F1アメリカGP失格のルクレールとハミルトン、実は”最初から”調査対象だった。FIA「他2台の追加チェックは関連性を見るため」

　アメリカGP決勝で2番手フィニッシュを果たしたルイス・ハミルトン（メルセデス）と、6番手フィニッシュのシャルル・ルクレール（フェラーリ）は、レース後に失格となったが、FIAは元々この2名をチェックする予定だったという。

　ハミルトンとルクレールはレース後の車検で、マシン下面のプランクが規定で定められている1mm以上に摩耗していることが判明し、失格となった。

　ハミルトンとルクレールに加え、優勝したマックス・フェルスタッペン（レッドブル）と3番手フィニッシュ（2位昇格）ランド・ノリス（マクラーレン）がアメリカGP決勝後に車検の対象となったが、下位のマシンはチェックが行なわれなかった。

　アメリカGPの舞台となったサーキット・オブ・ジ・アメリカズの路面はバンピーであり、多くのマシンがレギュレーションに違反していたのではないか、としてもっと多くのマシンをチェックすべきだったのではないかという声もある。

　ハミルトンは翌戦メキシコシティGPを前に、情報筋から他の“多くの”マシンがレギュレーション違反だったにも関わらずFIAのチェックを受けなかったため、リザルトに残ることができたと耳にしたと示唆した。

　しかし、どのような経緯で車検が行なわれたのかが新たに明らかとなった。FIAのテクニカルディレクターであるティム・ゴスは、当初はハミルトンとルクレールのプランクだけを見る予定だったことを明かした。

　FIAは各車のパフォーマンスデータにアクセスできるため、この2台に特にボトミングが発生していたことを把握していたのだろう。

　ゴスはSky Sportsの取材に応じ、ルクレールとハミルトンのマシンに発生したプランクの過度な摩耗がレースの状況に伴うモノだったのかを見極めるために、車検対象を拡大する決断に至ったと経緯を説明した。

「我々はレース後のチェックで2台を選び、それを検査した」とゴスは言う。

「チェックには時間がかかるし、彼らがレギュレーションに反していることも分かった。それで少し懸念が浮上した」

「我々がやりたかったのは、その問題が組織的なモノなのか、レースと関係があるのか、あるいはレースのコンディションと関係があるのかを理解することだった」

「だから別の2チームを選ぶことにした。その2台が偶然にもフェルスタッペンとノリスで、それらをチェックすることになった」

「チェックを行なった後、その2台はリミット内に収まっていて、全て問題ないことが分かった」

　FIAは4チームのマシンでチェックを終了したが、それでも4台中2台が車検不合格となったことで、失格となったハミルトンとルクレール以外のドライバーを繰り上げで最終順位を決める前に全てのマシンをチェックすべきだったという意見も多い。

　しかし、ゴスは時間的な制約があったとして、そのような選択肢が不可能だった理由を次のように説明した。

「定規やデプスゲージを穴に突っ込んでスキッドの厚さを測定するだけでは済まないんだ」

「実際にはクルマの一部を分解しなければいけない。チェックには30分ほどかかる」

「仮に2人のクルーでやるとしたら、全車両をチェックした後にスチュワードに報告していたら5時間はかかる」

「レース結果が出るのは、6～8時間後になるかもしれない。ただそれはスポーツとして許されることではないと思う」

　ウイリアムズの車両パフォーマンス主任であるデイブ・ロブソンもゴスの意見に同意。全車をチェックするのは非現実的だと主張した。

「レギュレーションを順守させる方法として、全てのレースで終了後に全車をテストするというのは現実的ではない」

「時間がかかりすぎて、誰もがイライラしてしまうだろう。抜き打ちチェックとペナルティの重さは十分だと思うから、基本的にはほとんど、あるいは全車が合格すると思う。今のままで良いと思うよ」