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ジャガーEタイプを現代技術で再生 イーグル・ナンバー1 精神と構造は変えず 前編

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ジャガーEタイプを現代技術で再生 イーグル・ナンバー1 精神と構造は変えず 前編

オリジナルの精神を維持したレストモッド

アクセルペダルを蹴飛ばすと、普通のジャガーEタイプとは違うことが顕になる。フライホイールが小さいようだ。「軽くしてあります」。カムは?「イーグル社のオリジナルです」。ノーマルの4.2L直列6気筒エンジンより、回転上昇が遥かに鋭い。

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それだけではない。パワーアシストのないステアリングで向きを変えるのは、幅225という、Eタイプとしては太いタイヤ。それでも、操舵感が軽く旋回性がすこぶる良い。ノーマル・サイズと比べて、恐らく幅も重さも倍くらいはあるだろう。

ステアリングホイールには、ポルシェ911のように情報がクリアに伝わる。フロントノーズへ重いエンジンが搭載されていても、鼻先の動きは軽快。グリップ力にも不足はない。

ブレーキも効く。思い切りペダルを踏むとフロントタイヤがロックするが、効きの強さは調整しやすいから、心配はいらない。

タコメーターを視界に入れつつ、5500rpmまで引っ張る。アクセルを戻すと、アフターファイヤーのパラッパラッという破裂音が放たれる。滑らかにスライドする、4速MTのシフトレバーをゆっくり動かす。

取材日は絶好のEタイプ日和。ただし、このクルマの正式名称はイーグル・ナンバー1だ。

英国に拠点を置くイーグル社は、「オリジナルの精神や信頼性、安全性、パフォーマンスを損なうことなく、Eタイプの個性を保つ」という哲学を掲げ、古いジャガーをレストモッド、現代技術で再生している。

復元されたEタイプを固定価格で提供

今回ご紹介するのは、1966年式のジャガーEタイプがベース。ヘンリー・ピアマン氏とポール・ブレース氏が完璧に仕上げた最初のクルマで、初代オーナーが25年間も大切に乗っているという。

レストモッドされてから5万km近く走り込まれているが、ボディは塗装から数年しか経っていないように艷やか。インテリアのレザーが程よく馴染んでいる。

オーダーしたジョン・マクラーレン氏は、このEタイプに惚れ込んだ。イーグル社の一員になるほど。

同社を創業したピアマンに話を聞く。「ジョンのクルマは、25年前のわれわれが作った古いイーグルです」。現代技術を用い、当時のジャガーより高水準で、完璧なEタイプを提供するという姿勢を形成するきっかけになった1台だという。

ジョンが初めてレストアされたEタイプ S2ロードスターを手にした頃は、熱心なクラシックカー・ファンではなかったそうだ。むしろ、絶え間なく発生する不具合にうんざりしていた。信頼できるクラシックカーを希望していた。

ピアマンとブレースは、ジョンが排他的なオリジナル信者ではないという考えに後押しされ、一般的なメンテナンスやレストアとは違う手法を導き出した。それが、完全に復元されたEタイプを、新車のように決まった価格で提供するビジネススタイルだ。

新生したイーグル社は1993年にグレートブリテン島の南、イーストサセックス州へ移転。1995年に、ジョンのEタイプを完成させた。HUF 42Eのナンバーを付けた、このクルマだ。

21才でイーグル社を創業したピアマン

レストモッドされたEタイプを受け取ったジョンは、地元でシェイクダウン。その後、フランス経由でスイスへ向かった。

ところが3日後、フランス東部のディジョンという街でトランスミッションが破損。ブレースへ電話をすると、翌日の朝に修理をしてくれたそうだ。MTの供給元を変更することにもつながった。

さかのぼると、ピアマンは高校卒業後すぐに、クラシックカーのレストアを始めた。18歳で最初のEタイプを入手し、1984年にイーグルEタイプ社を創業した。若干21才で。最初に請け負ったのは、3.8Lのクーペだったという。

1998年、彼はEタイプ S1 1/2ロードスターでピレリ・クラシック・マラソンへ挑戦。初戦ながら、5位入賞を果たした。

翌1989年にも参戦。見事に優勝し、クラシック・ラリー界に大きな衝撃を与えた。同じイベントを、1966年式ポルシェ911 Tで走っていたのがブレース。程なくお互いに意気投合し、イーグル社へ加わった。

1992年、2人は新車時より優れたEタイプのレストアを手掛けるというPRを開始。その広告を目にし、最初の顧客として依頼してきたのがジョンだった。彼のビジネスに対する洞察力と、クルマへの考え方は、イーグル社の運営方針に影響を与えた。

ジョンは仕事に強い関心を寄せ、アドバイスもした。パンフレットの文章も仕上げた。シングルモルトで有名なマッカラン醸造所での経験を活かし、2015年にイーグ社の取締役へ就任。今では、ゴードン・マレー・グループの取締役の1人でもある。

ディティールに見える同社のコダワリ

2004年、ブレースはフレア・フェンダーのボディをデザイン。翌年には、既存構造を活かしてボディへ施せる改造の可能性を模索した。クーペボディのイーグルは2009年に完成。元レーシングドライバー、マーティン・ブランドル氏へ引き渡された。

イーグル・ロードラッグGTと呼ばれる、市販版のクーペが完成したのは2013年。3年後にスパイダーGTを発表。2017年になって、翼を広げたデザインのブランドロゴが生まれている。

現在の究極仕様といえる、ライトウェイトGTは2020年に発売。4.7Lエンジンに広角ヘッドが組まれ、最高出力は400ps以上を発揮する。その名のとおり車重は1000kgほどしかなく、ノーマルのEタイプより約30%も軽い。

アルミ製のヘッドには、イーグル社のロゴが誇らしげに施してある。「大きさから想像できるとおり、ソリッド素材から削り出しています。オリジナルで状態の良いものを探すことは、難しい作業です」

鈍く輝くヘッドが美しい。こんなディティールへのコダワリこそ、イーグル社のクルマづくりの姿勢を表すものだといえる。

取材時点では、イーグル社はNo.49のEタイプを仕上げている途中だった。No.50も並んで進行中。技術開発は継続されており、最新のイーグルEタイプも徹底的に作り込まれている。

「オリジナルをリビルドした域を超えていません。本質を維持するために、多大な努力を投じているんです」。ピアマンが強調する。

ブレースも付け加える。「Eタイプの魂は残したいと考えています。可能な限りオリジナル部品を用いています。燃料インジェクションを載せたり、V8エンジンを積むこともありません」

この続きは後編にて。

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