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【MotoGP創成期】YAMAHA YZR-M1(2006)徹底解剖<No.01>「ヤマハ時代のロッシが駆けた990cc最終型のYZR-M1」

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【MotoGP創成期】YAMAHA YZR-M1(2006)徹底解剖<No.01>「ヤマハ時代のロッシが駆けた990cc最終型のYZR-M1」

比類なき先進性を誇った2005年型を造ってしまったからには、それを超えるものを開発しなければならない。大きなプレッシャーを背後に、未踏の地に足を踏み入れた2006年。残念ながら最初の一歩は予想をやや外れていた。すぐに軌道修正して開発を続行するが、3連覇はならず。レースの厳しさと開発の難しさを感じさせた2006年だった。

Text:Nobuya Yoshimura Photos:Teruyuki Hirano

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990cc最終型のYZR-M1。タイトルは逃すが、先進の並列4気筒は、さらなる進化をとげた
車重150kgそこそこで最高出力200ps以上のマシンが、軽々と300km/h超まで加速し、そこから減速し、曲がるという世界は、どのメーカーにとってもモトGPが初めてであり、まだ5年間の経験しかない。

電子制御技術のおかげでエンジンがライダーの手に負えるようになっても、車体まわりは制御できない。しかも、ディメンションやセッティングでカバーできる範囲は限られており、何かの原因でバランスが崩れてその範囲からはみ出ると、スロットルを戻す以外にコントロールしようのない狂暴さを見せつける。

あり余る力を無駄なく使うためには剛、無駄な動きを抑えるためには柔でなければならず、この剛と柔のバランスがわずかに狂ったのが、M1における2006年シーズン序盤のチャタリング問題ではないだろうか。

車体まわりの開発方向と、ミシュランタイヤの改良方向の微妙なズレが直接の原因だったのかもしれないが、それをシーズン中に克服したヤマハは、2006年のタイトルを失った代わりに、数々の貴重なノウハウを蓄積した。そしてそれらは、この2006年最終型に生かされているのはもちろん、2007年からの800ccマシンにも必ずやフィードバックされているはずだ。

2002~04年の3年間の開発/参戦で得たデータを基に“やりたいことをすべてやった”2005年型をベースに、2007年からの800cc化を考慮したエンジンの高回転化と、ブレーキングからコーナー進入における車体まわりの安定性/運動性の向上を目標に開発された2006年型。

初代2002年型と比べると、35psのパワーアップと3000rpmの最高出力回転数の上昇を実現しており、第二世代のエンジンを積んだ2005年型と比較しても5ps/500rpm近く高回転・高出力型になっている。

車体まわりのほうは、開幕と同時に(シーズンオフのテストで出なかった)フロントのチャタリング問題が発生したが、2005年型に近い対策型フレームとその発展型フレームを相次いで投入し、終盤に解決した。

基本設計は2005年型を踏襲しており、大まかな形状とレイアウトは共通。エンジン前後長を詰めるべくクラッチを上部に押しやる手法はYZF-R1にも見られるが、2005~06年型のM1はクラッチ最外周下部がスイングアームピボットよりも上にあり、これほど高い位置にクラッチを配したモトGPマシーンは例がない。

2004年型まではアルミ削り出し、2005年型はアルミ削り出し+黒アルマイト処理だったオイルパンは、さらなる軽量化を狙い、2006年型はマグネシウム鋳造に変わった。

モトGP車における各メーカー共通の悩みは、クラッチの熱対策である。M1の場合、最も外側にあるプレッシャープレートに、2005年型までは鉄系素材を削り出してチタンコーティングしたものを用いていたが、2006年型はアルミ系素材を削り出し、硬質アルマイト処理をしたものに変化している。

2005年型と比べるとかなり肉を厚く残しており、熱容量を増やし、変形を抑えようという意図が感じられる。

クランクケース本体は、従来型と同じくアルミ材(おそらくA7075材)を削り出して造られており、ボールエンドミルによる三次元加工の切削痕が生々しい。

右側クランク軸端部左上に取り付けられた2本の配線は、途中で1本にまとまってシリンダーヘッド上に伸びており、その先がどうなっているかは確認できなかったが、線材の太さやターミナルの形状から、エンジン本体のアースリードワイアではないかと思われる。

メインフレーム側面の三角穴から内部をのぞくと、吸気側カムシャフトまわりのシリンダーヘッド/シリンダーヘッドカバーとスロットルボディ(これもまたアルミの削り出しパーツ)の一部、そして、そこに取り付けられたスロットルバルブを駆動するリンケージが見える。

クランクケース後部上面には、クランクケース内減圧システムのリードバルブが2個並んでおり、前方に伸びるホースはエンジン上を通ってパイプと結合。右横から前下方へのホースは、クラッチ上方前部のふくらみの裏側に達する、いわゆるブリーザーホースである。

排気ポート直後のエグゾーストパイプ側面に穴を設け、高速の排気流が生む負圧を利用してクランクケース内の圧力を下げる方式自体は従来型と同じ。

逆流防止用(圧力差が逆の場合は閉じる)リードバルブの下にある箱は、ブリーザーから強制的に吸い出した空気に混じるオイルミストを除去するためのフィルターケースかもしれず、クラッチ脇からブリーザーを取り出しているのは、ミッション・メインシャフトの回転を利用して遠心分離を行っていると考えることもできる。

2005年型からはスイングアームピボット上側のクロスメンバーがなくなり、クランクケース後端上部のマウント部分が左右のフレームをつなぐ強度メンバーとなっており、さらにその中央部から後方に張り出した部分がリアショックの上側を支持する。

YAMAHA YZR-M1(2006)<No.02>へ続く
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