AE86トレノを18歳で購入し11年 最初のクルマが“アガリ”になるまで惚れ込んだ理由とは【Bestcar Classic オーナーズボイスVOL.8】

　一台のクルマには、縁あってオーナーになった人との歴史や思い出があり、物語になるほどのエピソードが生まれることもある。

　そんなクルマと人との関わりを、オーナーさんに直接取材して、リアルな生の声を紹介していきたいと思います。はたして、どんな生の声が聞けるのでしょうか?

　購入した動機から、愛車に対するこだわりのポイント、年間の維持費、故障箇所、愛車の主治医まで、これからそのクルマを購入しようと思っている人にも役に立つ情報満載でお届けします。

文・写真／松村透

【画像ギャラリー】AE86トレノが最初で最後のクルマ!? 愛と想いが詰まった愛車を拝見!!

■18歳で免許を取ってから11年ずっと一緒のスプリンタートレノ そこまで惚れ込んだ理由とは?

　昭和から平成を経て、令和の時代になっても一向に人気が衰える気配のない「ハチロク」ことAE86型カローラレビン/スプリンタートレノ。それどころか人気の度合いはさらに加速しつつあるように思います。

　今回、運転免許を取得後、最初の愛車として18歳の時に手に入れたAE86型スプリンタートレノとともに20代を掛け抜け、先日30歳になったばかりだという尾形 隼さんを取材しました。当初は数年乗れたらいいなと考えていたようですが、それがいつの間にか手放しがたい存在に……。

オーナーの尾形 隼さん。愛車である1986年式トヨタスプリンタートレノGT-V改とは既に11年の付き合い。なぜ「改」なのかは、後述する

■プロフィール＆愛車紹介

・お名前（HNも可）：尾形 隼さん
・ご年齢：30歳
・ご職業：上下水道関係
・所有しているクルマ（年式、グレード名）：1986年式トヨタスプリンタートレノGT-V改
・購入時期：2010年
・所有年数：11年
・購入時の走行距離：約23万千km
・現在の走行距離：約29万8千km
・購入時の金額：約120万円

■AE86を手に入れようと思ったきっかけを教えてください

　小学校高学年か中学生の頃、土屋圭市さんのAE86（5バルブ搭載）をホットバージョンのDVDで見てから、ハチロクに乗りたくなったのがきっかけです。当時、クルマ好きの同級生はほとんどいませんでしたが、今でも付き合いのある幼なじみのクルマ熱がすごく、今の私があるのも彼の影響が大きいと思います。

　実は18歳になって運転免許を取得した時、クルマを買うならハチロクか180SXあたりかなぁ……くらいのテンションだったんです。まぁ2、3年乗れればいいかなって思う程度でした。

　何件か問い合わせてみましたが、実車を見に行ったのは現在の愛車だけです。自宅から少し離れた場所で売られていたので、父と2人で観に行きました。グレードはGTVでした。メーカーオプションで新車時にハイテックツートンに塗られた個体でした。頭文字Dの影響もあり、この色にオールペンされるハチロクが多いようです。

　私のハチロクを購入した2010年当時、車両価格は約120万円。専門店では180万円前後の個体もありましたが、今では考えられない価格ですよね。

まもなく30万kmを迎える尾形さんのハチロク。オーナーさんはひと足先に30歳に!メーターもノーマルを維持しており、非常に綺麗な状態だ

■愛車との濃いエピソードについて聞かせてください

　レイズ製の限定アルミホイール「TE37V SL」を装着していた当時、装着例としてホームページに掲載していただいたことです。2016年だったと記憶しています。

こちらはレイズ社のホームページ掲載用の撮影中に尾形さんが撮影したもの（画像提供：尾形隼さん）

　このホイールを履いてハチロクのイベントに参加した時、広報の方に声をかけていただきました。当時フロントにも9Jサイズを履いているハチロクは珍しいということで採用されたようです。

　現在は14インチにインチダウンしたTE37に履き替えたので、「TE37V SL」はきれいに洗って保管してあります。これからも大切にとっておこうと思います。

現在は14インチ仕様のレイズ製TE37を装着。ホワイトと迷ったすえにブロンズをセレクト。AE86に小径の14インチタイヤは良く似合う

■愛車に対するこだわりについて聞かせてください

・内張およびリアシートは外さない
・ロールケージは組み込まない
・追加メーター類も控えめに
・外観はあまり派手にしない

　このあたりでしょうか。とはいえ、ノーマルにこだわりがあるというわけではないんです。スパルタンな仕様より落ち着いた雰囲気の方が好きなんですね。これから先、年齢を重ねても乗っていける雰囲気に仕上がっているかなと感じています。

　現在の仕様ですが、AE111型のエンジンをベースにBC製5AGクランクとコンロッド、CP製82パイ特注ピストンで1752ccに排気量アップ。

　TRD製ヘッドガスケット、戸田レーシング製の288度カム、強化バルブスプリング、AE92型用同時点火、300cc追加インジェクター、ファンネルはインパルス製です。フリーダムで制御しています。

　トランスミッションはタカタテクノサービス製の3速クロス、5速をハイギアに変更しています。ファイナルは4.556です。足まわりはフロントがトラストのダンパーにSwift製スプリング、リアはインパルス製スプリングに、ダンパーDG5製でスタビは前後TRD製です。

　外装はTRD製リアゲートとリアスポイラー、シツアモデル製ドライカーボンミラーとフューエルリッドとドライカーボンリトラカバーです。

尾形さんのハチロクの内装はシンプル。ステアリング、シフトノブ、シートはTRD製をセレクト。フロアマットはKARO製。GT-Vなので窓の昇降は手動だ

■大まかな年間維持費（自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算）を教えてください

・自動車税：4万5400円
・オイル関係：約3万円
・ガソリン代：月5000程度
・車検：約12万円～

　油脂類（エンジンオイル・デフ・ミッション）の交換は年1～2回、チューニングエンジンを組み込んでいますし、ミッションやデフをオーバーホールしているので、ここは妥協しません。

　最近の年間走行距離は1000～2000kmです。そのため、ガソリン代に関してはざっくりです。私の場合、ガソリンが減ったなと気づいた時点で給油し、満タンに近い状態を維持する方です。

AE111型のエンジンをベースに排気量アップされたチューニングを搭載。そのため、尾形さんのトレノは「AE86改」となる。エンジン周りのパーツはまだ比較的入手しやすいようだ


■これまでの主な故障箇所を教えてください

・デスビのハーネスが経年劣化して断線しエンジン不調
・リアブレーキキャリパー固着など
・トランスミッションのシフトフォークやシンクロなど摩耗によりギヤの入り悪化（特に高回転）
・トランスミッションのクランクシャフト側からのオイル漏れ（あるあるですね）
・ディストリビューターのカプラー部分のギボシの接種不良など

　30年以上前のクルマだけに経年劣化よる故障もあります。こればかりは仕方がないと思っています。

大切にしているとはいえ、尾形さんより年上の愛車。経年劣化による故障は避けて通れない。特にゴム部品やオリジナルの外装部品はメーカーでも製廃が進んでいる

■純正部品の入手に苦労していますか？欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください

　製造廃止の部品の入手に苦労しています。インターネットオークションのチェックも欠かせません。私が知る限りではこちらです。

・サイドガラス周りのモール、フロントウィンドウモールの一部製廃
・リトラクタブルモーター
・ストラットやナックル
・前後バンパー
・外装パネル関係すべて
・フレーム関係（アッパーサポートのみ出ます）

　手元にないものは他の方も同じらしく、ネットオークションでは争奪戦になることもあります。

●復刻を希望する部品はどのあたりですか？

これも挙げたらキリがありませんが…。

・ウィンドウモール
・前後バンパー
・スイッチ類（ライトおよびワイパー）
・リトラクタブルヘッドライト周り

このあたりでしょうか。トヨタさん、よろしくお願いします！

自宅で大切に保管しているというストック部品。これはホンの一部だそう（画像提供：尾形隼さん）

■愛車の主治医どのようなお店ですか?

　一般的なクルマ屋さんですが、車検からエンジンのオーバーホール、コンピュータセッティングまで安心して任せられるお店です。

オーナー1人の努力では限界がある。車齢30年以上の車を長持ちさせ、安心して乗る事ができるのは愛車を任せられる主治医の存在があってこそだ


■これからも乗り続けるご予定ですか？

　これから先のことはまだ分かりませんが、ガソリン車が乗れる間は乗り続けたいと思います。

10代、20代をこのトレノと過ごしてきた尾形さん。ガソリン車が乗れる間は乗り続けたいそうだ。最初の愛車が「アガリのクルマ」となる。オーナーと愛車をつなぐ絆はこれからも続く

■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください

　生産されてから30年以上前のクルマです。特にボディの錆をチェックしてください。可能であれば、リフトアップしてフロアの錆、腐食による穴が空いてないか見たほうがいいです。それとクルマの扱われ方を考えると、事故車が当たり前くらいに考えておいた方がいいと思います。

　3ドア車はリアゲートの腐りや、ガラスウェザーストリップの劣化で雨漏りしやすいです。私の個体はリアゲート部分の中に水が溜まってしまい、ゴムや劣化したり、ゲートの表面が腐ったり…といった具合でした。あと、雨漏りしている車両は車内が臭いので、これも判断材料になると思います。

　正直、エンジンや駆動系、足回りは社外パーツがかなり出ていますので、うまく流用すれば純正品の代用として補えると思います。ただ、前述したように純正部品の入手が困難なものが多く、フルノーマルとして維持していくのはかなり大変です。

　あとは、ノウハウを持っていて、誠実に対応してくれるショップとの出会いも非常に重要です。固定客がつかない、お客さんが離れていってしまうようなショップは要注意です。

TRD製テールゲート。オリジナルの外装部品すら入手が難しくなる中、この様な希少価値の高いパーツを今から探すのは至難の業だ

■あなたにとって愛車はどんな存在ですか？

快適に日常の足として使うのではなく、単純にクルマの運転する楽しさを教えてくれる存在です。

　手に入れて10年を過ぎましたが、飽きなかったですし、手放そうと思ったことも1度もこれまでありませんでした。このトレノより欲しいと思うクルマがないんです。自分でもなぜだか分からないので、理由を聞かれると困ってしまうんです（苦笑）。

このトレノより欲しいクルマは無いという。リアクォーターガラスに貼られた"Hot-Version"ステッカーは読者プレゼントで配付されたものだそうだ

■取材後記

　エンジンをAE111型に載せ換え、さらに排気量アップ＆チューニング。さらにミッションとデフをオーバーホールし、TRD製リアゲート＆リアスポイラー、ステアリングおよびシフトノブをはじめ、決して自己主張が強い個体ではないけれど、見る者を惹きつけるオーラを発している尾形さんのトレノ。

　当初は数年で他車に乗り換えることも考えていたようですが、多感な10代・20代とともに過ごし、先日30歳を迎えた尾形さんにとって、人生初の愛車がそのまま「アガリのクルマ」になる確率が高そうです。

　尾形さんのような若い世代から、現在も新車ワンオーナー（またはそれに近い年数）でハチロクを所有・維持している方がたくさんいらっしゃいます。70/80型スープラのように、ハチロクにも部品再生産の機会が訪れることを願うばかりです。

低速でも美しい音色を奏でながら走り去る尾形さんのトレノ。偶然すれ違った対向車のお父さんが思いきり振り返っていた。ここまでノーマルに近いAE86に一瞬昔を思い出したのかもしれない

【画像ギャラリー】AE86トレノが最初で最後のクルマ!? 愛と想いが詰まった愛車を拝見!!

Comments

まだ11年しか乗ってない30才台なのに？
アガリのクルマの意味わかってない記事？

子育てが終わった５０－６０代のオーナーのあがり車かと思ったら、まだ３０歳であがりとは。この先３０年、４０年の車人生において生涯維持できるかは今後の仕事や家庭、子供の事情もあるはずだから、３０歳であがりを決められるわけないでしょう。そういう自分もＢＮＲ３２をあがりとなるようがんばっている６０前のおやじだが。