F1にパワーユニット規則が導入された2014年から、シーズンを支配してきたメルセデス。特に2016年までの3年間は、メルセデスが他チームをパフォーマンスで圧倒する中、ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンが熾烈なチーム内争いを展開し、勝利とチャンピオンを奪い合った。
トラック上での同士討ちは3度(2014年のベルギーGP、2016年のスペインGP、オーストリアGP)あったが、水面下でも絶え間なくバトルが起こり、チームはふたりのマネジメントに手を焼くこととなった。
■勝つはずだったレースを失ったハミルトン……メルセデスを惑わせた判断ミス:2015年モナコGP
ハミルトンとロズベルグのチーム内争いは、2014年のシーズン序盤からすでに始まっていた。第3戦バーレーンGPで、ふたりはチームの指示とは異なるエンジンモードを使用し、お互いを出し抜こうとしていた。第5戦スペインGPでもハミルトンは同じトリックを使い、ロズベルグを抑えて優勝を飾った。この時から、ふたりの関係には火種が燻っていたようだ。
しかし、その2週間後に行なわれたモナコGPの予選での出来事で、ふたりの関係悪化は周知の事実となる。
■2014年モナコGP:ロズベルグ”駐車”事件
ロズベルグは2013年のモナコGPで勝利しており、モナコでの連勝を達成してアイルトン・セナやアラン・プロスト、グラハム・ヒル、ミハエル・シューマッハー、ニキ・ラウダといった英雄たちに名を連ねることを目指していた。また、すでにシーズン4勝を挙げたハミルトンとの差も縮めなければならなかった。
3度のフリー走行、予選のQ2までハミルトンとロズベルグはほぼ互角。Q1ではロズベルグがハミルトンを上回ったが、Q2ではハミルトンがロズベルグを逆転した。
Q3最初のアタックでは、ロズベルグが1分15秒989をマークし、ハミルトンを0.05秒上回って暫定ポールポジションの座を手にしていたものの、路面コンディションの改善により、ハミルトンが最終アタックで逆転する可能性が十分にあった。
実際、ロズベルグは最終アタックの第1セクターで0.1秒のロスを喫したが、ハミルトンは逆に0.2秒のタイム改善を果たし、逆転ポール獲得の可能性が濃厚となった。
すると前を走っていたロズベルグは、ミラボーへのブレーキングで挙動を乱してしまう。忙しなくステアリング修正を行なったロズベルグは、タイヤをロックさせてしまうと最終的にアタックを断念し、マシンをエスケープゾーンへと退避させた。
ロズベルグのアタックは無駄になったものの、これにより黄旗が出され、ハミルトンを含む後続のマシンは減速を強いられた。
ハミルトンのレースエンジニアを務めるピーター・ボニントンは、『イエローイエロー、ターン5でイエローだ』とハミルトンに伝えた。ハミルトンは「彼にとってはとても良いだろうね。ベリーグッドだ」と、不満げに返答した。
ロズベルグは「曲がろうとしたけど、ウォールにぶつかりそうだった」と、ミスについて語った。
「壁と近かったけど、なんとかエスケープロードに入れた。(1回目のアタックで)良いタイムが出せていたのは分かっていたけど、僕はもう少しプッシュしようとして、限界を超えてしまった」
「終わったと思ったよ。もちろん、ルイスに対しては申し訳なく思う。僕がマシンをバックさせて、彼が近づいてくるまで彼がどこにいるか正確には知らなかったんだ。言うまでもなくそれは素晴らしいことではなかったけど、それが現状だ」
ハミルトンは、ロズベルグの動きが意図的だったと思うかという質問には答えず、「それが起きる可能性があるのは知っていたはずだ」とコメントした。
「セナとプロストが話し合いをしたかどうかは分からないけど、僕はセナの振る舞いが好きだったから、彼の本の1ページを参考にする」
当時ウイリアムズのドライバーだったフェリペ・マッサは、ロズベルグのステアリングの動きは”奇妙だった”とコメント。スチュワードもこの件を調査対象とし、映像の検証に時間をかけた。
元F1ドライバーのジョニー・ハーバートは、事件後にスカイスポーツに次のように語った。
「ロズベルグがステアリングホイールを動かし始めてから、マシンが落ち着かなくなった。これは通常やらないことだ」
「それからタイヤがロックした。それは非常に中途半端に見えた。分からないが、とても奇妙に見えた」
1996年のF1王者に輝いたデイモン・ヒルは「それが意図的なものだったのだとしたら、とてもうまくやった」と付け加えた。
スチュワードは映像とテレメトリデータを確認し、3時間にもおよぶ調査を行なった結果、「ターン5でのインシデントに関連し、違反の証拠を見つけることができなかった」と述べ、ペナルティは出されなかった。
メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、ロズベルグを擁護しつつも、ハミルトンの疑念にも理解を示した。
「チャンピオンシップに勝ちたいと思うなら、疑問に思わなくてはいけないだろう」
「ドライバーの間で、感情的になるような出来事はこれが最後ではない。チャンピオンを狙うなら間違いなくそうだ」
「その件はすでに議論されている。ふたりは非常に激しい、タイトな争いをしていた。データを分析したが、他に言うことはない」
決勝では、ポールポジションからスタートしたロズベルグがトップをキープ。セーフティカー中にメルセデスが2台を同一周回でピットに入れたことで、ハミルトンの逆転への望みは打ち砕かれた。さらに目にゴミが入り、ペースダウンしたハミルトンは、2位を死守するので精一杯だった。
しかし重要なのは、ハミルトンとロズベルグの関係に大きなヒビが入ったということだ。レース後のセレモニーで、ふたりは握手はおろか、言葉を交わすことすらしなかったのだ。
ロズベルグとの問題を解決できるかと訊かれたハミルトンは「僕はその答えが分からないよ」と話した一方、ロズベルグは「話し合いをして前に進むことだ。それが僕たちのやることだ」と語り、問題解決に向けてより前向きな姿勢を示した。
メルセデス非常勤会長のニキ・ラウダは、この件についてハミルトンに苦言を呈した。
「私が気に入らなかったこと、言わなければいけないことは月曜日に(ハミルトンに)伝えた。それはそこ(表彰台)にいる時、チームメイトに挨拶をしないことだ。良いことじゃない。ニコは常にそうしているんだ」
「それは良識があるかどうかではなく、メルセデスというブランドのためだ。今、私はそれを心配し始めているが、簡単に修正はできる」
モナコGPから5日後、ハミルトンはソーシャルメディアに、ロズベルグとカートでチームメイトだった時代に一輪車に乗っている写真を投稿し、和解したかに見えた。
「僕たちは長い間友人だ。そして、その関係にも浮き沈みがある」と、ハミルトンは投稿した。
「今日僕たちは話し合った。僕たちは冷静だし、まだ友達だ」
しかしその後のふたりの関係を考えれば、ラウダもハミルトンも正しくはなかったようだ。ハミルトンとロズベルグの関係修復は簡単ではなく、友達のままではいられなかった。
その代わりF1の”近代史”において、最も刺激的なチームメイトバトルを生み出すことになった。
ロズベルグの予選アタックが正真正銘のミスだったのか、巧妙な策略だったのかは分からないが、ハミルトンとの関係に修復できない亀裂を刻んだのは間違いない。その真実を知っているのは、ロズベルグだけだろう。
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