「量より質」の高級ブランドへ
text:James Attwood(ジェームズ・アトウッド)
【画像】ジャガー・ランドローバー、どんなモデルがある?【JLRの人気モデル6選】 全135枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
ジャガー・ランドローバー(JLR)は新事業戦略「Reimagine」を発表した。その一環としてジャガーは、2025年以降は電動モデルのみのブランドになることを目指している。
インドのタタ・モーターズ・グループが所有するJLRは、電動化への大規模なシフトとともに、2039年までに脱炭素を目標に掲げている。新CEOのティエリー・ボロレによると、現在のところ既存の生産施設を閉鎖する予定はないという。
ジャガーは2025年以降、高級EV専用ブランドとなる。ランドローバーは今後5年以内に6台のEVを発売する予定で、その1台目は2024年に登場する。
ボロレCEOは、Reimagine戦略は「量より質」を追求するためのものであり、JLRは「目の肥えたお客様にとって最も望ましいメーカー」になることを目指していると述べた。
ジャガーはEVのみのブランドになり、ランドローバーはオフロードの精神を維持しながらも、アップマーケットへの進出を続ける。「ジャガーとランドローバーは、豊かな歴史に根ざした明確な個性を持ち、お客様に2つの選択肢を提供することになります」とボロレ。
プラットフォームは共有せず、差別化に
JLRは電動化への移行を促進するため、ランドローバー向けに2種類、ジャガー向けに1種類の計3種類のプラットフォームを使用する予定だ。
ジャガーは新しいBEV専用プラットフォーム一択で、ランドローバーは内燃機関とEVに対応した「MLA」と、EV優先の「EMA(エレクトリック・モジュラー・アーキテクチャー)」の2種類を採用する。
3種類のプラットフォームに移行し、各工場で生産されるプラットフォームとモデルの数を統合することで、「高級車部門の規模と品質における新たなベンチマークを確立する」ことが可能になるとしている。
これは、英国をはじめとする世界各地の工場を維持するための鍵になるという。
JLRは今後10年で、ジャガーの販売の100%とランドローバーの販売の60%を完全電動化することを目標としている。ボロレは、将来のラインナップは人気の高いモデルに焦点を当てているため、モデル数が減ることを示唆した。
ボロレはまた、2026年までにディーゼル・パワートレインを段階的に廃止することを約束しており、水素燃料電池技術への多額の投資を行っているとも述べた。今年末には同社初のFCEV技術を搭載したテスト車両が公道を走る予定だ。
ラインナップは「劇的」に変化
ジャガー
ジャガーは、セダンとディーゼル・パワートレインへの依存度が高く、ここ数年で売上が激減。新CEOのボロレにとって差し迫った課題となっている。
ボロレは、「市場で新たに高級車ブランドとしての地位を獲得し、お客様だけでなくビジネス全体のために独自の可能性を実現する」ため、ジャガーは劇的な変革を遂げると述べている。
ハイエンドの高級車市場に焦点を当てたEV専用ブランドになることを目指すもので、これはJLRが以前から検討していた計画である。これにより、電動化へコミットしているベントレーとの競合も視野に入っているはずだ。
将来的にはハイエンドの顧客向けにデザインされたモデルが登場することになり、ジャガーの位置づけが大きく変わる可能性が高い。電動化によって業界が大きく変化する中、新しいEV専用プラットフォームを採用することで、既存モデルとは異なるデザイン哲学が導入されるだろう。
現在、ジャガー唯一のEVはSUVのIペイスだが、フラッグシップセダンのXJの次期モデルもEVとして開発が進められてきた。そのティザー画像も公開されたものの、ボロレは次期XJの開発が中止されたことを明らかにした。
ボロレは、将来の新型車には「XJ」の名前を残す可能性があると示唆している。とはいえ、計画されていた次期XJを廃止するという決定は、ジャガーを劇的にリポジショニングしたいという願望の現れだろう。よりハイエンドな新規顧客の獲得に向けて、一からラインナップを作り直すという姿勢が見て取れる。
また、ジャガーはSUVから離れる可能性が高いとも示唆している。ランドローバーとSUVシェアを奪い合うことがないようにすることも、ジャガーブランド転換の理由の1つとされている。
ランドローバーとは別のプラットフォームで作られることも、両ブランドの大きな差別化要因となるだろう。
ボロレはまた、電動スポーツカーについて「重要な問いであり、慎重に検討している」と述べ、登場の可能性を否定しなかった。
ランドローバー
ランドローバーはさまざまなパワートレインを提供し続けるが、電動化に重点を置いていることに違いはない。既存のレンジローバー、ディスカバリー、ディフェンダーのファミリーの一部として、今後5年間で6台の完全EVが登場する。
ブランド初のEVは2024年に登場する予定だが、今のところ、その詳細は明らかになっていない。
2030年までにランドローバーの全モデルにEVを導入することで、英国における内燃機関モデルの販売禁止に向け足場を固める。しかし、当面の間は、EVのインフラが未発達な市場でも人気を維持できるよう、内燃機関モデルを展開し続ける。
工場は閉鎖せず、事業の合理化進める
JLRは、「中核となる生産施設」を閉鎖する計画はなく、「ホームである英国市場と世界各地の工場」を保持するとしている。また、現行モデルの生産を中止する予定もないという。
英ソリフル工場では、MLAプラットフォームのランドローバーとBEVプラットフォームのジャガーを、ヘイルウッド工場ではEMAプラットフォームの車両を生産する。
歴史あるキャッスル・ブロムウィッチ工場の将来については、ボロレは次のように述べている。
「まず、そこで生産されている既存モデルは、ライフサイクルが終わるまで生産を継続します。その後、ミッドランズに分散していた事業を統合することで、利益を得ることができる工場の改装の機会を探ります」
事業再編
ボロレは、JLRの最近の財務結果が「強固な基盤」を持っていることを示しているとし、Reimagine戦略は事業の「適正規模、再目的化、再編成」を助けるだろうと述べた。
経営構造をフラットにするため、英国内の「非製造インフラ」の削減と合理化が行われる。その一環として、JLRの経営拠点はゲイドンに集約される。
サブスクリプションサービス「Pivotal」への継続的な投資を含め、電動技術とコネクテッドサービスへの投資に年間25億ポンド(3632億円)を投じる。
また、親会社のタタ・グループと密接に協力して新技術を開発していく。ボロレは、この協力を「またとない機会」と強調し、次のように語った。
「他の企業は、外部との提携に頼らなければなりませんが、わたし達は摩擦のないアクセスが可能なため、スピード感を持って前進することができます」
JLRの目標は、2025年までにキャッシュフローをプラスにすることであり、最終的に「世界で最も収益性の高い高級車メーカーの1つ」になることである。
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