポジション、ハンドリング特性などと歩調を合わせるように、ゆったりとしたトルク感が魅力です。
外装の仕上げも入念で、燃料タンクの製造法にはフランジレス製法を採用しています。これはタンク外板の溶接にのりしろ部分を設けず、薄い鉄板同士を付け合わせて溶接する手間のかかる手法です。これによりタンクの下側に出っ張る溶接のための「耳」が省け、タンクとエンジンの距離感をミリ単位で詰められています。もちろん、美しい塗装で外観に質感を与えているのは言うまでもありません。
ほかにもエンジンから伸びる排気管の並び方、深いクロームメッキの輝きなど、数えたらキリがありません。前後とも40本のステンレス製スポークで編まれた18インチホイール含め、組み立てに手作りされたカスタムバイクのような質感を織り込んでいるのも特徴でしょう。
実際に対峙すると、存在感は抜群。取りまわしは不利かもしれませんが、255kgという車重も「CB1100EX」には必須と思えてきます。重厚なのです。
排気量は1140ccで、現在の「KATANA」や「Z900RS」と比較すると142ccから192ccも大きいエンジンです。それでいて、ピストン径は同等ながらストロークを長く取ることで、CB1100独特のリズムを刻みます。
1速でクラッチを繋ぐとCB1100ワールドが待っていました。ドロンと太いトルクで押し出され、2000rpmも行かないうちにシフトアップがしたくなる。気が付けば50km/hで6速、1500rpm以下での巡航を楽しみ、そこからの加速を楽しんでいる……。
ハンドリングは18インチらしい素直さで、バイクを寝かせた分スムーズに舵角があたります。それでいて255kgという重みを感じさせないよう、ワイドで手前に引かれたハンドルバーに伸ばした手に適度な重みしか伝えてきません。
そして低い回転からトルクを生み出すエンジンと、大きな直列4気筒エンジンがもたらす低重心感で走りやすい。市街地からワインディングまでその印象で走りが整っています。乗りやすい、車重が苦にならない。だからどこまでも走りたい気持ちになります。
高速道路ではアップライトなポジションのため、自ずと制限速度周辺での走りに落ち着きます。エンジンの特性もそのあたり、いや、むしろ100km/hより90km/h、80km/hでクルーズを楽しみたい印象なのです。良い意味で心がざわつかない。バイクを走らせてこの境地になるモデルは貴重です。
つまり、外観や空冷エンジンというマテリアルだけでこうなったのではなく、作り手の確たる哲学によりこの乗り味にチューニングされているわけです。会ったことのない作り手と走るコトで対話する、自然と語らう「禅」のような楽しみ方もできる。それが「CB1100EX」なのです。
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