限定車でもより注目を集めるのが記念モデル。その究極の存在といえるのがフェラーリの記念モデルだろう。
フェラーリの記念モデルと言えば、40周年のF40を皮切りに、その後10年ほどのスパンで発表。50周年ではF50、60周年ではエンツォ・フェラーリ、70周年ではラ・フェラーリが発売され、いずれも限定台数が少ないため速攻で完売している。
これらフェラーリの周年記念モデルはスーパーカーのなかでも、どれだけ特別な存在なのか? その魅惑の世界に迫っていきたい!
文/西川 淳
写真/Ferrari
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■いまや限定車は最強の自動車ビジネスのひとつ
V8ツインターボ搭載のスペシャルロードカーとして登場した288GTO
現代人は周囲から認められたい、とか、優位であることを確認したいという“自我欲求”が強いといわれている。そこを見事についたビジネス戦略が世の中にあふれる“特別仕様”や“限定品”だ。
他人が持っていないモノを手に入れることによって自分の優位性を誇示したいという消費者心理(スノッブ効果という)をついて、今買っておかないともう二度と手に入れることはできなくなるかも、と思わせることができれば、その商材は放っておいても売れていく。
自動車の世界でも特別仕様や限定車のビジネスが定番中の定番となって久しい。それこそ軽自動車からロールスロイスまで通用する手法だ。クルマは高額商品ゆえ、そこに資産としての価値(リセールバリュー)も期待できるとなれば尚更だろう。
その典型が世界で最も価値ある自動車ブランド、「フェラーリ」のさまざまなアニバーサリーモデルである。いわゆる周年記念の特別仕様モデルで、“希少だから欲しくなる”というスノッブ効果のほかに、高価だから欲しくなるという“ヴェブレン効果”まで重なって、今や現代最強の自動車ビジネスモデルのひとつとなった。
■限定車ではなかったF40は1000台以上を生産
フェラーリ40周年を記念して販売されたF40
フェラーリが戦略的にこの手法を考えついたのかどうかはわからない。けれども、最初の記念モデルが20周年でも30周年でもなく40周年(1987年)のF40で、厳密には台数限定車ではなかったことを考えると、そこに周到な戦略性を見つけることは難しい。
そもそもGTO(288)という悲運の高性能ロードカーの発展形がF40だった。一説によるとコマンダトーレ(創始者エンツォ・フェラーリ)は少ない台数にとどめたかったらしいが、彼の没後、F40の生産台数は“順調に”伸びて1000台を軽く超えてしまう。
ちなみにF40はエンツォが見守った最後のロードカーとして、今や熱心なフェラリスティの間では半ば“神格化”されたモデルでもある。
■F50以降は台数限定のスペチアーレを発売
50周年記念モデルのF50は349台限定で販売された
時は世界的な好景気の真っ只中。特別なモデルの存在がとりわけクローズアップされた。他ブランドもこぞって限定モデルを発表する。特別感の演出に最も効くのが“限定”であり、開発の口実(ストーリー)として“周年”は誠に都合がいいとフェラーリも考えたのだろう。50周年記念のF50はグッと絞って349台となった。
ここにフェラーリの限定車ビジネスはひとつの完成形をみる。F50は50周年に登場した訳ではなく、50周年を迎える1997年までに349台を作り終えるとして1995年に発表されている。
結果的にこの後フェラーリは、周年にはもはや関係なく、程よい期間(だいたい10年弱)を挟んで、288GTOから続く“スペチアーレ”(特別仕様)をVIP顧客に限って限定販売するという手法に転換した。2002年のエンツォ・フェラーリ、2013年のラ・フェラーリという具合に。
■F50からは12気筒リアミドシップが特別な存在
エンツォ・フェラーリ
もうひとつ、ここには重要なコンセプトの変化もあって、288GTOとF40はモータースポーツを背景とした成り立ちゆえV8ツインターボをリアミドに積んでいたのだが、F50で12気筒をリアミドに積むと、今度は12気筒ミドであること自体が“特別な存在”へと引き上げられた。
フラッグシップのシリーズモデルが12気筒ミドシップのテスタロッサ(TR)系から、12気筒FRの2シーターGTクーペへと伝統回帰したことのそれはウラハラでもあったのだ。
F40が288GTOをベースとした発展形であると書いたが、レーシングカーのシルエットフォーミュラ(グループ5)のようなエアロデバイスをまとい、コンポジット素材で車体を強化し、カーボンボディパネルを採用するなど見た目としては新時代のスーパーカーであったし、その性能もまたそれまでのロードカーとは一線を画していた。
とはいえ、その成り立ちはといえば鋼管スペースフレーム構造という従前のフェラーリロードカーと基本的には変わらなかった。
それが一転してモダンなカーボンモノコックボディ構造へと進化し、あまつさえF1とのメカニカルなイメージ共有性を実現したという点で、F50の存在は大きい。そしてもちろん、少量限定生産というその後のフェラーリビジネスの柱が構築されたという点でも評価すべきモデルだろう。
レースでの直接的な活躍はなかったけれども、そのノウハウはプロトタイプレーシングカーの333SPに生かされている。
■限定モデルのオーナーはフェラーリが選ぶ
ラ・フェラーリ。6.2L、V12エンジンと2モーターの搭載により、システム最高出力963psを発揮する
年々広がる跳ね馬マーケットに対して、この手の限定モデルは500台前後に絞られており、その希少性は極めて高い。しかも、お金があるからといって買えるものではないという点が、希少性をさらに高めている。
現代のVIP向け専売となったスペシャルモデル・ビジネスの凄い点は、フェラーリ本社が売る相手を直接選んでいるところだ。つまり、本社が重要な顧客の“顔”を知っている。
フェラーリの特別仕様車を手に入れるためには、マラネッロとの付き合いを深めるほかない。付き合いとは、クルマを買い、イベントに参加することだ。
マラネッロは顧客のある意味“貢献度”によってランキングを作り、販売する相手を決めている。そのリストに入るためには、基本、地道な努力が必要で、些か宗教的ですらある。
最も有効な手段は、フェラーリでレース活動をすることだと言われている。歴代F1モデルのオーナーは”F1顧客“と言われて最も重要視されているという。
■カタログモデルも一見さんはお断り!?
フェラーリ初のPHV搭載車となったSF90ストラダーレ。パワートレインは4L、V8ターボエンジン+3モーター。システム最高出力は1000ps
希少性の高い限定モデルは、発表後たちまちプレミアムがつき、販売価格の二倍、三倍となることも珍しくない。であれば、シリーズモデルを買い続けても損はしないという計算も成り立つ。
例えば直近のスペチアーレであったラ・フェラーリ・アペルタなどは新車価格が4億円近かったというが、その倍以上の値をつけたこともあった。そういう話であれば、借金してでも飛びつきたくなるのは当たり前で、富裕層はシリーズモデルをせっせと買い始めるわけだが、そこにも生産台数の限界がある。
それゆえ今ではカタログモデルの新型車をディーラーと付き合いのない客がいきなり買うことすらままならない。
まずは中古車からお付き合いを始めましょうとなって、必然的にフェラーリの相場は高値で安定し、そのことがまた新型車の人気を押し上げ、さらに特別仕様車の価値をいっそう引き上げるという好循環ビジネスモデルが実現するというわけだ。
■フェラーリほど成功しているスーパーカーはない!
それゆえフェラーリは、例えば日本マーケットの参入50周年記念モデル(FJ50)や、スクーデリアフェラーリの90周年記念モデル(SF90)といったありとあらゆる“口実”を見つけ出しては特別仕様を企画し、それらもまた高い価値をキープすることになる。
ちなみにフェラーリのロードカーで最も購入が難しいとされているのは、年に一台のみ生産されるワンオフモデルである。
最新モデルの高評価に伴ってクラシックモデルの評価も上がる。減ることはあっても増えることのないクラシックモデルは、相変わらず高値で安定しており、例えば前述のF40は1.5億円程度、F50に至っては3億円以上というのが相場である。
もっともF40などはバブル期に2.5億円で売買されたこともあったが。
スーパーカーブランドは数あれども、フェラーリのようにすべての歯車が上手く回っているケースはほかにない。スーパーカーの相場トレンドが下降気味と言われる最新状況にあっても、フェラーリの相場だけは強含みで推移している。
スーパーカー業界のリーダーはフェラーリということである。
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