11月2日にバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたWEC世界耐久選手権の2024シーズン最終戦『バーレーン8時間レース』で、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は多くの困難に見舞われた波乱のレースを乗り越え、今季3勝目を挙げた。これによりTGRは6シーズン連続となる、WECのマニュファクチャラーズ・タイトルを手にしている。
ポールポジションスタートだったセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮の8号車GR010ハイブリッドは、序盤にGT車両に追突されたことでスピンを喫してポジションを下げるも、最後はブエミが圧倒的なドライビングを見せ、終盤の逆転で勝利をもぎとった。
当初2位の51号車フェラーリが4分55秒のタイムペナルティで降格。プジョーが今季初表彰台獲得/WEC第8戦
一方、ドライバーズ・タイトル争いでわずかに逆転王者の可能性を残していていた7号車(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ニック・デ・フリース)は2番手スタートからレース中盤には首位に浮上する場面もあったものの、燃料ポンプのトラブルに見舞われてリタイアを余儀なくされている。
■燃料ポンプトラブルでリタイア。「複雑な気持ち」とデ・フリース
8号車のスタートを担当したブエミは、スタートから18分後、ターン1でLMGT3車両に後方から追突されてスピンを喫し、7番手へと大きくポジションダウン。5番手まで挽回してハートレーへとステアリングを託すが、その後はハートレー、さらに代わった平川ともタイヤ摩耗に苦しみながらトップ6をキープしていった。November 2, 2024
レースは折り返しを過ぎたところで2度のセーフティカー導入により、各車のギャップがリセット。残り1時間半ほどでリスタートが切られたとき、ブエミは10番手へと順位を落としていたが、この時点で首位との差はわずか15秒だった。そこからブエミは信じられないような追い上げを開始、次々にライバルを追い抜き、ピット戦略にも助けられ、最後のルーティン作業を終えた時点で、2番手まで浮上していた。
首位を逃げる5号車ポルシェ963との差をみるみる縮めていったブエミは、残り30分を切ったところで首位を奪取。その後もハイペースで周回を続け後続を引き離し、最後は2位に29.177秒差をつけてトップチェッカー。8号車にとって今季2度目、バーレーン戦10度目となる優勝を達成した。
コンウェイがスタートを担当した7号車は、可夢偉に代わった後に燃料ポンプのトラブルに見舞われ、スローダウン。一度はペースが復活し、デ・フリースへと交代した際には首位へと浮上したが、再び不調に見舞われてペースが落ちると、残り2時間を切ったところでガレージに入れられた。
修復には時間を要すことが予想されたこと、またクルーの8号車へのサポートを優先させるため、TGRはここで7号車をリタイアさせることに決めた。
TGRから8時間の決勝レースに挑んだ6名のドライバーのコメントは、以下のとおりだ。
■小林可夢偉(チーム代表 兼 7号車ドライバー)
「はじめに、今季の我々の挑戦を世界中からサポートしてくださったすべての皆様に感謝いたします。マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得できたことは素晴らしい成果であり、トヨタの仲間やパートナーの皆様を含めた全員の多大なる努力の賜物です」
「今日の結果はチームの全員が望んでいたもので、その達成のために誰もが全力を尽くしてくれました。その努力にも感謝しています」
「8号車の勝利は、今日の素晴らしい戦いぶりにふさわしいものでした。我々の7号車はトラブルに見舞われリタイアとなってしまいました。この原因を究明し、来シーズンはもっと強くなって戻ってきます」
■マイク・コンウェイ(7号車)
「我々7号車にとっては、厳しい結果となってしまった。今日の我々は非常に強く、勝てる可能性も見えていたが、トラブルに見舞われ、残念ながらリタイアせざるを得なかった」
「しかし8号車が勝ってくれたことで、我々の目標であったマニュファクチャラーズチャンピオンは獲得することができた。チームとトヨタにとって、とても嬉しい結果だし、最後まで力強い走りで見事勝利を勝ち取った8号車には祝福を贈りたい。この記念すべき瞬間をみんなで祝いたいと思う」
■ニック・デ・フリース(7号車)
「8号車の見事な勝利でマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得でき、チームにとっては最高のシーズンフィナーレとなった」
「もちろん、ドライバーズチャンピオンを争っていたライバルがノーポイントに終わったことと、我々が勝てる位置につけていたことを考えると、複雑な気持ちだ。トラブルがなければ両選手権タイトルを獲得できるチャンスがあったが、これもモータースポーツではよくあることなので受け入れるしかない」
「とは言え、全体的に見れば波瀾万丈で厳しいシーズンを乗り越えてきたチームが今日報われ、嬉しく思う」
■セバスチャン・ブエミ(8号車)
「レース途中までの展開が展開だっただけに、優勝できたなんて信じられない。チームがトラブルやペナルティ、不運などあらゆる逆境を乗り越えてチャンピオンを獲得でき、最高の気分だ。それこそが我々の目標であり、チームの素晴らしい努力のおかげで成し遂げることができた」
「一時10位まで後退し、ピットストップでほぼ最後尾に落ちたときにはもうだめかと思った。しかし、ふたりのチームメイトがタイヤを温存して走り続けてくれたおかげで、最後はタイヤにアドバンテージを持って追い上げることができた」
「今日の大一番のレースで、みんなとともに良い仕事を成し遂げることができ、本当にチームを誇りに思う」
■ブレンドン・ハートレー(8号車)
「チームのみんな、そしてトヨタのためにも勝つことができて本当に嬉しい。レース序盤は決して順調ではなく、ミディアムタイヤの選択もうまくいかなかった」
「しかし最後にはセブが信じられないようなスティントを見せてくれた。本当に驚くべき走りで、彼こそスターだ」
「トヨタやすべてのパートナーの皆様、チームのすべてのスタッフに感謝したい。この勝利とチャンピオン獲得を目指して戦ってきたので、大きな意味を持つ結果だ。シーズン最終戦を勝利で終えて、冬季オフシーズンに入れるのは最高だ」
■平川亮(8号車)
「何という一日でしょう。波瀾万丈のレースでしたが、我々は最後まで諦めることなく、チーム一丸となって戦い続けました」
「ポールポジションからスタートした我々は、GT車両に追突されるアクシデントなどにも見舞われましたが、全力を尽くして戦い続け、最後はセブが最高の走りで逆境をはねのけてくれました」
「我々8号車は今シーズン、困難なレースも多かったので、ようやく最後に幸運を引き寄せることができて嬉しいです。シーズンを勝利で締めくくることができたことは素晴らしいですし、チームはもちろん、トヨタとパートナーの皆様にも本当に感謝しています。皆様の多大なる努力のおかげで勝ち取ったチャンピオンだと思います」
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