この記事をまとめると
■惜しまれつつも生産を終えてしまった出来がよかったクルマを振り返る
あっという間に消滅! でもじつはアコードが凄かった【ぶっちゃけ不人気だけど私は推すクルマ まるも亜希子編】
■ここ数年で長い歴史を持っていたモデルの生産終了が相次いている
■いつ生産が終わってもおかしくない700kg台の車重をMTで操れる軽自動車が今なら選べる
個性は強かったが惜しくも生産を終了してしまったクルマたち
自動車メディアやファンはクルマをパッションやエモーションで評価しがちだが、クルマというのは工業製品であり、自動車メーカーというのは当然ながら営利企業である。端的にいって儲からないモデルというのは消滅してしまうものだ。
「儲からない=想定通りに売れない」、ということである。それでも開発費を回収すべく、グレード展開を絞って細々と売ることもあれば、これ以上傷口を広げないようディスコン(生産終了)となってしまうこともある。そんな消えたモデルであっても、すべてが駄目だったわけではない。企画段階と販売時点での社会ニーズの差、ライバルの存在などによってディスコンとなってしまっただけであり、オンリーワンの魅力があったモデルも少なくない。
ここでは、消えてしまったのが惜しいと思う、個人的に印象深いモデルを紹介しよう。
ディスコンになったのが残念……というキーワードで最初に思いつくのはホンダ・レジェンドだ。2021年に生産終了となったホンダのフラッグシップセダンは、モデル末期に世界初の量産「自動運転レベル3」を搭載するなど技術ショーケースといえる存在だったが、それ以上に印象的なのは、先代モデルから進化した「SH-AWD」にある。
「スーパーハンドリングAWD(四輪駆動)」を意味する、この技術はリヤ駆動によってクルマを曲げてしまうというもの。最初に搭載したときは機械式4WDのリヤに特殊なシステムを採用したものだったが、レジェンドの最終モデルではフロントを3.5リッターV6エンジン+モーターで、リヤを左右独立モーターで駆動するというハイブリッド四駆システムを搭載。リヤの駆動力を、自由自在にコントロールすることで、その巨体を感じさせないほどのクイックな姿勢変化と、高いスタビリティを両立したコーナリングを実現していた。
もっとも、駆動力で曲がるというパフォーマンスを引き出すには、通常であればアクセルオフで進入するようなシチュエーションであってもアクセルを踏んでいくという独特の操作が必要になる。そこに違和感があると指摘されたのも事実。また、あまりにコーナリングが軽快すぎて高級セダンらしからぬ走り味という評価もあった。そもそもホンダというブランドにおいて、少なくとも日本市場において、高級セダンを売るだけのブランド力がないという意見を目にすることもあった。
そんなわけでレジェンドを新車で買うことはできない状況になってはいるが、熟成されたSH-AWDの走り味はいまも忘れられない。手頃な中古車が見つかれば、手元に置いておきたいと妄想するばかりだ(現実的には難しいけれど)。
ディスコンが発表されたといえば、三菱のコンパクトカー「ミラージュ」が販売終了となるニュースは記憶に新しいだろう。タイで生産されるミラージュについては2022年12月に今後の法規対応が難しいということで生産終了が公表されている。
現行ミラージュは、当初1リッターエンジンを積んだベーシックコンパクトとして日本に導入されたが、その段階では走りが全般的にプアな仕上がりで、同じ予算であれば軽自動車を買ったほうが満足度が高い、というのが個人的な評価だった。
しかし、1.2リッターエンジンにスープアップした中期型、三菱のデザイン言語である「ダイナミックシールド」を採用した後期型と熟成が進むにつれて走り味も変わっていった。とくに中期型以降はタイヤにブリヂストンのポテンザを履くなど、スポーティハッチバックとしてキャラ変したことで、日常的にドライビングを楽しめるハッチバックとして評価を上げていった印象がある。
導入初期の「安いコンパクト」というイメージを払拭することができず、最後まで人気モデルとはなれなかったが、最終型ではミラージュという伝統の名前にふさわしいスポーツテイストを表現していた。こちらも中古市場で見かけたらチェックしておきたい1台といえる。
あえて今「MTの軽自動車」を選ぶのもアリ!
子育て期に理想的な導線とパッケージングという唯一無二の魅力を持っていたのに、2020年をもってディスコンとなってしまったのがトヨタ・ポルテだ。簡単にプロフィールを説明すれば、1.5リッター級コンパクトのプラットフォームを利用して、運転席はヒンジドア、助手席はスライドドアという左右非対称ボディを与えられたモデル。この魅力は初代、2代目と受け継がれた。また、2代目にはスペイドという姉妹車も存在していた。
ポルテの助手席スライドドアが、とくに便利なシチュエーションは乳幼児を抱きかかえて乗車するシチュエーションだ。助手席がたためるようになっていることもあり、スライドドアから乗り込んで後席にセットしたチャイルドシートに子どもを座らせ、そのまま車内を移動して運転席に座ることができる。親子がタンデムに乗るといった使い方ではポルテに勝るパッケージングは見当たらない。
そんなポルテがディスコンになってしまったのは、日本の少子高齢化により「子育てベストのクルマ」へのニーズが相対的に小さくなってしまったことにあるのかもしれないが、後継モデルがなくなってしまったのは残念だ。
個人的には乳幼児を育てることはないだろうから熱烈に欲しいと思うわけではないが、こうした子育てビークルが充実していることは未来につながると感じるからだ。
最後に、新車で買えるうちにチェックしておいてほしいモデルを紹介しよう。それはスズキ・ワゴンRである。現行型は初代のデザインテイストを感じさせるもので、原点回帰的に軽ハイトワゴンとしての使い勝手を追求したモデル。とくに初代ワゴンRを思わせるスタイリングのベーシックグレードは、121万7700円という手頃な価格設定となっているのもうれしいポイント。
そんなワゴンRの最廉価グレード、じつはトランスミッションが5速MTとなっているのはご存じだろうか。マイルドハイブリッド機構も持たないシンプルな3気筒エンジンとMTの組み合わせというのはいまどき希少だ。しかもFFと4WDの設定があり、FFの車両重量は730kgとハイトワゴンと思えないほど軽量なのだ。
ベーシックな軽ハイトワゴンを、あえてMTで乗るというのはコスト重視というだけでなく、プリミティブを趣味的に味わうという点からもカーライフの選択肢として意識しておくと面白いのではないだろうか。
「ベーシック軽でMTというのならスズキ・アルトのほうが適切では?」という意見もあるかもしれないが、最新のアルトは全車CVTとなっておりMTの設定はない。ここから予想するに、スズキの軽乗用車からMTが消滅する未来は近づいているとも考えられる。気になるようであれば、ラインアップされているうちにMTのワゴンRを検討しておくことをおすすめしたい。
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