2019年シーズン、ここまで8連勝中のメルセデス。チームとして開幕からの連勝の最長記録は、1988年のマクラーレン・ホンダの11連勝だ。その記録に、あと3つに迫ったメルセデスだが、初日のフリー走行を終えた順位は、バルテリ・ボッタスが2番手でルイス・ハミルトンは4番手に終わった。だが、初日のフリー走行でメルセデスが常にトップタイムをマークしていたわけではないのは、この8戦の金曜日の時点での順位を見ればわかる。
■金曜フリー走行順位
開幕戦オーストラリアGP → ハミルトン1番手、ボッタス2番手
第2戦バーレーンGP → ハミルトン3番手、ボッタス4番手
第3戦中国GP → ボッタス1番手、ハミルトン4番手
第4戦アゼルバイジャンGP → ハミルトン3番手、ボッタス5番手
第5戦スペインGP → ボッタス1番手、ハミルトン2番手
第6戦モナコGP → ハミルトン1番手、ボッタス2番手
第7戦カナダGP → ボッタス3番手、ハミルトン6番手
第8戦フランスGP → ボッタス1番手、ハミルトン2番手
ボッタス、23Gの大クラッシュ「小さなミスが高くついた。でもそういうサーキットは大好き」メルセデス F1オーストリアGP金曜
しかも、F1第9戦オーストリアGP初日のメルセデスのタイムは、マックス・フェルスタッペンが「今日のメルセデスはパフォーマンスラップをしないから、自分たちの相対的なパフォーマンスを語ることは難しい」と言うように、予選シミュレーションで出したものではない。
じつはハミルトンのベストタイム1分5秒529は、予選用のソフト(C4)タイヤを履いてのアタックではなく、11周連続走行の10周目に出したタイム。しかも、そのとき装着していたタイヤはハード(C2)タイヤ。それでソフトタイヤを履いたガスリーのコンマ1秒落ちだった。
2番手のボッタスのタイムも、ソフトタイヤに履き替える前のミディアム(C3)タイヤで記録されたもの。したがって、2台とも一発のペースではまだ伸びしろは十分ある。
なぜ、メルセデスは予選シミュレーションを行わなかったのか。それは昨年、2台そろってリタイアに終わっただけでなく、ハミルトンはタイヤにブリスターができたこともあり、メルセデスは予選よりもレースへ向けたタイヤのデータ取りを優先したのだろう。しかし、ハミルトンが43周を走り込めたのに対して、チームメイトのボッタスはソフトタイヤに履き替えた直後にクラッシュを喫して、わずか12周に終わった。
じつはこの日のメルセデスは、2台でタイヤデータ取りのプログラムを分けていた。ハミルトンがハードタイヤでボッタスはミディアムでロングランに関する予定だったが、ボッタスがクラッシュしてしまったため、メルセデスにはミディアムタイヤのロングランのデータがない。
ミディアムタイヤのロングランデータを取っていないチームはメルセデス以外にもないわけではないが、フェルスタッペンがクラッシュしたレッドブル以外は、フェラーリ、マクラーレン、ハース、アルファロメオ、トロロッソ、ウイリアムズの6チームはしっかりと2台でメニューを分けて、ハードだけでなく、ミディアムのデータ取りを行なっていただけに、ボッタスのクラッシュはメルセデスにとって大きな代償を払う結果になるかもしれない。
もうひとつ気がかりなのは、パワーユニット(PU/エンジン)に関するトラブルが連続していることだ。メルセデスが、“フェーズ2”と呼ばれる新型のパワーユニットを投入したのは第7戦カナダGPだった。このとき、メルセデスはハミルトンのパワーユニットにオイル漏れのトラブルを予選後に引き起こし、日曜日はスタート直前まで、その修復作業に追われるという苦い経験をしていた。
このオーストリアGPでは金曜日のフリー走行1回目が始まる前にボッタスのパワーユニットにオイル漏れが発見され、チームは慌ててPU交換を実施。ボッタスは旧スペックでフリー走行1回目を走行した後、再びPUを交換し、フリー走行2回目はオイル漏れを起こしていたフェーズ2に戻していた。しかし、ボッタスがクラッシュしたことで、タイヤのデータが取れなかっただけでなく、メルセデスはオイル漏れを起こしたフェーズ2のロングランでの確認もできずに終了することとなった。
9連勝へ向けて、メルセデスの視界は必ずしもレッドブルリンクの空のように良好ではない。
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