世界初の水素燃料モータースポーツ競技として、2025年に初年度を迎える計画の『Extreme H(エクストリームH)』開幕を前に、2016年のF1世界チャンピオンであるニコ・ロズベルグが率いた“強豪”ロズベルグXレーシング(RXR)が、その活動を停止すると発表。シリーズの前身たるワンメイク電動オフロード選手権『Extreme E(エクストリームE)』の創世記から4年間にわたる参戦を終え、チーム閉鎖を決断するに至り、ロズベルグ自身も「ほろ苦い思い」だと語った。
昨年末には、世界モータースポーツ統括団体であるFIA世界自動車連盟の間で拘束力のない合意を締結。改めて2025年よりFIAエクストリームH・ワールドカップとして、FIAのワールドカップ格式を採用することが発表された新生ハイドロジェン・チャンピオンシップだが、その黎明期たる電動時代より24戦で9勝を挙げ、タイトルを2度獲得するなど、シリーズでもっとも成功を収めたチームがその舞台を去ることが決まった。
2025年始動、世界初の水素燃料ワンメイク競技『エクストリームH』がFIAのワールドカップ格式を取得へ
「RXRの構築は、レースのためだけではなく、真の変化をもたらすことができる目的志向のチームを作るためだった」と続けたロズベルグ。
「チャンピオンシップでの勝利から環境や平等の取り組みまで、僕たちは一緒に多くのことを成し遂げてきた。この章を閉じるのは『ほろ苦い』思いだが、僕らが達成したことを誇りに思っている」
サウジアラビアでの“柿(こけら)落とし”イベントを含む年間5戦中3勝を挙げたヨハン・クリストファーソン/モリー・テイラー組は、ロズベルグ自身の“宿敵”ルイス・ハミルトン率いるX44のセバスチャン・ローブ/クリスティーナ・グティエレス組(当時)を破り、初年度の王座に輝いた。
女性ドライバー初のオーストラリア・ラリー選手権王者でもあるテイラーは2年目のシーズンを前にチームを離れ、代わってミカエラ・アーリン-コチュリンスキーがレギュラーに就任。ペア初年度も年間2勝を飾ったが、最終戦を前にしたチリでは技術的な問題が発生してX44に次ぐ2位に終わると、最終戦ウルグアイではクラッシュを喫し、タイトル防衛の望みが絶たれていた。
「RXRは私に限界を押し広げ、目的を持ってレースをし、想像もしなかった方法で成長するチャンスを与えてくれた」と、翌2023年の“シーズン3”では自身初のチャンピオンを獲得し、チームに2度目のタイトルをもたらすとともに在籍通算6勝を挙げたコチュリンスキー。
「チャンピオンシップでの優勝から、社会的責務を果たすべく目的を突き動かすようなキャンペーン、何千本もの植樹、子供たちへの刺激と啓蒙まで、この旅は忘れられないものだった」
「ヨハン(・クリストファーソン)の隣で学ぶ機会を得られたことに永遠に感謝している。ヨハンは今やWorldRX世界ラリークロス選手権で7冠を保持している。チームを離れるのは寂しいけれど、この次の章が私をどこへ連れて行ってくれるのか。楽しみにしているわ」
短縮された2024年“シーズン4”は、サウジアラビアでふたたび勝利を収めてスタートを切ったRXRだが、4位フィニッシュが3回続いた後でランキング3位に後退。スコットランドでの『ハイドロX Prix』を経て、シリーズは2025年に向け水素燃料のエクストリームH転身に注力すべく選手権を中断する意思を固めた。
「ここまで2回のチャンピオンシップを獲得したことは素晴らしい戦果だが、もっとも際立っているのは、レース以外で僕たちが与えた影響だ」と応じたクリストファーソン。「これはレーシングチーム以上のものだ。家族のようなもので、素晴らしい時間を過ごせたことに感謝している」
この決定により、チームの公式SNSでも声明が出されているとおり、事実上2025年のFIAエクストリームH・ワールドカップへの参戦可能性は消滅したことが正式に確認された。RXRは声明の中で次のように述べている。
「エクストリームHと、そこに出場するすべてのチームが、水素動力モータースポーツの新時代を切り開くなかで、あらゆる成功を収めることを祈っています」
すでに専用車両『Pioneer 25(パイオニア25)』の初期テストフェイズを経て、各モデルが量産体制に入っているなか、他チームも刷新されたシリーズへの参加について控えめな態度を維持し続けているが、例外的にサン・ミニミールとヴェローチェ・レーシングは継続の意向を示している。
「RXRのこの章は本当に素晴らしいものでした」と、ここまでチームの商業事業担当マネージングディレクターを務めたマキシミリアン・ワスラー。
「勝利と違いを生み出すことに、これほど熱心に取り組むチームはめったにありません。私たちの業績を誇りに思うとともに、RXRの遺産が将来の取り組みにどのように刺激を与えるのか楽しみにしています」
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