BMW M850i xDrive Gran Coupe
BMW M850i Xドライブ グランクーペ
マクラーレン GT、アストンマーティン DBS、ポルシェ911。現代最高のGTモデルを1000kmツーリングでジャッジ 【Playback GENROQ 2020】
試される審美眼
BMWの最上級クーペモデルとなる8シリーズ・グランクーペが上陸した。優美で官能的なスタイルに、豪奢な室内空間はまさに最上級クーペに相応しい。ラインナップの頂点に君臨する4.4リッターV8搭載のM850iでロングツーリングに出てみた。
「8シリーズの2ドアクーペより全体のバランスがよくて、スタイリッシュだ」
8シリーズのグランクーペ試乗と聞いて、現行のBMWのラインナップをおさらいしてみようと思ったのだが、それだけでページが埋まってしまうことがわかった! ディーラーのセールス氏はこの膨大なラインナップを、頭の中でどうやって整理しているのだろう? ともあれ今回はグランクーペの最高峰であるM850i xドライブである。
真正面から見たグランクーペは8シリーズの2ドアクーペと見分けがつかない。クーペのルーフがダブルバブル形状になっているくらいしか識別箇所がないのでは? 一方、真横から見た8シリーズのグランクーペは粘土のカタマリを指で伸ばしたようにキャビンの形が伸びやかで、リヤエンドに向けてキュッとすぼまっている。8シリーズの2ドアクーペより全体のバランスがよくて、スタイリッシュだと思った。
「スポーツカー並の走りと優雅な外観。グランクーペ史上、最高の1台である」
正直なところ、これまでのグランクーペにはあまり良い印象がなかった。最初に登場した6のグランクーペのスタイリングはそれなりだと思ったが、今回の8と比べるとリヤスタイルのスペシャリティ感が希薄だ。一方4シリーズのグランクーペは3シリーズの5ドアハッチ以上には見えず、最新の2シリーズ・グランクーペは写真で見る限り寸詰まっているように見え、どちらもラグジュアリー感に乏しいと感じた。
グランクーペという名称が優雅な4ドアクーペのためにあるのだとすれば、それなりの全長がないと格好がつかないのではないだろうか。何しろ昨今は、衝突安全性のおかげで総じてウエストラインが高めになっているし。以上の観点から、今回の8はBMWのグランクーペ史上最高の1台だと思う。外観に関しては。
「後ろを振り向かなければこのクルマはグランドツーリング・クーペだ」
では中身はどうか? まず後席に座ってみると、大き目のリヤドアから想像していたとおり空間に余裕がある。フルサイズの4ドアクーペ系の中で最もリヤシートがタイトなアストンのラピードを研究し、少し圧迫感を取り去ったパナメーラ、よりもさらに8のグランクーペは寛げる空間になっている。ヘッドレスト一体型の前席のような形状のシートもグランクーペの名に相応しい。
とはいえ低められた全高のおかげで身長178cm以上(たぶん)の人は頭がつかえてしまうはずだ。また乗り降りするときにルーフの端がまるでレースカーのロールケージのように立ちはだかって頭を掠める。エグゼクティブだったら腹を立てることもあるだろうが、一般的な家族、友達同士なら問題はあるまい。
一方前席は8シリーズ・クーペのそれを踏襲しており、こちらもプレミアム感に満ちている。後ろを振り向かなければこのクルマはグランドツーリング・クーペなのである。
「安定方向に働く寸法や質量と電子制御技術が高いレベルでバランスしている」
8シリーズ・グランクーペのパワーユニットは3.0リッター直6ターボのガソリンとディーゼル、そして今回試乗したM850i用の4.4リッターV8ターボという3種類が用意されている。V8の最高出力は530psだからこれ以上は望めないと思ってしまいがちだが、ちなみに未上陸のM8コンペティションは、同じシリンダーブロックから625psを引き出しているので、まだ余裕はあるようだ。
車重は約2.1トンもあるし、駆動はxドライブ(4WD)なので、いきなりスロットルを深く踏んでも、従順かつ猛烈に加速するだけだ。
M850iクーペを想像しながらワインディングにさしかかると、すぐにはっきりとした違いが感じられた。カーボン製のルーフ(オプション)を備えていたクーペに比べ全面ガラスのルーフによってロールの戻りがゆったりとしているし、ロングホイールベースのおかげもあって全体の動きも穏やか。スポーツカーの純度に関してはクーペより低いことになるが、スタビリティがとにかく高いので、安心して飛ばすことができる。例えばアマチュアがニュルで8のクーペとグランクーペを乗り比べたら、結果的に後者の方が速く走れるような気がする。
スポーツカーの走りにおける安心感は、直進性の高さや、アンダーステア傾向と同義であることが多い。だが8のグランクーペは、安定方向に働く寸法や質量と電子制御技術が高いレベルでバランスしている。
「BMWのアドバンテージはやはり走りにあると確信した」
クーペではアクションが少し極端だった後輪操舵も、ホイールベースが205mm伸ばされたグランクーペの場合はナチュラルに感じられた。アクティブスタビライザーの仕事量も、重心が高くロールが大きいグランクーペの方が増えているに違いない。4ドア化によるボディ後半部分の重量増によって後ろ寄りに移行した重量配分を、電子制御が補完することで、グランクーペはグランドツアラーとしての唯一無二のキャラクターを体得しているのである。
総じて上々の仕上がりを見せてくれた8シリーズ・グランクーペだが、ではライバルと比べた場合にはどうなのか? メルセデスのCLSやAMG GTの4ドア、アストンマーティンのラピードS、ポルシェ パナメーラ、アウディ RS 7等々、フルサイズの4ドアクーペ市場は活況を呈している。そんな彼らと比べた場合、BMWのアドバンテージはやはり走りにあると確信した。現在輸入車ではBMWの独擅場であるハンズオフのACCのように日進月歩でライバルが追いかけてくる分野とは違い、走りはブランドの精神に根ざしているので、これは侵されにくい本当の個性だ。
東京から関西方面に向かう際、昼間の新東名ではなく敢えて深夜の中央道を使うような気骨のあるファナティックならば、ぜひともM850iグランクーペを選ぶべきだ。
REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
【SPECIFICATIONS】
BMW M850i xドライブ グラン クーペ
ボディサイズ:全長5085 全幅1930 全高1405mm
ホイールベース:3025mm
トレッド:前1625 後1670mm
車両重量:2090kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4394cc
最高出力:390kW(530ps)/5500rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-4600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/35R20 後275/30R20
燃料消費率:8.1km/L
車両本体価格:1715万円
※GENROQ 2020年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
トヨタ新型「コンパクトSUV」発表! 驚きの”レクサス顔”に進化!? 顔面刷新の”最売れモデル”「カローラクロス」亜で登場
日本の平均年収約458万円!? 「ポルシェ“911”は買えないのでしょうか。」 最低必要な年収はどのくらいなのか
3500万円! 日産が新型「GT-R」実車展示! 存在感スゴい「最強仕様」がNYに登場! 進化した「新デザイン」採用に反響あり
レクサス最上級ミニバン「LM」に待望の6座仕様の“バージョンL”を追加! 価格は1500万円から。
家の駐車場からの「はみ出し」は違反なの? 「タイヤ1個は?」 どれだけ道路に出るとアウト!? 道交法の答えは
「デコトラ=ど派手な改造=違法」は偏見でしかない! いまほとんどのデコトラが「合法改造」に収めているワケ
「タクシーの寿命」なぜ長い? 自家用車の約4倍も“長持ち”!? 過酷な使われ方をしてるのにガンガン走れる理由とは?
免許取得したてで「高級ミニバン」購入!? 「初心者」マーク貼付けた“斬新な姿”に「なかなかいないですよ」 芸人、エハラマサヒロが実車を公開!
中国市場はまだまだEV化の流れが止まらなかった! 内燃機関からPHEVを介してEVシフトするシナリオの中身
3500万円! 日産が新型「GT-R」実車展示! 存在感スゴい「最強仕様」がNYに登場! 進化した「新デザイン」採用に反響あり
みんなのコメント