現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > フォーミュラEの勝敗を分けるエネルギー残量。ライバルに知られないよう、複雑な暗号を多様……状況を把握できるのは、実はドライバーだけ!

ここから本文です

フォーミュラEの勝敗を分けるエネルギー残量。ライバルに知られないよう、複雑な暗号を多様……状況を把握できるのは、実はドライバーだけ!

掲載
フォーミュラEの勝敗を分けるエネルギー残量。ライバルに知られないよう、複雑な暗号を多様……状況を把握できるのは、実はドライバーだけ!

 フォーミュラEのレース中のエネルギー残量は、中継では時折開示されるものの、基本的には各マシンのドライバーしか知り得ない情報であるという。それをライバルチームに知られないようチームに伝えるべく、実に高度な暗号が使われているという。

 2024年が明けて2週間。FIAの世界選手権シリーズの先陣を切って、フォーミュラEの第10シーズンが今週末に開幕を迎える。その初戦は、メキシコシティePrixである。

■ブリヂストン、フォーミュラE用タイヤは小平とローマの2拠点での製造を予定「輸送でのCO2排出を考えても、”地産地消”が重要」

 フォーミュラEは、完全EVのフォーミュラカーレースであり、その勝敗はもちろん速さも重要ではあるが、エネルギーマネジメントをいかに効果的に行なうことができるかどうかで左右されることが多い。限られたエネルギー量をいかにつかって、フィニッシュに辿りつくのか……各チームはそれに知恵を絞っている。

 特にレース終盤になると、各車のエネルギー残量が重要になってくる。このエネルギー残量は、国際中継では時折画面上に表示されることもあるが、実は各チームは、ライバルチームのエネルギー残量はもちろん、自分たちのチームのマシンのエネルギー残量も把握できないのだという。

 マシンのエネルギー残量を知ることができるのは、そのマシンをドライブしているドライバーのみ。その情報は、ドライバーが無線を通じてチームに伝達しているわけだが、数字をそのまま伝えてしまうと、ライバルに状況を知られてしまい、戦う上で不利な立場に立たされる……それを避けるべく、ドライバーは暗号を使い、チームに伝えているという。

 東京オートサロンの日産ブースでのトークショーに登壇した、日産フォーミュラEチームのチーフ・パワートレイン・エンジニアの西川直志は、トークショーの中で次のように明かした。

「エネルギー残量は、ドライバーしか知り得ない情報です。そこは他のチームにバレないように、暗号化してチームのラジオで伝えるということになっています」

■ステアリングに暗号が表示される仕組み

 このトークショーで司会を務め、J SPORTSでフォーミュラEの実況を担当するサッシャ氏もこの発言について「実況中にこの無線は何を言ってるんだ? と思うことがありますが、そういうことだったんですね!」と応じると、西川エンジニアはにんまりと「分からないということは、暗号が成功しているということですね」と語った。

 トークショー終了後に、その暗号とはどんなものなのか? 改めて尋ねると、西川エンジニアは次のように語った。

「ヒントは無いですよ……無いというか、実は暗号を毎レース変えています。ステアリング上に暗号が表示されているんで、ドライバーはそれを読むだけなんです」

「ドライバーはもちろん、エネルギー残量を数字で確認することができます。そして、それを暗号化したモノがこれというのも、ステアリング上に出ているんです」

 この暗号により、コンマ数%という部分まで表現できるようになっているという。ただ暗号がステアリングに表示されるならば、ドライバーは毎回変わる複雑な暗号を覚えずに済むわけだ。

 ただオンボードカメラ映像でステアリングが映ると、その情報がたちどころにライバルチームに伝わってしまう。そのため、中継でもステアリング部分にモザイクが入れられ、視認できないようになっているという。

「そうです! ステアリングのダッシュボードに映し出す情報は各チームで作り込んでいるんで、見えてしまうと全てがバレてしまいますからね」

■他チームの暗号を解析できたことはない!

 この暗号を使ってエネルギー残量を伝えるというやり方は、何も日産だけで使っているモノではないという。そしてその暗号は複雑で、今まで解読できたことはないようだ。

「トラックエンジニアには、それぞれ他チームの無線を聴く担当もいるんです。もちろん、それぞれ自分の仕事をしているんですけど、その中にたとえばジャガーの無線を聴くことも担当になっている人がいます」

 西川エンジニアはそう明かす。

「でも、ライバルのエネルギー残量が分かったことは、これまでまったくないと言っていました。その中で我々は、毎回変えてしまってますからね」

 エネルギーマネジメントという面では、カスタマーチームとその残量を共有した方が、レースを優位に進める材料になるように思える。西川エンジニア曰く、ジャガーとそのカスタマーチームであるエンヴィジョンは、情報を共有しているようだ。

 しかし日産は、カスタマーチームのマクラーレンと、エネルギー残量の共有はしていないという。

「レギュレーション上では、カスタマーチームとエネルギー残量のやりとりをしても良いということになっています。ジャガーとエンヴィジョンは、それをやっているみたいですからね」

「でも日産とマクラーレンはやっていません。あくまで競争相手ですからね。結局ジャガーとエンヴィジョンも、情報は共有しつつも、コース上で戦っているわけですから……それならば共有しない方が良いんじゃないかと思います」

「もちろん、レースが始まる前とか、セッティングとかは共有してやっていますけどね」

 実際どんな暗号が使われるのか? そしてそれをドライバーがどう口にするのか? そんな視点でフォーミュラEのシーズン10開幕戦メキシコシティePrixを見てみるのも、面白いかもしれない。

こんな記事も読まれています

ベンツが神話だった70年代の「W123」…驚きの安全性と最新テクノロジーは当時の国産車では足元にも及べない知恵が詰まっていました
ベンツが神話だった70年代の「W123」…驚きの安全性と最新テクノロジーは当時の国産車では足元にも及べない知恵が詰まっていました
Auto Messe Web
ブリヂストン 新スポーツタイヤ「ポテンザ RE-10D」発売 サーキットでのタイム短縮追求
ブリヂストン 新スポーツタイヤ「ポテンザ RE-10D」発売 サーキットでのタイム短縮追求
グーネット
サーキットも普段使いも!クラシカルなフルバケット「ジータIVクラシック」発表 ブリッド
サーキットも普段使いも!クラシカルなフルバケット「ジータIVクラシック」発表 ブリッド
グーネット
メガーヌ R.S.のように旋回? 新型ルノー・ラファールへ試乗 ドイツ銘柄からの顧客獲得へ期待
メガーヌ R.S.のように旋回? 新型ルノー・ラファールへ試乗 ドイツ銘柄からの顧客獲得へ期待
AUTOCAR JAPAN
竹岡圭さん「XCRスプリントカップ北海道」参戦!三菱&トーヨータイヤがサポート
竹岡圭さん「XCRスプリントカップ北海道」参戦!三菱&トーヨータイヤがサポート
グーネット
シンプルデザインで車内にマッチ タテ・ヨコ回転OKの車載スマホホルダー シズカウィル
シンプルデザインで車内にマッチ タテ・ヨコ回転OKの車載スマホホルダー シズカウィル
グーネット
アウディの充電施設、2か月で600名利用 新料金プランでサービス提供開始 東京・紀尾井町
アウディの充電施設、2か月で600名利用 新料金プランでサービス提供開始 東京・紀尾井町
グーネット
WECの“カスタマー締め出し”にポルシェが警告。10メーカー参戦の2025年、残枠はわずかに『2』か
WECの“カスタマー締め出し”にポルシェが警告。10メーカー参戦の2025年、残枠はわずかに『2』か
AUTOSPORT web
V8×MT×FR採用! 新型「スポーティセダン」初公開! “青感”高めた「豪華内装」が超カッコイイ「CT5-V ブラックウイング ル・モンストルE」アメリカに登場
V8×MT×FR採用! 新型「スポーティセダン」初公開! “青感”高めた「豪華内装」が超カッコイイ「CT5-V ブラックウイング ル・モンストルE」アメリカに登場
くるまのニュース
マクラーレン 初のEVスーパーカー計画、現在の技術では達成困難 「支援」要請
マクラーレン 初のEVスーパーカー計画、現在の技術では達成困難 「支援」要請
AUTOCAR JAPAN
駐車の際の「前向き」「後ろ向き」問題…日本での正解をお教えします! 米国で「前向き」が多いのは防犯上の理由もありました
駐車の際の「前向き」「後ろ向き」問題…日本での正解をお教えします! 米国で「前向き」が多いのは防犯上の理由もありました
Auto Messe Web
ハースが「文句なし」のダブル入賞。ペレスを抜き返したヒュルケンベルグが今季ベスト6位/F1第11戦
ハースが「文句なし」のダブル入賞。ペレスを抜き返したヒュルケンベルグが今季ベスト6位/F1第11戦
AUTOSPORT web
【最長/最深トンネル爆走】 ベントレー新型コンチネンタルGTスピード オープンのGTCも同時発表
【最長/最深トンネル爆走】 ベントレー新型コンチネンタルGTスピード オープンのGTCも同時発表
AUTOCAR JAPAN
『ビースト』という名のスクールバス!? 90名乗車でEV航続241km、米国で納車開始
『ビースト』という名のスクールバス!? 90名乗車でEV航続241km、米国で納車開始
レスポンス
復活するIGTC鈴鹿が『1000km』&控えめなエントリー目標である理由「長距離に慣れているチームがほとんどない」
復活するIGTC鈴鹿が『1000km』&控えめなエントリー目標である理由「長距離に慣れているチームがほとんどない」
AUTOSPORT web
新型「4WDスポーツ車」初公開! レトロな「丸目」に超ハイパワー「V型8気筒エンジン」搭載! “日本専用”の特別なベントレーに衝撃の声!
新型「4WDスポーツ車」初公開! レトロな「丸目」に超ハイパワー「V型8気筒エンジン」搭載! “日本専用”の特別なベントレーに衝撃の声!
くるまのニュース
デコトラの命ともいえる電飾! LEDが台頭するもいまだ電球派もいる理由とは?
デコトラの命ともいえる電飾! LEDが台頭するもいまだ電球派もいる理由とは?
WEB CARTOP
愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(後編)
愛車の履歴書──Vol42. 石野真子さん(後編)
GQ JAPAN

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村