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マクラーレンとの決別が、ホンダ再生の糸口を見つけ出す機会に/海外ジャーナリストF1特別コラム

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マクラーレンとの決別が、ホンダ再生の糸口を見つけ出す機会に/海外ジャーナリストF1特別コラム

 2020年シーズン、アストンマーティン・レッドブル・レーシングと組んで2年目のシーズンを迎えるホンダF1。トロロッソとの1年間を経て、2019年はレッドブルとともに大きな成長を見せ3勝を挙げた。2020年は、いよいよタイトル争いに挑む。

 さてそんなホンダF1は、海外ではどのように評価されているのだろうか。マクラーレンとの決別、トロロッソとの4位入賞、そしてレッドブルとの3勝という2015年からの第4期を振り返りつつ、ヨーロッパの声を聞いてみたい。

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 マクラーレン・ホンダが大活躍していた、1980年代後半から1990年代前半。私はまだ、生まれてさえいなかった。しかしのちにF1に興味を持ち、当時の文献や映像に触れ、先輩ジャーナリストたちから実際に話を聞くことで、その凄さをまざまざと感じることができた。

 だからこそハイブリッドV6パワーユニット時代のマクラーレン・ホンダの冒険が、あんな形で終わってしまったことはただただ驚きでしかなかった。あのマクラーレンが、そしてあのホンダが、なぜこんなブザマな醜態を晒してしまったのかと。

 ホンダ側に関していえば、2008年末に撤退してからのF1における技術進化をまったく把握してなかったことが致命傷と言えた。そして過去の成功体験にも縛られすぎていた。「あのマクラーレンと組んで、うまくいかないはずがない」。その思いはロン・デニス側も同様で、「あのホンダと組むのだから」と思い込んでいたに違いない。

 こうして何十年もかけて築き上げたホンダの栄光は、たった3年間でどん底まで落ちてしまった。それでもトロロッソと組んだ2018年のホンダからは、少し明るい兆しも見えた。とはいえトロロッソの当時のチーム力では、第2戦バーレーンGPの4位入賞でも出来すぎと言うべきであった。

 そして2019年から、ホンダはレッドブルとのパートナーシップを開始する。トロロッソとの1年はレッドブルにとっていわば等身大のテストであり、彼らはそこでホンダ製パワーユニットに関して十分にポジティブなデータを得ていた。にもかかわらずクリスチャン・ホーナー代表は、「初年度の2019年は、あくまで過渡期だ」とレッドブル・ホンダのパフォーマンスに関しては慎重な態度に終始した。

 私も含めほとんどのジャーナリストも、ホーナー代表と同じ意見だった。ホンダがいくら戦闘力を増したとはいえ、せいぜいルノーと互角か、それ以下のはず。だったらレッドブル・ルノー時代以上の結果など出せるはずがないと思っていたのだ。

 一方でヘルムート・マルコ博士は、『年間5勝』の目標をぶち上げた。我々の反応は、「またあのジイサンが、大風呂敷を広げて」と冷笑に近いものだった。しかし結果的に正しかったのはマルコ博士だった。最終的に3勝に終わったとはいえ、シーズン中盤以降のレッドブル・ホンダはメルセデスやフェラーリとほぼ毎戦優勝を争った。5勝に値する実力を十分に示した、と私は考えている。
 ホンダのそんな急激な進化を、どう説明したらいいのだろう。ルノーのあるエンジニアは、「あれだけ莫大な資金を投入すれば、パフォーマンスも上がって当然だ」とやっかみ混じりの感想を漏らしていた。

 F1活動に最も熱心だったカルロス・ゴーンがいなくなってからのルノーは、重役陣の機嫌を損ねないよう、金の使い方もできるだけ控えめにしてきた。だから彼らがホンダの進化を平穏な気持ちで眺められないことは無理もない。

 とはいえ2019年のルノーは、ことエンジンパワーに関しては、十分に評価できるだけの進化を果たした。何しろモントリオール(第7戦カナダGP)とモンツァ(第14戦イタリアGP)というエンジンパワーがモノをいうサーキットで、彼らはその年のベストリザルトを挙げたのだから(それでもカナダGPの予選4番手、イタリアGPでの決勝4位が精いっぱいだったわけだが)。

 一方で信頼性に関しては、とても完璧とはいえなかった。MGUーKの度重なる不具合には、マクラーレンもルノーも大いに悩まされた。ルノーワークスは、第2戦バーレーンGPでニコ・ヒュルケンベルグ車のクランクシャフトが折れるという大トラブルにも見舞われた。

 再発防止の対策を講じるまでに、彼らはシーズン中の5週間もの貴重な時間を費やした。その間ふたりのドライバーは、通常よりずっとパワーを落とした走り方を強いられたのである。

 言うまでもなく今のF1は、車体とパワーユニットが同じように高いパフォーマンスを発揮しなければ、とても上位の戦いはできない。その意味ではエンストン開発の『R.S.19』も、決して満足できるレベルのものではなかった。対照的にホンダは、少なくともシーズン中盤以降は、レッドブルの車体性能を大いに頼りにできたし、それはレッドブル側も同様であった。さらにいえばトロロッソの二度の表彰台も、優れた『STR14』なしでは到達できないものだった。

 マクラーレンとの決別は、ホンダにとって非常に大きな痛みを伴うものだった。しかし結果的にその決別が、ハイブリッドパワーユニット時代のF1で、ホンダが最適な居場所を見つけることに繋がったといえる。

 2019年の第9戦オーストリアGPでレッドブル・ホンダが初優勝を遂げた際、表彰台に上がったマックス・フェルスタッペンは胸のHマークを何度も指差した。その行為はまさにレッドブルとホンダが共に乗り越えてきた壁の高さと、両者の絆の強さを窺わせるに十分であった。だからこそレッドブル・ホンダに特に強い思い入れのないフランス人の私でさえ、胸が熱くなってしまったのである。

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