25年ぶりのアルファ・ロメオ製の後輪駆動
text:Simon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
早いもので、復調傾向のアルファ・ロメオが4ドアサルーン、ジュリア・クアドリフォリオを世に放ってから4年が経過した。ワクワクした読者も多いことだろう。25年ぶりの、アルファ・ロメオ製の後輪駆動モデルだったのだから。
極上の、正真正銘のドライバーズカーだった。近年のアルファ・ロメオでも、最高と呼べるクルマに仕上がっていた。
高い評価を集めたものの、バラ色の4年間とはいえなかったようだ。欧州でも北米でも、販売は伸び悩んでいる。
新開発のジョルジオ・プラットフォームを共有するSUV、ステルビオも、期待通りの売れ行きは示していない。アルファ・ロメオは、2023年までに7種のモデルを開発する計画を立てていた。しかし、大幅削減を迫られてしまった。
カリスマ的な影響力を持っていた、前CEOのセルジオ・マルキオンネのもと、親会社であるフィアット・クライスラー・オートモービルズから数十億ポンド(数千億円)の投資も受けている。憂慮されるべき状態だ。
グループPSAとの合併で、事態は好転するかもしれない。気になるところだ。
多くの期待のかかったジュリア。アルファ・ロメオは、クアドリフォリオにモデルライフ中期のマイナーチェンジを与えた。カンフル剤となるだろうか。
目立った変更点は、タッチモニター式のインフォテイメント・システム。高度な運転支援システムも、フルセットと呼べる内容で実装された。内装の質感も、従来以上に高められている。
出色のクアドリフォリオの走り
アクラポビッチ製のエグゾーストシステムと、カーボンファイバー製のルーフも、オプションとして選択できるようになっている。あいにく今回の試乗車は、どちらも装備していない。
オプションは付いていなくても、ジュリア・クアドリフォリオは従来どおり、出色だ。鮮烈な動的性能を備えているが、高速道路でやり過ぎと感じるほどでもない。
レブカウンターの針が3000rpmほどを指していれば、ターボラグはほぼゼロ。アクセルペダルを踏み込めば、力強い加速をレブリミッターに当たるまで、一定して得られる。
冷たい感触の、美しく削り出された金属製シフトパドルを弾いて、変速せずにはいられない。シフトセレクターをマニュアルモードに入れる。
シフトパドルに振れるやいなや、エグゾーストの活発なサウンドが変化する。アルファ・ロメオ製の8速ATから、適度に力強いキックが背中に伝わる。次のレシオへ、すかさず変わる。
DNAドライブモード・セレクターを動かし、「D」のダイナミック・モードを選ぶ。フェラーリ由来といわれるV6エンジンからも、素晴らしいサウンドが響く。厚みのあるメカニカルノイズは、秀でたパフォーマンスを誇示するかのようだ。
エンジンの回転数が増すほどに、唸り声が大きくなる。だが、オペラのクライマックスのような響きではない。ドラマティックな変化でもない。オプションのアクラポビッチ製エグゾーストに、追加投資する価値はありそうだ。
ジュリア最大の資産は傑出のシャシー
Dモードでは、アクセルペダルの反応も明確に鋭くなる。前方の道が空いていて、ハイペースでジュリアを走らせているなら、素晴らしい体験だろう。市街地では、少々過敏でアグレッシブ過ぎる。
そんな時はノーマル・モードを選べば良い。尖ったレスポンスは、文化性を感じるほど丸くなる。トランスミッションのマナーも好印象だ。
マイナーチェンジ後でも、ジュリア最大の資産は傑出のシャシー。サスペンションのダンパーは若干柔らかさを増し、500ps以上のスポーツサルーンとして、乗り心地と姿勢制御とのバランスは絶妙。ダイナミック・モードで引き締めることもできる。
轍や隆起部分で強い衝撃は伝わってくる。しかし、我慢を強いられるほどではない。
操縦性も素晴らしいの一言。常識的な速度域であっても、手のひらに伝わる感覚は、クルマが生きているかのよう。指定された試乗コースでは、ジュリア・クアドリフォリオの限界性能を確かめるには不十分ではあった。
ステアリングのレシオはかなりクイックで、ロックトゥロックは2回転を少し超えるだけ。過度に敏感だったり、落ち着きがなかったりすることはない。充分な勢いと正確性で、フロントタイヤの向きを変えてくれる。グリップ力も不足はない。
インテリアに受けた変更は各所で小さいものの、全体で見れば従来以上の説得力を得ている。最も大きな違いは、センターコンソール。
インフォテイメント用モニターはタッチ式になったものの、反応が良いとはいえない。ドイツ製のライバルと比べると、グラフィック面での洗練度も及ばない。
伸び悩む販売が不思議なほどの仕上がり
以前まで、シフトレバーやロータリースイッチ周りは、マット加工のプラスティック製パネルで覆われていた。これが見直され、トランスミッション・トンネル全体を覆うカーボン製カバーに置き換わった。クルマの性格上、欲しかった要素だといえる。
改良を受けたとはいえ、プレミアムな雰囲気ではメルセデスAMG C63には及ばない。一部のドライバーにとっては、C63が積むV8エンジンのノイズと比べると、V6エンジンの音響は物足りないかもしれない。
しかし、ドライバーズカーとして見れば、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオは秀抜。しかも英国での価格は6万7195ポンド(907万円)で、AMG C63と比べれば、1万ポンド(135万円)近く安い。
アルファ・ロメオは信頼性が低い、といわれたのは一昔前の話し。ジュリア・クアドリフォリオの素晴らしい完成度を考えると、販売が伸び悩む理由が不思議でならないのだった。
アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ(英国仕様)のスペック
価格:6万7195ポンド(907万円)
全長:4635mm
全幅:1865mm
全高:1435mm
最高速度:307km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:236g/km
乾燥重量:1580kg
パワートレイン:V型6気筒2891ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:510ps/6500rpm
最大トルク:61.1kg-m/2500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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みんなのコメント
ナビもスマホナビがモニターに映されるだけというお粗末。
で、高い。売れる気がしない。
出来や信頼性が日独車に及ばないのは分かった上でも、理屈じゃなくて、クルマから色気やオーラが全く感じられ人ですよね。
何にも感じさせないアルファロメオって、やっぱ意味ないわけで。