ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、2026年のF1規則変更によって参戦を決めた自動車メーカーと、その狙いに焦点を当てた。
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2024年シーズンの半分が終了し、完全に新しい技術レギュレーションが施行されるまで、あとわずか1年半となった。2026年からF1は環境に優しい新しいパワーユニット(PU)を使用する。それにより、自動車業界にとってF1は、技術的により興味深い存在になった。
2020年代初めには、世界中の自動車メーカーが電気自動車に焦点を合わせ、近い将来に化石燃料で動く内燃機関を廃止するという野心的な計画があちこちで発表された。しかし今日では多くのメーカーが方向性を変更している。電気自動車の販売が期待を下回っているために、自動車メーカーは現在、環境と気候に優しい別のエンジンコンセプト、つまりカーボンニュートラル燃料で動く効率的なハイブリッドエンジンに目を向けているのだ。
これは2026年の新規則下でF1が使用するエンジンと全く同じタイプだ。F1では、ハイブリッドエンジンの約1000馬力のうち50パーセントがバッテリーから供給されなければならず、1.6リッターのターボエンジンは持続可能なカーボンニュートラル燃料で動かさなければならなくなる。
■アウディ「F1は世界的な舞台であり、挑戦的な開発実験室」
この新レギュレーションが、何社かの自動車会社をF1に引き寄せた。これまでF1に参入したことがないアウディは、ザウバーを買収し、2026年からアウディの公式ファクトリーチームとなる。2022年8月にF1プロジェクトを発表した際に、当時の会長マルクス・ドゥスマンは、こう語った。
「F1は、アウディブランドにとって世界的な舞台であると同時に、非常に挑戦的な開発実験室でもある」
「ハイパフォーマンスなエンジンと高い戦闘力を備えたマシンの組み合わせは、いつの時代も自動車業界に革新的で高度なテクノロジーをもたらしてきた。新しいレギュレーションの発表により、アウディはF1に参戦する絶好の機会が到来したと判断した。F1とアウディは、どちらも明確な持続可能な目標を追求しているのだ」
アウディはEVへの移行を進める一方で、移行期において、プラグインハイブリッド車を展開している。
アウディは、純粋な電気自動車によるフォーミュラEに参戦していたが、現在はF1に集中している。1954~55年、そして2010年からF1に関わってきたメルセデスも、フォーミュラEから撤退した。
「今後、当社は、ワークスモータースポーツ活動をF1に集中させ、持続可能でスケーラブルな将来のパフォーマンス・テクノロジーを開発し、証明するための最速の実験室としての、このスポーツのステータスを強化する」と、メルセデスは、2021年8月にフォーミュラEから撤退することを発表した際のプレスリリースにおいて述べている。
■フォード「F1は費用対効果の高いプラットフォーム」
アメリカの自動車会社大手フォードは、2004年にグループがジャガーチームを売却して以来、F1に関わっていなかった。だがそのフォードもF1に復帰することを決めた。ブルーオーバルは、レッドブル・パワートレインズと提携し、2026年から、レッドブルとその姉妹チームRBが搭載する新しいエンジンを財政的にも技術的にも支援する。
「フォードがレッドブル・レーシングと提携してF1に復帰することは、当社の未来を象徴している」と、レッドブルとのパートナーシップが発表された際に、フォード・モーター・カンパニーの社長兼CEOジム・ファーリーは述べた。
「F1では電動化が進み、ソフトウェア定義がなされた最新マシンや体験のプラットフォームとなっている。F1は、革新、アイデアや技術の共有、そして何千万人もの新規顧客との関わりを実現するための、非常に費用対効果の高いプラットフォームとなるのだ」
■ホンダ「カーボンニュートラルの方向性が一致」
2019年からレッドブル・レーシングにパワーユニットを供給してきたホンダは、2021年シーズン末でF1活動を終了するという決定を下した。その理由として挙げられたのは、将来のカーボンニュートラル実現に集中したいという方針だった。ホンダは、2025年末までレッドブルとRBのためのパワーユニットのサポートは継続することに同意、レッドブルは2026年に向けてフォードと提携することを決めた。
しかしホンダはその後、方向転換し、F1に高効率ハイブリッドエンジンとカーボンニュートラル燃料が使用される新技術レギュレーションが導入されることを背景に、再びF1パワーユニットサプライヤーとして活動することを決定した。ホンダは新時代のF1において、アストンマーティンF1チームのパートナーを務める。
この発表の際に本田技研工業株式会社の三部敏宏社長は、次のように述べていた。
「F1が、ホンダの目指すカーボンニュートラルの方向性と合致する、サステナブルな存在となり、私たちの電動化技術を促進するプラットフォームになること。これが、ホンダとして再びF1にチャレンジする大きな理由の一つとなりました」
「2026年からの新レギュレーションでは、小型・軽量・高出力のモーターや、大電力を扱える高性能バッテリーとそのマネジメント技術が勝利への鍵となりますが、ここから得られる技術やノウハウは、電動フラッグシップスポーツをはじめ、これからの量産電動車の競争力に直結する可能性を秘めています。さらに、現在研究開発を進めているeVTOLなど、さまざまな分野にも生かすことができると考えます」
その他にも、アンドレッティ・グローバルと提携するGM/キャデラックが、承認を得られればF1に参入する計画だ。2026年に新世代を迎えるF1は、より環境に優しい未来のための素晴らしい実験室になると、多数のメーカーが考えているようだ。
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