ファミリーカーとしての需要のほか、スキーや車中泊など、アクティブな活動をするうえでも重宝するミニバン。
各メーカーにとってもミニバンは稼ぎ頭であり、気合の入ったモデルが多いが、今回はその中でも人気のアルファード、フリード、ノア/ヴォクシー、デリカD:5を用意。自動車評論家 片岡英明氏、山本シンヤ氏がそれぞれの「推しポイント」と「残念ポイント」をチェック!
アルファード フリード ノア/ヴォク D:5… 家族で乗るからこそ知っておきたい 人気ミニバン4台の「推しなポイント」「残念なポイント」
※本稿は2022年5月のものです。「値引き額」はひと声引き額で遠藤 徹氏調べ。店舗や時期などによりこの金額を引き出せない場合もあります
文/片岡英明、山本シンヤ、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年6月10日号
■トヨタ アルファード
トヨタ アルファード。来年早々にも次期モデル登場といわれているが、今年3月の販売数は9587台というモンスター! 衝突被害軽減ブレーキなどに古さは感じるが、今や王者の風格があるミニバン
●トヨタ アルファード どんなクルマ?
2015年にデビューしたキング・オブ・ミニバン。2.5L&3.5Lガソリン、2.5Lハイブリッド(4WDのみ)を設定。
●トヨタ アルファードの「推しポイント」
押しの強いフロントマスクを採用し、外観は風格を感じさせる。
特にマイナーチェンジで化粧直しして以降は迫力を増し、ゴージャスなインテリアにも磨きがかかった。
2列目シートは広くて快適だし、3列目も余裕たっぷり。多人数でロングドライブを無理なく楽しむことができる。
パワフルな3.5LのV型6気筒エンジンは8速ATを得て気持ちよく滑らかに加速する。ハイブリッド車も優れたドライバビリティを披露し、実用燃費も優秀だ。
ファミリー層の実用域で乗り心地がいいのも魅力のひとつ。特に2列目は極上の座り心地だ。
●トヨタ アルファードの「残念ポイント」
フロアは低いのに運転席は高く、ドアの開口もあまり広くないから乗り込むのに苦労する。インテリアは上質だがデザインに新鮮味はない。快適装備に基本設計の古さが顔を出す。
衝突被害軽減ブレーキの検知機能も一世代前で、格下のヴォクシーに差をつけられている。ハンドリングや乗り心地も、最新のミニバンと比べると物足りない。
廉価グレードと上級グレードの価格差が驚くほど大きいのも頭を悩ませる。
●トヨタ アルファードS Cパッケージ・2WD主要諸元
・ボディサイズ:全長4950×全幅1850×全高1935mm
・車重:2010kg
・最小回転半径:5.8m
・エンジン:2.5L、直4(182ps/24.0kgm)
・燃費:10.6km/L
・価格:468万1600円
・人気No.1グレード:S Cパッケージ
・値引き:40万円
(TEXT/片岡英明)
■ホンダ フリード
ホンダ フリード。パッケージングの妙で室内は実に広い。一番の魅力はココ。しかし、乗り心地がやや悪いのとガソリン車の実燃費が悪いのが×。写真はフリードクロスター
●ホンダ フリード どんなクルマ?
2016年にデビューしたコンパクトミニバン。1.5Lガソリン&ハイブリッド(最新のe:HEVではなくi-DCD)を設定。
●ホンダ フリードの「推しポイント」
コンパクトサイズだがパッケージングに工夫を凝らし、キャビンは広い。2列目シートはもちろん、3列目でも窮屈と感じさせない空間を稼ぎ出している。
デザインはキープコンセプトだが、子育て世代のファミリー層が好むクリーンなルックスで、大きく立派に見えるのもいいところだ。
エンジンは1.5Lだが、思いのほかパンチがあり、ハイブリッド車は高速道路などで燃費がいい。背が高いのに腰高感が薄く、ロールも上手に抑え込んでいる。
軽やかなハンドリングで、コントロールしやすい。多人数乗車でも安心感のある走りはマル!
●ホンダ フリードの「残念ポイント」
インテリアは開放的だが、視点を遠くに置いたメーターは光が反射して視認性が今一歩と感じることがある。シートの座り心地もクラスレベルを超えていない。また、ライバルと比べホンダセンシングの洗練度は今一歩だ。
エンジンは軽やかだが、多人数乗車だと余裕がなくなる。冬場の燃費の落ち込みが大きいのも気になるところだ。
そして、ハイブリッドモデルの上級グレードは1クラス上のモデルの価格帯になっており、買い得感は薄い。
●ホンダ フリードG Honda SENSING・2WD・6人乗り主要諸元
・ボディサイズ:全長4265×全幅1695×全高1710mm
・車重:1350kg
・最小回転半径:5.2m
・エンジン:1.5L、直4(129ps/15.6kgm)
・燃費:17.0km/L
・価格:216万400円
・人気No.1グレード:G・Honda SENSING
・値引き:25万円
(TEXT/片岡英明)
■トヨタ ノア/ヴォクシー
トヨタ ノア/ヴォクシー。新世代2L、NAのガソリン、力強さも感じるハイブリッド。いずれも走りがいい
●トヨタ ノア/ヴォクシー どんなクルマ?
今年1月にフルモデルチェンジ。トヨタのミニバン初のTNGAを採用し、走りが進化。2Lガソリンと1.8Lのハイブリッドを設定し、押し出しの強い顔で大人気。
●トヨタ ノア/ヴォクシーの「推しポイント」
歴代ノア/ヴォクの最大の課題だった「走り」の部分の劇的な進化が〇。ガソリンは新世代2L、NA、ハイブリッドはエンジンこそ従来の1.8Lだがすべての電動モジュールに刷新。
ガソリン車は回すと若干ノイジーだが実用トルクの太さはダウンサイジングターボいらず。ハイブリッドは日常域の力強さは言うまでもなく、燃費性能も先代を大きく上回っている。
フットワークはプラットフォーム、サスペンションともにTNGA世代へと刷新。
加えてカローラ系で評価の高い第3世代EPS制御も採用され、直進安定性や回頭性、乗り心地を含めた総合性能は、先代とは「月とスッポン」ほどの差だ。
先代は移動のためのツールで運転手は我慢ばかりだったが、新型は走る喜びも感じられ積極的に運転したくなるほど。
先代では乏しかった安全・運転支援デバイスは最新版(第3世代TSS)を採用。
各種機能の向上に加えて、「プロアクティブドライビングアシスト」や「アドバンスドドライブ」、リモート機能付き「アドバンスドパーク」などトヨタ車のなかで最も先を行くスペックを採用。
一気にクラストップレベルとなり、驚くべき部分。
ヴォクシーのフロントマスクは賛否があるものの、意外と受け入れられている模様。インテリアも使い勝手の向上に加えて、エスクァイア要らずの質感の高さも感じる。
●トヨタ ノア/ヴォクシーの「残念ポイント」
このように全方位で進化を遂げた新型に×の部分は少ないが、強いて言えばトヨタブランド初となる「コネクテッドナビ」対応のディスプレイオーディオだ。
機能や性能面は言うことないが、「分割表示ができずに不便」「デザインがダサい」など詰めの甘さが気になってしまう。こういうところこそぜひともお得意のOTA技術を用いて、カイゼンしてほしい。
●トヨタ ヴォクシーS-Z(FF)主要諸元
・ボディサイズ:全長4695×全幅1730×全高1895mm
・ホイールベース:2850mm
・車重:1640kg
・最小回転半径:5.5m
・最低地上高:140mm
・エンジン:2L、直4DOHC
・最高出力:170ps/6600rpm
・最大トルク:20.6kgm/4900rpm
・WLTCモード燃費:15.0km/L
・価格:339万円
・人気No.1グレード:SZ(ガソリン、2WD)
・値引き:22万円
■三菱 デリカD:5
三菱 デリカD:5。世界広しと言えど、ミニバンとSUVのクロスオーバーは稀有な存在。基本設計は古いが、D:5でしか堪能できない世界があるのがこのクルマの強みだ
●三菱 デリカD:5 どんなクルマ?
2007年1月に登場し、2019年2月にビッグマイナーチェンジ。本格オフロード走行が可能なミニバンで、2.2Lディーゼルターボのみ。
●三菱 デリカD:5の「推しポイント」
最大の魅力は、ミニバンレベルを大きく超えた高い走破性を誇る4WD性能だ。オフロードや雪道を本格派のSUVと互角に走り切れる実力を秘めている。
自慢のASCなどの高いポテンシャルを多くの人が無理なく引き出せるように、絶妙に味つけしている点が凄いと思う。
日産にも供給した2.2Lのコモンレール式クリーンディーゼルターボも実力派だ。8速スポーツモード付きATの採用もあり、気持ちいい加速を引き出せる。
優れたドライバビリティを手に入れ、瞬時にシフトチェンジできるパドルシフトも便利な装備。
●三菱 デリカD:5の「残念ポイント」
クリーンディーゼルの実力を高いレベルに保ち続けるために定期的にアドブルーの補充が必要になる。
また、この装置を追加したことにより荷室が少し狭くなった。自慢のディーゼルは加速時などにエンジン音が耳に付く。
寒冷地での快適装備は充実しているが、パッケージングとデザインには古さが感じられ、フロアが高いのも子供連れのファミリー泣かせだ。
運転支援システムやコネクテッド機能もライバルに比べて物足りなく感じる。
●三菱 デリカD:5(P・7人乗り)主要諸元
・ボディサイズ:全長4800×全幅1795×全高1875mm
・車重:1970kg
・最小回転半径:5.6m
・エンジン:2.2L、直4ディーゼルターボ(145ps/38.7kgm)
・燃費:12.6km/L
・価格:438万7900円
・人気No.1グレード:P(7人乗り)
・値引き:28万円
(TEXT/片岡英明)
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