米国セブリングで開催されたマツダ・グローバルMX-5カップ「世界一決定戦」で、北米マツダ・モータースポーツ・ディレクターであるジョン・ドゥーナン氏に「アメリカで支持されるマツダ・モータースポーツの真実」について聞いた。果たして、グローバルMX-5カップの魅力とは?PHOTO ◎ MAZDA GLOBAL MX-5 CUP / MotorFan.jp
「IMSA参戦は、マツダのブランド価値を確実に高めています」
直撃!! アメリカで支持されるマツダ・モータースポーツの真実とは?<Part1> マツダ株式会社 毛籠勝弘専務執行役員に聞く【インタビュー】
-----マツダ・グローバルMX-5カップのこれまでの実績について教えてください。
「MX-5カップ(ロードスター)は、ND型に切り替わる前にNC型(MX-5ミアータ)で2006年から10年間やっていました。NC型はレースのベース車両としてもバランスの良いクルマで、ストリートでもサーキットでも走りを楽しめるクルマでした。アメリカでも多くのファンに愛されたモデルで、自然とグラスルーツ (入門レース)を支えるモデルとなりました。クルマがポピュラーになって人気が出てきたところで、我々はマツダ本社と協力してレース用パーツを開発し、サスペンションやブレーキ、スタビなどフルセットを“スペック・ミアータ”として3000セットを販売しました。このスペック・ミアータの成功によってクルマを楽しむ人が増え、いまでは米国におけるグラスルーツ人口の53%がマツダ車で戦っているのです。ミアータを除くと36%となります」
-----ND型になってから、どのような動きがありますか?
「2016年にスタートしたND型では、シリーズ名を“グローバルMX-5カップ”に変更すると同時にロングロードレーシング社の製作によるコンプリートカー販売に切り換えました。初めてのことでしたので緊張しましたが、受付開始から24時間で50台を越えるオーダーがあり、これまでに累計197台を販売して成功につながりました。ひとつのファクトリーでマシンを製作することで、真のワンメイクレース、すなわちイコールコンディション化が図れることが証明できました。2018年の米国シリーズは、一戦あたり平均30台がエントリーしています。グローバルMX-5カップは日本と米国でスタートしましたが、これを欧州やオーストラリア、アジアに広げてグローバルに展開していきたいと思います」
-----マツダはアメリカでラダーシステムを展開していますが、グローバルMX-5カップの意味合いについて教えてください。
「米国でグラスルーツに参加している人口は1万3000人います。ジムカーナやロードレーシングでチャンピオンシップを獲得し、スカラシップ制度によって7万5000USドル(邦貨で約850万円)の奨学金を得てグローバルMX-5カップにステップアップする選手もいます。年間費用は、タイヤを含めると1000万円で参加できます」
-----マツダは、ROAD to 24とROAD to INDYというふたつのスカラシップを展開してきました。
「マツダROAD to INDYは11年間続いてきましたが、残念ながら今シーズンをもって終了することになりました。フォーミュラカーではなく、もう少しスポーツカーというプロダクト寄りにシフトしよう、という会社の判断です。ROAD to INDYは、11年間で250人のドライバーに1300万USドル(約15億円)の奨学金を提供してきまたした。また、今年のインディカーで活躍した選手33人中25人が、なんらかの形でROAD to INDYに関わってスカラシップを受けています」
-----スポーツカーに集中する最大の理由はなんですか?
「限られたリソースをどのように活用していくかということを検討するなかで、マーケティングに活用できる市販車に近いカテゴリーのほうが良いという判断です。マツダのモータースポーツ活動の頂点であるIMSAの車両(マツダRT24-P DPi)は市販車ベースではありませんが、前田(育男)さんによる魂動デザインを採用することでイメージの統一を図っています。これによってマツダというブランド価値を確実に高めることにつながっています。ですので、これは自然の流れだと思います」
-----マツダは、昨年から名門ヨーストと共にIMSAを戦っていますが、その成果と現状についてはどう分析していますか?
「ご存知のとおり、ヨーストは16回に渡ってル・マン24時間レースを制した名門チームで、マツダもまたル・マンで数々の歴史を刻んできました。両者がタッグを組むことで、チャンピオンシップで優勝を争う素晴らしいチームができると確信しました。さらに、シャシー開発はカナダのマルチマチック社、エンジンはマツダとAER社が共同開発することでシリーズ制覇を狙える体制が整いました。最近では、ラダーシステムから上がってきたドライバーがIMSAに挑み、IMSAシリーズ最終戦では2位、3位を獲得することができました。2019年は結果が出せると確信しています」
「グローバルMX-5カップの参加者たちは、みんなファミリーです」
-----日本人ドライバーが世界一決定戦を戦っていますが、ラダーシステムでステップできるチャンスはありますか?
「答えはイエスです。堤選手、吉田選手のふたりは、初めてセブリングを走ったにも関わらず好成績を出しました。彼らはぜひ米国でテストを受けて欲しいと思います。マルチマチック社には本格的なレーシングシミュレータがあるので、まずはそこでドライビングをアピールしてキッカケを作って欲しいと思います。いずれにしても、初めてのコースで即順応できたのは素晴らしいことです」
-----世界一決定戦には、ふたりの“14歳ルーキー”が参戦していますが、この点についてどうお考えですか?
「多くのドライバーがレースの出発点としてマツダを選んでくれていますが、14歳のタイラー・ゴンザレス選手もまたグローバルMX-5カップを選んでくれたことを嬉しく思います。彼はレーシングカートの経験が豊富で、レース前にレーシングシミュレータで練習したこともあり、デビュー戦のセブリングで素晴らしい走りを披露しています。完全なイコールコンディションのグローバルMX-5カップで戦うことで、真の実力が試せることに魅力を感じたのだと思います。また、ミッドオハイオ戦で優勝したロバート・ノーカー選手は、最年少記録としてギネスブックに認定されました。我々は、彼らにチャンスを提供できたことをとても嬉しく思います」
-----ジョンさんは、グローバルMX-5カップに参加している人のことを“ファミリー”と呼びますが、その理由を教えてください。
「グローバルMX-5カップには、とても良いコミュニティがあります。例えば、トラブルで困っている選手がいると、ほかのチームスタッフが修理を手伝ってあげるようなことが普通に行われています。良きライバルであり、良き仲間としてレースを一緒に戦っているのです。チームスタッフやドライバーは数年に渡ってグローバルMX-5カップに参加しているケースがあります。もちろんステップアップしていく人もたくさんいますが、目標に違っていてもグラスルーツのカテゴリーで戦っている人たちは、みんな仲間でありファミリーなのです」
----- グローバルMX-5カップは、レース開催時のサポートをどのように行っていますか?
「グローバルMX-5カップカーはまったく同じ性能であって、部品ひとつとっても共通化されているので、パーツを補ったりするケースもあります。カスタマーエクスペリエンス、つまり参加者へのサービスをしっかりやっています。車両を開発したロングロードレーシング社は毎戦トランスポーターで現地に来て、部品のサービスやメンテナンスのアドバイスをしています。タイムが伸び悩んでいる選手には、カップカーの開発ドライバーであるトム・ロング氏がコーチとしてロガーデータを見てドライビングを教えています。こうしたアフターケアをしっかりとやっていることが、多くの方に参加して頂いている理由だと思います。ぜひ皆さんも参加してください」
-----日本シリーズは、参加台数が少ないのですが、アメリカのように活性化するためにすべきことはなんでしょうか?
「難しい質問ですね。まず、アメリカにはサーキットがたくさんあり、モータースポーツを取り巻く環境が日本とは違う部分があると思います。日本でもグローバルMX-5カップの基本精神となっている、若いドライバーを育てるチャンスを提供するなど色々とやり方があると思います。とにかく続けていくことが最も大切です。日本におけるマツダのモータースポーツには、パーティレースのような基盤があるので、スーパー耐久を含めて、ステップアップのチャンスを提供することも大切なのかも知れません」
-----ありがとうございました。
世界一決定戦のダイジェスト動画
MX-5カップ公式サイト内のギャラリーページに掲載
GAORA SPORTSがグローバルMX-5カップ世界一決定戦を放送
マツダのモータースポーツ活動が未来へ紡ぐヤングドライバーたちの夢や、“世界につながる”画期的なレースの神髄に迫る。放送日時は2018年12月22日(土)22~23時なのでお見逃しなく!!
東京オートサロン2019で、堤優威&吉田綜一郎トークショー開催
東京オートサロン2019(幕張メッセ)のマツダブースでは、1月12日(土)、グローバルMX-5カップ世界一決定戦を戦ったドライバーのトークショーが開催される。詳しくは公式サイトをチェック!!
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