この記事をまとめると
■ホンダには四輪車と二輪車で同じ車名のモデルが多数存在する
国産なのに「じゃないほう」扱い! ダイハツの「デルタ」がなかなか奥深いクルマだった
■商標登録済の名称から選んでいるのでクルマとバイクで同名のモデルが誕生することがある
■今後、登場するかもしれないクルマの名称にぴったりなバイクもピックアップ
クルマ好きの「エリシオン」とバイク乗りの「エリシオン」は違う
男A「ホンダのエリシオンもねぇ、決してデキが悪いわけじゃなかったんだけど」 男B「そうだよねぇ。もしも市販されてたら、けっこう売れたかもしれないよね」 男A「……? エリシオンは普通に市販されたけど?」 男B「えっ? エリシオンってコンセプトモデルでしょ?」 男A「……?」 男B「……?」
クルマ好きと二輪車好きとの間で、こんな感じの噛み合ってない会話がなされたとしても無理はない。ホンダの四輪車と二輪車は「車名がカブっているもの」がけっこう多く、先ほどの会話でいえば、男Aはミニバンの「エリシオン(ELYSION)」について話していて、男Bはスクーターのコンセプトモデル「エリシオン(ELYSIUM)」について話しているわけだ。
なぜホンダのクルマとモーターサイクルの車名がカブっている場合があるかといえば、同社は車名の商標を「四輪車でも二輪車でも使える形」で登録しており、膨大な商標登録済み車名のなかから、折を見て「ちょうどよく似合う感じの車名」を、そのときどきの四輪車または二輪車の車名に採用しているからだ。
冒頭で出た「エリシオン」の四輪車は、よくご存じのとおり2004年から2015年まで販売されたミニバンだが、二輪車のエリシオンは、2001年の第35回東京モーターショーに出品された電動コンバーチブルルーフ付き大排気量スクーターのコンセプトモデルだった。
カタカナの車名はいずれもエリシオンだが、横文字の表記はミニバンのほうが「ELYSION」で、スクーターのほうは「ELYSIUM」。意味はどちらもギリシア神話に出てくる、善人が死後に住む至福の地「エリュシオン」のことである。
1991年に本格派の軽オープンスポーツとして衝撃的なデビューを飾った「ビート」も、じつはその前に二輪車で使われていた車名を再利用したものだ。
二輪車のほうのビートは1983年に発売された、世界初の水冷2ストロークエンジンを搭載した50ccスクーター。バイクのほうのビートは1986年に販売終了となったが、1991年を前に画期的な軽ミッドシップオープンスポーツカーの開発を行っていたチームは、膨大な「過去二輪車」の車名ストックのなかから「ビート」という、まさにあのクルマにぴったりな語感と字面を持つ宝物を見つけたのだろう。
「ストリーム」も、二輪車の車名→四輪車の車名という流れになったネーミングのひとつだ。もともとのホンダ・ストリームは1981年に発売された50ccの「スリーター」、つまりフロント1輪+リヤ2輪のスクーターだった。
「新しい乗り物の流れを作り出す」という意味合いでSTREAM(「流れ」という意味の英語)になったようだが、のちのトヨタ・ウィッシュとガチな販売バトルを行うことになった四輪車のストリームのほうが、「低床ロールーフミニバン」という新しい流れを創出したような気はする。
「インテグラ」も登場は二輪車のサブネームが先だった
ストリームの後継モデルではないが、似た流れを汲む3列シート車「ジェイド」の名も、それ以前に二輪車のほうで使われていた車名である。
二輪車のほうのジェイドは、1991年に発売された250ccのネイキッド・ロードスポーツで、エンジンは4ストのレーサーレプリカ「CBR250RR」と同型のMC14E。
この二輪のジェイドが1996年に販売終了となったあと、2015年に登場したのが3列シート四輪車のジェイドだ。
ちなみにジェイド(JADE)とは英語で「翡翠」を意味し、四輪車のほうは「高貴な美しさと不変の価値を持つ新時代のスタンダードカーを創造するという思いを込めて命名」したとのこと。しかし、四輪車のジェイドは決して悪いクルマではないものの「高貴な美しさと不変の価値を持つ」というのとはちょっと違うように感じるため、自社の廃番二輪車ネーム集のなかから語感と字面だけでなんとなく選んだ可能性もある。まぁ筆者の勝手な推測だが。
これらとは逆に、廃番となった四輪車の車名が二輪車で復活した例もある。たとえば四輪車の「インテグラ」はもはや説明不要の、タイプRという素晴らしい派生モデルも生み出した名作で、1985年から2007年まで販売された。
しかし、海外での販売は続いたものの、国内でのインテグラの販売が2007年までのDC5型で終わると、2012年には二輪車の「ホンダ・インテグラ」が発売された。こちらは「ニューミッドコンセプト」として開発された大型スクーターで、トランスミッションにはVFR1200Fに搭載したバイク用DCT第2世代が採用されている。
「インテグラ」というのは「統合」を意味する英語Integrateから来ている言葉であるため、乗り物の名前としては使い勝手がいいのだろう。
そもそもホンダのインテグラにしても1985年登場の四輪車「クイントインテグラ」がお初だったわけではなく、さらに古くから「CB750Fインテグラ」「CBX400Fインテグラ」など、二輪車のサブネームとして広く使われていたものだ。
これだけ二輪/四輪の双方で使える車名のストックが多いホンダだけに、「過去に二輪車で使われていたあの車名が、そのうち四輪車の車名として復活するのでは?」という期待も抱かせてくれる。
まぁ「VFR800F」などの英数系車名は、四輪車の車名として再利用するには無理がある。しかしたとえば、「フェイズ」は2009年に発売された250ccスクーターの車名だが、ホンダの次期型Bセグコンパクトの車名としてマッチするような気がする。
また、2000年に発売された250ccスクーターの車名「フォルツァ」は、スポーツe:HEVを搭載するCセグかDセグの次期型スポーティ系モデルに合うのではないだろうか。そんなモデルをホンダの四輪部門が今後作るのかどうか、筆者は知らないが。
なお、これはホンダの社内でカブっているわけではないが、ダイハツ・ムーヴとほぼ同じ名前を持つ「ホンダ・ムーブ」という110ccのスクーターもありましたな。こちらはムーヴではなく「ムーブ」で、横文字のつづりもMOVEではなく「MOOVE」でしたが。
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みんなのコメント
同じ名前の四輪だけでもモデルチェンジで違うクルマになってしまうのはホンダに限った話ではない。
もっと範囲を限定するために型式で呼ぶことの方が多いし、そのほうが話が通じやすい。