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【一昔前ならスーパーカー級】フォーカスRS マウンチューンM520へ試乗 520ps

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【一昔前ならスーパーカー級】フォーカスRS マウンチューンM520へ試乗 520ps

520psを繰り出すCセグのホットハッチ

text:Richard Lane(リチャード・レーン)

【画像】M520に並ぶホット・コンパクト 全93枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


マウンチューン社の手によるフォード・フォーカスRS マウンチューンM520。2000psを叩き出す無名のスーパーEVが登場する前の、一世代昔ならどんな見られ方をされただろう。

人間の限界の3割も発揮すれば、スーパーカーを操れた時代があった。ジュネーブ・モーターショーで、カレラGTのコンセプトカーが発表された2000年。その頃なら、とんでもない性能をフォード・フォーカスRSが獲得していると実感できたはず。

ポルシェがV10エンジンのスーパーカーを計画していた頃、マウンチューン社はフォーカスWRC用の4気筒ワークスエンジンを手掛けていた。実力派が作った520psを繰り出すCセグメントのホットハッチは、只者ではない。

M520にも4気筒ターボエンジンを搭載するが、ベースとするのは2.3Lのエコブースト・ユニット。最新のフォーカスSTが採用するものと同じだ。

ほかにM375と、M400rというチューニング・キットが用意されており、M520は最も過激なパッケージ。低抵抗のセラミックベアリングと低慣性タービンでアップデートされた、ボルグワーナー製ターボが主役となる。

カムシャフトやバルブトレインも専用品で、燃料ポンプも強化品。ガスケットやホース類、ボルトやナットまでもが、変更を受けている。

このエンジンを搭載するため、車体にはマウンチューン社製のインタークーラーとエアインテーク、エグゾーストなどが組み付けられる。フロントのドライブシャフトは強化品となり、デフもクワイフ製のLSDに交換。一方で、リアアスクル周りは標準のままだ。

2600rpm以下なら走りは穏やか

フォーカスRSをM520へ仕立てるのに必要なキット代は、1万5000ポンド(214万円)。日産GT-Rを脅かすような、マウンチューン社ならではのドライバビリティのための費用と考えれば、高くはない。

M520はどこか実験的でもあり、反道徳的でもある。多くの人が怖がる動力性能ながら、一部のドライバーは強いアピール力を感じ取るだろう。

クルマをスタートさせても、2600rpm以下なら穏やか。適切にシフトアップしていれば、マナーはマイルドといって良い。ミシュラン・カップ2タイヤとジオメトリー変更を受けたサスペンションを装備し、ステアリングも悪くない。

操舵感には少しゴムっぽさがあるが、レスポンスは良好。フィーリングは豊かで、フォーカスSTにはない本物の重みを感じる。

試乗車には、開発で5万6000kmもの距離を走破したという、KW製の2ウェイ調整式ダンパーを装備する。M520のキットには含まれないが、追加しておく価値はある。

BMW M2コンペティションと同じような、引き締まりながらもしなやかな姿勢制御を実現している。路面にうねりや深い轍があっても、フロントタイヤはしっかりと地面を掴んでくれる。

燃費は普通に走っていても、10.6km/L前後へ悪化している。郊外の道で激しく攻め立てれば、2.8km/Lくらいは覚悟した方がいい。

だが、燃やしたガソリン分だけ、M520は激しく走る。2800rpm前後でターボが目覚めると、トルクカーブが急激に盛り上がる。1000rpm増えるだけで、34.5kg-mが加算される。

ドライで4速でもホイールスピン

トルクステアも強力。だが冷静を保っていれば、生け垣に突っ込むようなことはないだろう。慣れるまでは、かなりの脅威を感じるかもしれないが。

滑らかで乾燥した直線でも、フルスロットルを与えれば、4本ともにタイヤは耐えきれずスピンする。4速でも。電子制御システムはオフの方がクルマは幸せかもしれないが、タイヤは常に回転過剰。ラリードライバー級のスキルが必要だ。

適切にシフトアップしてパワーを掛けていけば、猛烈な勢いでスピードを高めていく。追い越したフォルクスワーゲン・ゴルフRが、普通のクルマのように見えるかもしれない。

爆発的なトルクに慣れてくると、シャシーの許容量の高さも理解できてくる。ターボラグに悩まされないブーストアップされたエンジンと、4輪駆動にマニュアルが組み合わされた、M520の体験を満喫できるようになる。

ブローオフのホイッスルと、ターボの唸りがエグゾーストノートとともに響いてくる。アクセルオフにすると、ターボラグを解消するアンチラグシステムの破裂音も、劇場的に楽しめる。

マウントチューンM520のドライビング体験は、楽しむというより、スピードのスリルを味わう、といった方が近い。パワースライドもできるが、しばしば息が合わないこともある。敬意を払い、学んでいく必要がある。

完璧ではない。それでもフォード・エスコート・コスワースの後継モデルを探していた重度のフォード信者にとって、フォーカスRS マウンチューンM520は待ち望んでいた1台だと思う。

最もスリリングなフォーカスRS

個人的には、少し穏やかなマウンチューンM400rを試してみたい。依然として凄まじく速く、M520ほどキットの値段も高くないから、シャシーへお金を回すこと可能だ。

車高の下がる、KW社製のサスペンションは手に入れたい。車重的に必要だと思うし、リアタイヤの安定性は高まり、自由に振り回せるようにもなる。

お金で解決できる最もスリリングなフォーカスRSを探しているなら、M520の備える二面性は、特に心に響くだろう。

ターボが目覚める前のパワートレインは扱いやすく、標準のフォーカスRSと遜色ない乗りやすさを残している。スイッチを入れた時の520psと71.2kg-mというスペックを考えれば、驚くほどの振り幅だ。

フォーカスにこだわらないのなら、中古のベース車両と合わせて最低でも3万7000ポンド(529万円)ほど掛かる費用を考えると、疑問も湧くはず。三菱ランサー・エボリューションXなどに目移りしても当然。

ランエボXも、グループAラリーマシンのような雰囲気を漂わせている。M520に匹敵するスピードを持ち、走行時の質感やインテリアの仕立ても、負けてはいない。フロントタイヤに頼りすぎない、甘美なハンドリングも備えている。

パフォーマンスでいえば、メルセデスAMG A45 Sという選択肢もあるが、高価でカリスマ性はそれほどでもない。直接のライバルとはならないだろう。

フォード・フォーカスRS マウンチューンM520のスペック

価格:3万7000ポンド(529万円・ベース車両込み)
全長:4378mm(標準フォーカス)
全幅:1825mm(標準フォーカス)
全高:1454mm(標準フォーカス)
最高速度:281km/h(予想)
0-100km/h加速:4.0秒(予想)
燃費:-
CO2排出量:-
乾燥重量:1599kg
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:520ps/5550rpm
最大トルク:71.2kg-m/4000-4700rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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