F1最終戦アブダビGPの決勝レースを制したのは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンだった。アルファタウリの角田裕毅は8位入賞し、自身初となるドライバー・オブ・ザ・デイにも選出された。
ある者にとっては来季に向けた区切りのレース、ある者にとっては最後のレースとなったアブダビGP。夕日に染まったヤス・マリーナ・サーキットには多くのファン、豪華ゲストが詰めかけ、2023年シーズンを締めくくるグランプリを目撃した。
■インタビュー|ベッテル、フェルスタッペン、角田裕毅らを育てたアルファタウリのトスト代表が振り返る“仕事一筋”の18年間
アブダビGPは中東らしく3日間を通してドライコンディションとなり、西日が差す決勝前は気温27度、路面温度35度だった。
前日に行なわれた予選ではフェルスタッペンがポールポジションを獲得。フェラーリのシャルル・ルクレールがフロントロウに並んだ。その後ろにはマクラーレン勢やメルセデスのジョージ・ラッセルと上位チームの常連がつけたが、6番手にはアルファタウリの角田と、最終戦にして勢力図に動きがあった。
ほとんどのマシンがスタートタイヤにミディアムを選択。予選Q1落ちを喫したフェラーリのカルロス・サインツJr.を含む後方の3台がハードタイヤを履いた。
20台が今年最後のレースに向けてグリッドに並び、58周のレースに向けて5つに灯ったシグナルが消えると各車が一斉に加速していった。
ホールショットを奪ったのはフェルスタッペン。オープニングラップで2番手のルクレールは果敢攻め立てるも、フェルスタッペンが守り切って2周目を迎えた。
2番手ルクレールの後ろには、ランド・ノリスとオスカー・ピアストリのマクラーレン勢、そしてラッセルが続いた。角田はターン1でアストンマーチンのフェルナンド・アロンソに先行を許すも、1周目のうちにポジションを奪い返して6番手をキープした。
DRSが使用可能となる3周目までに、フェルスタッペンはルクレールに1秒以上の差を築いた。ルクレールの後ろには、12番手につけたアストンマーチンのランス・ストロールまでがDRSトレインとなって連なった。
ラッセルは角田を1秒圏外に押しやり、前を走るピアストリに仕掛け続けるも膠着状態。バトルが続くことで角田もDRS圏内に戻って上位勢に食らいついていくことができた。
ただラッセルとピアストリのバトルは11周目のターン9で勝負あり。ピアストリは5番手に陥落することとなり、さらにラッセルに1秒差をつけられたことで今度は角田に迫られる格好となった。
角田の後ろを走っていたアロンソが12周目終わりにピットイン。ピアストリや首位のフェルスタッペンを含め、これを機に各車が1回目のピットを行なった。ここで各車が選んだのはハードタイヤだった。
一方で角田はミディアムスタートでは唯一のステイアウト。タイヤを変えたドライバーより1周1~2秒程度ペースが遅かったものの、ほとんどが2ストップ戦略を採る中、1ストップ戦略でポジションアップを狙った。
クリーンエアーの中安定して走った角田は、一時レースリーダーにも立った。そして22周目終わりにピットイン。ハードタイヤに履き替えて12番手でコースに戻ったが、その後ポジションをハミルトンの後ろ9番手にまで回復した。
レース折り返しというところで先頭に視線を戻すと、首位のフェルスタッペンはルクレール対して6秒のリード。ルクレールの後方には3番手のラッセルが2秒差で続いた。
2ストップ戦略のドライバーは32周目あたりから2回目のピットイン。ミディアム→ハード→ハードというタイヤ戦略が主流だった。
レッドブルは2スティント目を引っ張り、セルジオ・ペレスを42周目終わり、フェルスタッペンを43周目終わりにピットへ呼び込んだ。
これで上位はフェルスタッペン、ルクレール、ラッセル、ノリス、角田、ペレスという並びに。アルファタウリは周りのピットストップに反応することなく角田をステイアウトさせた。角田は自己ベストペースで応えるも、ペースに勝る2ストップ戦略のドライバーにポジションを奪われていった。
角田は44周目にペレスに交わされ6番手に後退すると、その後もピアストリやアロンソにも先行を許した。苦しい状況が続いた角田だったが、残り2周というところで背後に迫ったハミルトンに対して必死の抵抗。ファイナルラップでは2本目のDRS区間の終わり”ターン9”で角田は8番手を失いかけるも、ブレーキングでマシンが暴れたハミルトンの隙を突き、ポジションを奪い返し、そのまま8位でチェッカーまでたどり着いた。
結果的には、角田の43秒先でトップチェッカーを受けたフェルスタッペンが優勝。22戦のうち19戦を制すというF1の歴史に残るシーズンを過ごした。レッドブルとしては22戦21勝となった。
2位にはルクレール。レース終盤にはメルセデスとのコンストラクターズ2位争いを制するべく、他車との接触で5秒のタイム加算ペナルティが科されていたペレスをあえて先行させ、後方を走るラッセルからポイントを奪う戦略を採った。
ただそのペレスは2番手フィニッシュも4番手フィニッシュのラッセルに対して5秒以上のマージンを稼ぐことができず、ラッセルが3位表彰台を掴んだため、メルセデスがコンストラクターズ2位を獲得した。
レース結果では、ペレスが4位、ノリスが5位、ピアストリが6位、アロンソが7位、角田が8位、ハミルトンが9位、ストロールが10位というトップ10になった。
アルファタウリのフランツ・トスト代表としては、これがF1のチーム代表としてラストレース。チームはウイリアムズと争ったコンストラクターズランキング7位に3ポイント届かなかったが、角田は初のドライバー・オブ・ザ・デイという形で恩師の花道を演出した。トスト代表は前身のトロロッソ時代からチームを率い、角田やフェルスタッペンをはじめ、現在のグリッドには“教え子”が6名おり、若き才能を多数送り出した。
またアルファタウリというチーム名も今回が最後。来季はリブランディングによって名称が変更されることになっている。そしてアルファロメオとしても今回が当面のラストレース。来季からは本来のザウバーとしてF1に参戦することになるようだ。
今回のレースをもって、22戦で争われたF1の2023年シーズンが閉幕。2024年シーズン開幕戦バーレーンGPは4ヵ月後の3月2日に決勝レースが行なわれる。
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