美しく年を重ねたクルマたち
デビュー当時に物議を醸したデザインも、年を重ねるごとに美しく見えてくることがある。第一印象は大切だが、それがすべてではない。
【画像】実物はもっと良い! 先進的な「未来」デザイン【初代トヨタ・ミライをじっくり見る】 全28枚
自動車メーカーが無難な “安全策” を取りたがるのも無理はないが、それでも時折、わたし達に衝撃を与えるようなクルマを作ってくれる。思わず目を疑うようなプロポーションや不思議なキャラクターラインが採用されることもあるし、まったく新しいカテゴリーのクルマが登場することもある。
今回は、発売時こそ世間を騒がせたが、時が経つにつれて「良くなってきた」と思われる20車種を見てみよう。
ルノー・アヴァンタイム
1999年に発表されたルノー・アヴァンタイムは、高級感、快適性、スポーティ性を先進的なビジュアルと組み合わせ、「クーペ・スペース」と表現された。2ドア・クーペのスタイルを持つが中身はミニバンという、まったく新しいカテゴリーであった。
デザイナー界隈はアヴァンタイムの革新性・先進性を賞賛したものの、一般大衆はこのような「車輪付きの芸術作品」を購入するほどには心を動かされなかった。2001年から2004年の販売台数はわずか8000台ほどだった。
BMW Z3 Mクーペ
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、オープンモデルのBMW Z3は至るところで見かけたが、クーペモデルははるかに少なかった。多くの自動車ファンはシューティングブレーク的デザインを嫌い、「ピエロの靴」というあだ名もつけられた。特にリアフェンダーの形状は、当時の人々が慣れ親しんでいたものよりも大きく突出しており、まるでスポーツカーの風刺画のように大げさに感じられたのだ。
しかし今日、わたし達はこうしたプロポーションに違和感を抱かなくなった。発売から20年半を経たZ3 Mクーペは、むしろ大型フェンダーを上手く着こなしているように見える。希少性の高さもこのクルマの魅力の一部となっている。
ポルシェ・カイエン(初代)
長くスポーツカーを作り続けてきた企業が、これまでとまったく違うものを作り始めたら、ちょっとした騒ぎになるのも不思議はない。そのため初代カイエンは、たとえどのような姿になっていたとしても「ポルシェ初のSUV」ということで物議を醸していただろう。しかし、初登場から20年以上経った今でも、その存在感は大きいままだ。
筋肉質なボディはよく熟成しており、近年の大型SUVと比べると控えめに見える。リアの主張は強く、またマイナーチェンジ以降はフロントエンドのデザインも大きく改善されている。
アルファ・ロメオ166
アルファ・ロメオの最上級セダンである166は、角張ったショルダーラインと比較的スリムなサイドウィンドウが特徴で、驚くほどスポーティなプロポーションを実現している。今では高級車として当たり前のこれらの特徴も、1996年の発売当初はそうではなかった。
2003年の改良で顔つきが変わったが、それでも一般大衆には受け入れられなかった。しかし、横から見た美しさと、ダーツのように鋭い運動性能には驚嘆させられる。
BMW i3
BMWはスポーティなクルマを作ることで有名だが、まったく異なる方向性で作られたのがi3だ。BMW初の量産型EVだが、覇気をまったく感じさせず、風変わりな印象を与えた。
ツートンカラーを採用したことで、フロントガラスがボンネットの中に伸びているように見える。サイドウィンドウは「ジグザグ」に配置され、後部座席に開放感を持たせている。まさに賭けと言えるデザインであったが、非常に先進的であるがゆえに、発売されたのが昨日のことのように新鮮だ。
日産デュアリス
日産は2000年代にSUV需要が高まると見て、コンパクトSUVのデュアリスを投入する。当時、SUVといえばオフロード性能が高いものがほとんどだったが、2006年発売のデュアリスは都市部での使用をメインに開発された。
日産の予想は見事に的中し、世間のムードにぴったりはまったデュアリスは新世代のクロスオーバー車の普及に拍車をかけた。日本国内では1代限りとなってしまったが、欧州ではキャシュカイという名で3世代にわたって販売されている。最新型はややアグレッシブなデザインだが、初代は温厚で落ち着いた雰囲気がある。
日産ジューク(初代)
超膨張したフェンダー、ボンネットとリアハッチから突き出た立体的なライトなど、2010年に登場した初代ジュークは保守的なスタイリングの常識を打ち破った。もし数年早く発売されていたら大失敗していた可能性が高いが、日産はこのデザインが世間に受け入れられるとわかっていたのだ。
後継の第2世代はよりスポーティでプレミアムな雰囲気になったが、初代ジュークはいまだにコンセプトカーのように見える。もしかしたら、いつまでもそう見えるのかもしれない。
ポルシェ911(996型)
1990年代、ポルシェは経営難に陥っており、生き残りをかけた先進的なモデルが必要不可欠だった。当時の流行は滑らかなデザインであり、そこで1997年の911(996型)では、それまでの911の特徴であった楕円形ヘッドライトから、フロントバンパーと滑らかに一体化した新しい形状のヘッドライトに変更した。
911ファンはこのヘッドライトを嫌い、すぐに手が加えられた。改良後のライトは996型の評判を救った。今でも力強い存在感と優雅さを兼ね備えている。
フォード・フォーカス(初代)
ファミリーカーとして人気を集めていたエスコートの廃止は、衝撃的なニュースだった。その後継となったフォーカスは、新しい「ニューエッジ」デザインを採用して20世紀末に登場した。複数のボディタイプが用意され、ハッチバック仕様はボディに彫刻されたフェンダーが画期的だった。
リアは最も先進的で、ピラーと一体化したライトが特徴だ。最近では個性的なデザインのクルマも見慣れているが、初代フォーカスは思わず二度見してしまうだろう。
メルセデス・ベンツAクラス(初代)
初代Aクラスは、試験走行中(メディアによるエルク・テスト)に前方の障害物を避けるためにハンドルを切った際に転倒し、悪い意味で一躍有名となった。メルセデス・ベンツは当初、これは大きな問題ではないと否定していたが、後にリコールを発表し、販売を一時停止した。
初代Aクラスは1台売れるたびに赤字を出していたと言われるが、今となっては愛さずにはいられない。軽快な横顔、個性的なサイドウィンドウ、そして親しみやすい表情は、混雑した街を今でも明るく照らしてくれる。第2世代以降はプレミアム感を高めたが、初代は遊び心にあふれた独特な魅力を持っている。
BMW 5シリーズ(E60型)
2000年代初頭、BMWのデザイン言語は大きな方向転換を迫られ、新型5シリーズは旧型とは似ても似つかないものとなった。多くの評論家は、E60は丸みを帯びすぎていて重く見えると評し、フロントライトが車体側面に伸びすぎていると嫌った。
しかしBMWは、すべての自動車が大型化しようとしている時流を正しく読み取った。より重厚感のある5シリーズを作ることで、時代に即した存在となったのだ。E60は今でもモダンな外観を保ち、特にリアライトは業界屈指である。
シトロエンDS5
シトロエンが独創的なクルマを作る企業であることは、今さら説明不要だろう。2011年に登場したDS5は、クーペであり、ハッチバックであり、ステーションワゴンでもあるという、特定のカテゴリーにきれいに収まらないクルマだった。しかし、低く構えたスタンスは現代に十分通用する。
DS5の特徴的なスタイリングは、目立ちたい人のためのものであった。フロントライトからサイドウインドウまで続くクロームメッキのパーツは、当時としては特に実験的なもので、発売から10年以上経った今でも新鮮である。
ミニ(MINI)
1994年にミニを完全掌握したBMWは、2001年に新世代ミニの第1弾を発表した。1950年代後半に誕生したアレクサンダー(アレック)・イシゴニス氏によるオリジナルモデルと大きく異なるその姿に、純粋なファンたちは不満を抱いた。まるで新型ミニが愛すべきオリジナルを飲み込んでしまったかのようだった。
しかし、時代は移り変わり、一般大衆の嗜好も変化していた。これまでよりも広く、安全性が高く、実用的な新型ミニは、瞬く間に大ヒットとなった。最近のミニはプレミアム志向を強めているように見えるが、2001年のモデルは今でも軽快で楽しそうだ。
スマート・フォーツー
「スマート」というブランドの発想は、1980年代にスイスの時計メーカーであるスウォッチから生まれた。カスタマイズの自由があり、小型でファッショナブルな乗用車というニッチに目をつけたのだ。スウォッチはダイムラー・ベンツと組んで新会社「マイクロ・コンパクト・カー」を設立し、1998年に初代スマート・フォーツーを発表した。
この信じられないほどコンパクトで、陽気でありながら頑丈そうな見た目のクルマは誰も見たことがなかった。オーナーは欧州の狭い都市部の道路でも、平然と駐車して皆を驚かせた。フォーツーの成功は、自動車メーカーに勇気を与えただろう。自動車デザインの傑作の1つとなっている。
トヨタ・ミライ(初代)
水素燃料電池を動力源とするクルマは、なぜか他車とは違うデザインを採用するのが常である。2014年登場のトヨタ・ミライが好例だ。全長5.0m近い大型の高級セダンだが、悲しいことに水素を補給できる場所が限られているため、信じられないほど希少だ。
この未来的なデザインは写真ではうまく伝わらないが、躍動感あるボディラインと洗練されたプロファイルには圧倒されるだろう。運良く実車を見ることができたら、じっくりと脳裏に焼き付けておきたい。
プジョー407
2004年に登場したプジョー407は、先代の406よりもはるかに流線型でアグレッシブ。フロントピラーは強いアールを描き、フロントライトは睨みつけるような光を放つ。最も物議を醸したのは、大きくワイドなフロントグリルだった。このようなグリルは伝統的にスポーツカーにしかなかったのだ。
いわば、407は人々が長年抱いてきたファミリーセダンの「あるべき姿」を打ち壊した。しかし、販売面では大成功を収め、累計100万台以上が生産された。そして登場以来、このグリルはプジョーのトレードマークとなった。静止画でも、スマートで快速に見える。
クライスラー300C
2004年登場したクライスラー300Cは、高いボディサイドやワイドフェンダーなど、大胆かつクラシックなデザインで消費者の度肝を抜いた。日本や欧州にも持ち込まれたが、一部のお高くとまった人々は300Cのクロームメッキの貪欲さと、当時としては非常に大きなフロントグリルを嘲笑した。
彼らは300Cを、既成の高級ブランドに食い込もうとする新興勢力と見ていたのだ。しかし、ソリッドなプロポーションと引き締められた体躯は多くのファンを獲得。今日でも通用するスタイリングとなっている。
ジャガーXタイプ・エステート
2001年登場のXタイプは、ジャガーにとってMk2(マーク2)以来のコンパクトセダンであり、同社のベストセラーモデルとして輝かしい実績を持つ。しかし、このクルマには暗い影がさしている。当時、ジャガーはフォードの傘下にあったため、Xタイプはフォード・モンデオと同じプラットフォームをベースに作られたのだ。
一部のジャガーファンはこの事実を受け入れることができなかった。大衆車ブランドとの関連性が、美しくバランスのとれたXタイプの汚点となってしまったのだ。エステート(ステーションワゴン)はセダンよりもさらに落ち着いて見える。
レクサスLS 400(初代)
1983年、トヨタは世界最高のクルマを作るという、今や伝説となったプロジェクトを立ち上げた。10億ドルという途方もない額の研究開発費が注ぎ込まれ、レクサスという新ブランドと、その第1号車であるLS 400が誕生した。1990年のことである。他の自動車メーカーは、レクサスがLS 400を赤字で販売し、市場を不当に混乱させたと非難したが、顧客はそんなことは気にしなかった。
その出来栄えの良さはすぐに顧客に認識され、やがてレクサスは米国市場で既存の高級車ブランドを追い抜くことになった。LS 400の堂々たるサイズ、クラシカルなプロポーション、すっきりと洗練されたボディラインは、今なお素晴らしい存在感を示している。
ランチア・テージス
BMW 5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスの対抗馬として2001年に誕生したランチア・テージスには、スポーティ性など微塵も感じられなかった。あえて表現すれば、このクルマは「達観」していた。重みのあるボディを静かにまとい、他車を押しのけるような威圧感もなく、ただ平然と佇む。
美しいレトロモダンの高級セダンであり、どんなクルマも隣に並べば脇役になってしまう。しかし、残念なことにこのデザインは顧客には受け入れられず、8年間でわずか1万6000台しか生産されなかった。
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みんなのコメント
ただ996とボクスターのヒットは、ポルシェ社の経営難を助ける事につながった。
ムルティプラを初めて見た時はド肝を抜かれた。
それまでの自動車の概念を覆すようなデザイン。
全然クルマらしくない。
SZザガートはフグみたいな顔が笑えた。
両方とも買おうとは思ったけど、お金が全然足りなかった。