中国の自動車生産・販売 2月は平均80%減
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】発売とともにコロナ禍の中へ 期待の新型ヤリス/新型フィット 全84枚
中国に端を発したコロナ禍は自動車の世界にも大きな影響を与え始めている。具体的にどんな影響があり、また、それに自動車メーカー各社はどう対応しているのか?
世界で最初にコロナ禍が発生した中国は、1月下旬以降、大手自動車メーカーの工場が操業停止となった。工場の一角でマスクを生産する光景をニュースで見て、衝撃を受けた人も多かっただろう。
製造も販売も大きな影響を受けた。その結果、中国における2月の新車販売は前年同月比79.1%減の約31万台。生産はさらに少なく79.8%減の28.5万台となった。
しかし、中国ではすでに2月の終わりからほとんどの自動車メーカーは工場を再開しており、ホンダの武漢工場も3月11日、同じく湖北省にある日産の工場も同13日再開している。もちろん、100%の状態にはまだ時間がかかりそうだが、条件付きであっても再開できたことは喜ばしい。
それと入れ替わるように3月下旬~4月以降の生産停止が始まったのは欧米のメーカーである。ジャガーランドローバー、ボルボ、デトロイトスリー(フォード・GM・FCA)含め、トヨタ、日産、ホンダの3社もアメリカでの生産停止を3月19日に発表した。現状4月上旬~下旬まで操業停止を予定している工場が多い。
国内では、トヨタとマツダをはじめ、複数のメーカーが生産調整に入る。
トヨタは海外の新車需要が低迷しているため、新型ハリアーが生産される高岡工場をはじめ4月3日より国内5工場7ラインで一時的に生産を停止すると23日に発表。
翌24日にはマツダが広島県と山口県の工場稼働を一時的に停止することを発表した。
納車時期に与える影響は?
生産が滞れば、当然納車も遅れてくる。1月下旬からの中国工場での生産停止によって、国内生産にも少なからず影響は出ている模様。中国で生産される部品は軽量で安価、ローテクな部品が多いと聞くが、1台のクルマには3万点もの部品が使われており、中国製造の部品が1つ足らなくてもクルマを完成させることが困難になる。
操業が再開された中国から必要な部品を空輸して完成させているクルマもあると、NHKのニュースでも報道されていた。
また、自動車本体の納車は問題なくても、メーカー&ディーラーオプションなどの用品パーツが揃わないことも珍しくない。走行自体に関係がないパーツなどは、ひとまず納車をして、中国からの部品が到着次第、後日、オプションパーツを装着するというパターンも増えている。
では納期に具体的にどれくらい影響しているのか?
トヨタ・ヤリスと、ホンダ・フィットの納車状況を調べてみたところ……以下の結果となった(3月26日現在)。
●トヨタ・ヤリス
ガソリン車は1か月程度
ハイブリッド車は4か月程度
●ホンダ・フィット
リュクス以外は2~3か月
リュクスは3~4か月(リュクスが遅れているのは、中国製造のワイヤレス充電器の遅れによるもの)
なお、輸入車に関して言えば、影響が出てくるのはこれから夏に向けてがピークとなりそう。
とくに、移動制限が出されている都市も少なくない欧州、被害が大きなイタリアでは自動車生産どころではない。アルファ・ロメオを扱う販売店に聞いたところ、イタリア本社からは何の通達も出ていないとのこと。
コロナの影響は車両の製造や販売だけではない。
車検満了日、抹消登録、自動車税の納付 延期対応
車検満了日や廃車(抹消登録)に関する手続きも延期の措置が取られている。
まず、車検満了日や抹消登録日の延期について。国土交通省は2月28日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で、自動車の車検有効期間を延長することを発表している。車検満了日が2月28日から3月31日の車両について、全国すべてを対象に車検有効期間を一律4月30日まで延長する。
最長で約2か月の延長となり、車検時に納める自賠責保険についても同様の扱いとなる(無料になるというわけではないので注意)。
延長の理由は、窓口での混雑を避けるため。毎年3月末は抹消登録や移転登録など、もろもろの手続きで運輸支局の窓口が非常に混雑する時期である。人々が集まることで感染しやすい状況となるのを避けるための処置とのことだ。
さらに、3月25~26日には全国の都道府県から「感染症によって影響を受け、納税が困難な人」を対象に、自動車税に関する猶予制度が発表された。
こちらは自動車税だけではなく、軽自動車税も対象となるもの。新型コロナウイルス感染症に納税者(家族を含む)がり患したり、感染予防のために事業を休止したりした場合など、徴収の猶予を与える(徴収の猶予:地方税法第15条)。
いずれの場合も二輪車は対象外とのことだ。
自工会豊田会長の会見「金融システムは健全」
クルマに関わる様々な影響や状況が刻々と変わっていく今の状況だが、先週3月19日には日本自動車工業会(以下自工会)の定例会長記者会見が行われた。今回は感染防止の観点から原則ウェブ会見とした異例の会見となった。
なお、自工会とは自動車を生産するメーカー14社で構成される組織のことで、会長はトヨタ自動車株式会社社長 豊田章男氏がつとめる。
コロナ対応が主体の会見となったが、業界としての取り組みについて話した。
「完成車メーカー、部品メーカー、政府の3者が連携し業界における迅速な情報共有や必要な対応策を検討する場として2月20日に新型コロナウイルス対策検討自動車協議会を設置して対応に当たっている。サプライチェーン(供給網)への影響などの課題について意見交換を行い、現場の声も吸い上げている。政府は良く対応してくれている。わたし達民間企業はやるべきことをやって、お互い連携をとって命を守っていく」
リーマンショックと異なる点も
「2008年のリーマンショック時は急拡大する中国市場がけん引役となり、グローバルではバランスが取れていた。今回のコロナにはそれが期待できない。ただし、リーマンショックの時に比べると、金融システムは健全だと思う」
「自動車業界は持続的に非常に大きな雇用を抱えている。2000年の雇用を100とすると、2008年のリーマンショックをこえても100を維持していて現在104にまで来ている。自動車や部品が稼ぐ外貨(貿易黒字)は年間約15兆円。日本が資源を輸入する額に相当する。それほど大きな業界だ」
その大きな業界の雇用が安定しているのだから、コロナ禍による影響は一時的なもので心配は不要、ということだろう。
最後に豊田会長は、「幸い、クルマは公共交通機関よりも他人と接する確率が非常に低く、感染のリスクも少ない。都市部も過疎地もモビリティの役割を今こそ考えるとき。大変な時こそ、将来の準備機会が到来したのだと考えるべき。出来なかった既存業務を見直す機会にしたい」とくくった。
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