いまや大小さまざまなSUVが顔を揃えるなかで、各ブランドの個性を存分に発揮して路上を賑わわせてくれるのがスモールクラス。仕事に買い物にと日常の相棒として乗るのなら、お気に入りのカジュアルなウェアを着こなす感覚で選びたい。ここに揃えた3台なら、きっと毎日に彩りを添えてくれるはずだ。
TクロスはスモールSUVの優等生
スペックは歴代最強! 新型「フォルクスワーゲン・ゴルフR」がデビュー
ドイツ、フランス、イタリアで取り揃えた今回のスモールSUVたちは、どれもがまったく違うベクトルを向いた超個性派揃いだ。
なかでもフォルクスワーゲンTクロス最大の魅力は、誰もがすんなりと入って行ける運転しやすさにある。そのカギを握るのは、全長4115×全幅1760×全高1580mmと、今回一番小さなスリーサイズ。見切りの良いボディと高いアイポイント、そしてワイド過ぎない全幅の組み合わせは直感的な運転が可能で、乗り込んだ先から手足のように動かせる。
エンジンは1Lの排気量から116ps/200Nmのパワー&トルクを発揮する直列3気筒ターボ。500Xは151ps/270Nmの1.3Lと6速DCT、DS3クロスバックは130ps/230Nmの1.2Lと8速ATという組み合わせで、数字だけで見るとTクロスはいかにも走りが苦手そうに思えるが、心配は無用。7速DSGのギアリングが低速から上手にトルクをすくいあげ、タイヤをスムーズに転がしてくれるから、たとえば交通の流れの速い街中でも、快適にリードすることができる。
もちろん、前が急に開けたときなど、とっさな加速での蹴り出しはややパンチに欠ける。しかし少し先を見越してアクセルを合わせて行けば、3気筒ターボは“グーン”と小熊のようなうなりを上げて加速する。DSGは相変わらず切れ感やレスポンスが素晴らしく、MT気分でこれを走らせれば、むしろ1Lエンジンの精緻さに愛着すら湧いてくる。
適度に引き締められた足まわりはSUVならではのストロークによってフラットで快適な乗り心地も確保しており、同じモジュールボディのポロに比べて反発感やチープさが上手に封じ込まれている。Tクロスは現代基準のスモールカーであり、スモールSUVのお手本だといえる。
飛ばすほどに輝きを増す500Xスポーツ
機能面では素晴らしくまとまっているTクロスだが、インテリアはちょっとばかり子供っぽい。ドイツ人のカラーセンスには本当に驚かされるけど、黒みがかったオレンジ(やブルー)のインパネは、毎日接するにはかなり若作りだ。
そんな気持ちを察したかのように、フィアット500Xは室内をスタイリッシュにまとめていた。これぞ輸入車を買う醍醐味! といえる、美しい仕上がりである。基本造形は標準モデルと共通だが、「スポーツ」はダッシュボードをダークグレーにカラーリング。それだけでファニーな印象が、グッと大人っぽくなる。
スポーツサスを備える乗り味は3車中でもっともがっしり・どっしり。ステアリング応答性には“ため”がなくスポーティだ。筆者は標準仕様の柔らかくも奥深いロードホールディング性能にフィアットらしさを強く感じるのだが、一般的にはこの方がイタリア車をイメージしやすいかもしれない。
1.3L直列3気筒ターボは今回一番の力持ちだが、1440kgの車重と6速のギアリングが影響しているのだろう、出足はやや鈍め。低速域ではタイヤの転がりの良さを利用して、そつなく速度を乗せて行く走り方が主体となる。
しかし、いざアクセルを踏み込めば、ターボブーストとともにエンジンが高回転まで回り、俄然走りが楽しくなる。飛ばすほどにしなやかささ出てくる足まわり。この安定感にはもっとパワーが欲しくなり、500Xにアバルト仕様があったらいいのに! と思った。
スポーティな外見と走りを得たことで、500Xの魅力はより明確になった。この“大きなチンクェチェント”を元気に、そしてスマートに転がせば、毎日を前のめりに生きられそうな気がする。
ハマったら手放せないDS3クロスバック
対するDS3クロスバックは、ぶっちぎりのフレンチ・アバンギャルドを貫く。乗り込んだ途端に漂ってくる甘いパフュームの香り。ふっかりと、しかしコシのある革シートに身を沈め、何度乗っても慣れないキラキラしたインテリアを眺めていると、まるで高級ブティックにいるような、少し肩身が狭い気持ちになる。
だが、走り出せばそんな違和感はすぐに消え失せ、その素晴らしい乗り味に心を奪われる。シトロエンよりも引き締められた、しかしプジョーよりもしなやかな足まわり。同じグループでの棲み分けには若干無理を感じていたが、これが他社との比較になると、明確に心地良い。その上で操舵応答性も、きちんと確保されている。
1.2L直列3気筒ターボは、細かくステップする8速ATによって低速から実用トルクを絞り出し、高速巡航ではそのスピードを快適に保ち続ける。ATにデュアルクラッチほどのキレ感はない。ハンドリングも鈍くはないが穏やかだから、DS3クロスバックの走りは一見退屈に思えるが、アベレージが上がるほどに身のこなしが軽やかになり、走りは楽しさと鋭さを増す。この点はフィアット500Xと同じくラテンの血だ。
深海魚のようなフロントマスクや、近づくだけでスーッと出て来るドアノブ。見た目やギミックに翻弄されると見失いそうだが、全高は1550mmと立体駐車場へのアクセスも唯一可能であり、都会派のスモールSUVとしてはよくまとまっている。つまりDS3クロスバックはそのアバンギャルドな見た目だけでなく、根の真面目さにギャップ萌えができる一台。ハマったら手放せなくなる、ブルーチーズのような魅力を持つ。
さてそんな3車を総評すると、どれもコンベンショナルなFWDであり、技術的な目新しさはないが、やはりそつないのはTクロス。荷室容量の大きさ、後席のスライドなどを加味したコスパは圧倒的で、かつ走りもまとまっている。
しかし輸入車を手に入れる、すなわち異文化を楽しむ醍醐味を考えると、ラテンの2台もとっても魅力的。ベタに行くなら500Xスポーツ、個人的にはDS3クロスバックのギャップに萌えた。
【Specification】VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1St PLUS
■全長×全幅×全高=4115×1760×1580mm
■ホイールベース=2550mm
■車両重量=1270kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/999cc
■最高出力=116ps(85kW)/5000-5500rpm
■最大トルク=200Nm(20.4kg-m)/2000-3500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/ディスク
■タイヤサイズ=215/45R18
■車両本体価格(税込)=3,359,000円
お問い合わせ
フォルクスワーゲングループジャパン 0120-993-199
【Specification】FIAT 500X SPORT
■全長×全幅×全高=4295×1795×1610mm
■ホイールベース=2570mm
■車両重量=1440kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1331cc
■最高出力=151ps(111kW)/5500rpm
■最大トルク=270Nm(27.5kg-m)/1850rpm
■トランスミッション=6速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:ストラット
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/ディスク
■タイヤサイズ=225/40R19
■車両本体価格(税込)=3,440,000円
お問い合わせ
FCAジャパン 0120-404-053
【Specification】DS3 CROSSBACK GRAND CHIC
■全長×全幅×全高=4120×1790×1550mm
■ホイールベース=2560mm
■車両重量=1540kg
■エンジン種類/排気量=直3気筒DOHC12V+ターボ/1199cc
■最高出力=130ps(96kW)/5500rpm
■最大トルク=230Nm(23.4kg-m)/1750rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:トーションビーム
■ブレーキ(F:R)=Vディスク/ディスク
■タイヤサイズ=215/55R18
■車両本体価格(税込)=4,040,000円
お問い合わせ
グループPSAジャパン 0120-92-6813
【Another Choice】MINI CROSSOVER/ミニ・クロスオーバー
デザインとパフォーマンスをさらにブラッシュアップ!
9月末、新型が日本でも発表されたミニ・クロスオーバーもまた、個性派スモールの最右翼。スタイリングはより逞しさを増し、PHEVや8速ATなどパワートレインも一層充実。ドライバーアシストやコネクティビティも最新世代が採用される。
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