■見た目も機能も本格的なエアロパーツ車を振り返る
クルマの外観をドレスアップするパーツとして定番なのがエアロパーツです。レースの世界で誕生し、空力特性の向上が目的だったエアロパーツは、1970年代に市販車にも装着され、1980年代に一気に普及しました。
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社外部品として販売されているだけでなく、純正部品でも数多くラインナップされ、なかには市販車ながらドレスアップ目的ではなく、本当に効果が期待できるようなエアロパーツが装着されたケースも存在。
そこで、ド派手なエアロパーツが装着されたクルマを、5車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ「S2000 タイプS」
レースとエアロパーツは密接に関係していますが、1990年代の後半からは、市販車をベースしながらも改造範囲が格段に広くなった「全日本GTカー選手権」が人気となり、GTカーたちの必須アイテムだったのが後に「GTウイング」と呼ばれたリアウイングです。
このGTウイングが人気となり、アフターマーケットで多数販売され、純正装着するモデルも登場。その1台が2007年に発売されたホンダ「S2000 タイプS」です。
S2000は1999年にホンダの創立50周年記念事業のひとつとして登場したFRオープンスポーツで、250馬力を発揮する2リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載するなど、高性能さが高く評価されました。
なかでもS2000 タイプSは、左右に大きく張り出したフロントスポイラーが装着され、高速走行時のダウンフォースだけでなく、ボディ下面に流入する気流をコントロール。
さらに巨大なリアウイングは中央部を湾曲させた形状で、シート後方の乱流を積極的に整流する効果が期待できます。
この巨大なGTウイングは、S2000以外にも純正装着された例がありましたが、現在はほとんど見られなくなりました。
●マツダ「RX-7 マツダスピード R-スペック」
マツダ「RX-7」はロータリーエンジンを搭載した本格スポーツカーとして1978年に誕生。
パワフルなロータリーエンジンはマツダのさまざまな車種に搭載されていましたが、燃費の悪さから徐々に敬遠され、小型、軽量、高出力なロータリーエンジン存続の道として選ばれたのが、本格的なスポーツカーでした。
そして、1991年には3代目となる「FD3S型」RX-7が登場しました。3代目RX-7は各部にアルミ素材が使われたことから100kg以上の軽量化を実現。
ドライバーが運転を楽しむことを最優先する本格的な「ピュアスポーツカー」として生まれ変わり、海外ではロータリーロケットと評されました。
この3代目では当然ながら純正で各エアロパーツが装着されていましたが、かつてマツダのモータースポーツ活動を担っていたマツダスピードからもチューニングパーツがリリースされ、エアロパーツもラインナップ。
その究極のスタイルを実現したのが「RX-7 マツダスピード R-スペック」です。
R-スペックはレースでの使用を前提として開発され、カナードを備えたフロントスポイラー、サイドステップ、ディフューザー付きのリアバンパー、そして巨大なGTウイングで構成されていました。
さらに、エアアウトレット付きのエアロボンネットに、空気抵抗削減を目的としたエアロサイドミラーも設定されました。
ノーマルのRX-7の美しいフォルムを崩すことのないデザインに、高品質なフィッティングが可能だったこと、サーキットでこそ威力を発揮する性能など、メーカー直系のマツダスピードならではのアイテムといえるでしょう。
●トヨタ「86 GTS」
2012年にデビューしたトヨタ「86」は、スバルと共同開発された2リッター水平対向4気筒エンジンを搭載した小型FRクーペです。
高いコーナーリング性能を持つライトウェイトFRスポーツカーを待ち望んでいた層から、たちまち人気となります。
86は日本のみならず海外でもヒットし、なかでもオーストラリアではワンメイクレースが開催されるなど、若い世代から高い支持を受けていました。
そしてユニークなのが、オーストラリア独自のオプションが用意されていたことで、フロントバンパースカート、サイドスカート、リアバンパースカート、大型リアスポイラーで構成されたエアロパッケージを設定。
これは、日本では販売されなかったエアロパーツで、まだ86が発売される以前に、プロトタイプがニュルブルクリンク4時間レースに出場した際のエアロパーツを再現しています。
2012年6月に「86 GTS」グレード専用で発売されると、日本でもこのエアロパーツは話題となり、「ニュル羽」や「ニュルウイング」と呼ばれ、わざわざオーストラリアから取り寄せたユーザーもいたほどです。
■セダンでもゴリゴリのエアロパーツで大胆に変身!?
●メルセデス・ベンツ「190E 2.5-16 エボリューションII」
1985年に日本へ正規輸入され、大ヒットしたメルセデス・ベンツのエントリーカーの「190E」は、現在の「Cクラス」の前身にあたるモデルで、当時、日本において高級車のシンボル的存在だったメルセデス・ベンツの普及を加速させた立役者です。
この190Eをベースに、1986年にはレースエンジンのサプライヤーである「コスワース」の手により開発された、175馬力を発揮する2.3リッター直列4気筒DOHCエンジンを搭載したスポーティセダン「190E 2.3-16」が登場。
ドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)の出場資格を得るための、ホモロゲーション・モデルとして販売されました。
1988年には、DTMのレギュレーション変更に合わせて排気量を2.5リッターとした「190E 2.5-16」が登場。
排気量の拡大によって最高出力は200馬力まで高められていましたが、1989年には、さらにチューニングされたエボリューションモデルの「190E 2.5-16エボリューションI」が、1990年には最高出力を235馬力まで高められた「190E 2.5-16エボリューションII」が、それぞれ500台生産されました。
とくに190E 2.5-16エボリューションIIは、メルセデス・ベンツのモデルとは思えないほどアグレッシブなデザインのエアロパーツが装着され、異様にも見える外観です。
前後のアンダースポイラーに巨大なリアウイング、別体のオーバーフェンダーなど、レースでの効果が前提で開発されており、オーソドックスなセダンの190Eが戦うマシンに変貌しています。
●スバル「WRX STI tS TYPE RA NBR CHALLENGE PACKAGE」
1992年にデビューしたスバル「インプレッサ」は世界戦略車としての役割を担い、同時に「レガシィRS」に代わってWRCで勝つ使命も与えられ、トップグレードには「WRX」の名前が付けられました。
WRXには240馬力を発揮する水平対向4気筒ターボ「EJ20型」エンジンが搭載され、レガシィより80kg軽いボディや、クロスレシオ化されたトランスミッションの採用で高い走行性能を発揮。
1994年にはSTI(スバルテクニカインターナショナル)製のコンプリートカー「WRX STi」が登場し、以降はラリーで活躍すると、改良されながら代を重ねました。
そして、2010年にインプレッサでは最後の高性能モデルとなった、4ドアセダンのインプレッサ WRX STI(後にスバル「WRX STI」の車名が俗称に改定)が登場。
その集大成といえるモデルが「WRX STI tS TYPE RA NBR CHALLENGE PACKAGE」で、2013年に200台限定で発売されました。
NBR CHALLENGE PACKAGEは、足まわりやシャシを中心にチューニングされたWRX STI tS TYPE RAをベースに、STI製ドライカーボンリアウイング(角度2段調整式)、BBS製18インチホイール、レカロ製バケットシートなどが専用装備され、レーシーな内外装を演出。
その名のとおり、WRX STIが参戦し続けてきたニュルブルクリンク24時間レースのマシンをモチーフにデザインされていました。
台数限定とあって、当然ながらあっという間に完売したのは、いうまでもありません。
※ ※ ※
日本車で初めてエアロパーツが装着されたのは、1970年前後のことで、日産「スカイラインGT-R」や、トヨタ「カローラレビン」などです。
しかし、当時は交通戦争と呼ばれたほど交通事故による死傷者数が急激に増えたことで、エアロパーツを装着したスポーティなモデルは、運輸省(現在の国土交通省)による認可がおりず、一旦、純正エアロパーツは消滅してしまいました。
その後は徐々に復活を果たし、現在に至ります。いまではどんなエアロパーツでも保安基準に適合していれば、大手を振ってクルマに装着できますが、そういう行為がアウトローに見られた時代もあったということです。
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