EQSをダウンサイジングしたようなEQE
メルセデス・ベンツEクラスに相当するバッテリーEV(BEV)となるのが、新しいEQE。このモデルへの評価は、Eセグメント・サルーンへ何を求めるかで変わってくるように思う。
【画像】Eクラス相当のBEV メルセデス・ベンツEQE EセグメントのBEVサルーンと比較 全97枚
内燃エンジンへの風当たりが強くなかった時代から、メルセデス・ベンツはこのセグメントで確かな評価を獲得していた。求められる内容の定義も、明確といえた。
Eクラスは充分な車内空間と快適性、外界との隔離性を実現していた。スタイリングは優雅で控えめ。操縦性も、ドライバーが惹き込まれるほどではないにしても、優れた素質を感じさせるものだった。すべてが揃っていたといえる。
BEVのEQEは、ひと回り大きいEQSをダウンサイジングしたようなクルマだ。スタイリングでもそう感じるし、技術的にも近い。果たして、電動化時代にEクラスと同等のプレゼンスを得られるだろうか。英国では初めてとなる試乗で、改めて確認してみよう。
まず、コストパフォーマンスで目立つことはないだろう。後輪駆動のEQE 300は、同じく英国のエントリーグレード、EクラスのE 200に並ぶ動力性能を発揮するが、価格は比較すると3万ポンド(約495万円)も高い。
メルセデス・ベンツは、EクラスとEQEに同程度の利益率があるとしている。1台から同じ金額を稼ぐには、必要な価格設定というわけだ。
個性の薄いスタイリング 上質な乗り心地
ボディの見た目、スタイリングは個人の好みが大きく左右する。EQEはEクラスより全長が短く、全幅が広く、全高が高い。内燃エンジン・モデルからBEVへの進化に当たり、特徴が薄くなり、格好良さも減じたと筆者は思う。
フロントマスクはスマートに見えるし、リアにはディフューザーが装備され、後ろ姿を引き締めている。だが、滑らかなラインのEQSと同じく個性が弱いのではないだろうか。読者はどうお感じだろう。
実際に走らせてみると、まず驚かされたのが乗り心地。試乗車は21インチのアルミホイールを履いたEQE 350+ AMGラインだったが、唸るほど上質だった。
その理由といえるのが、Sクラスと共有するエアサスペンション。鋭い入力はエアスプリングが不得意とする部分だが、それ以外の路面の不正は見事になだめてくれていた。高速道路での滑らかさは、まるで浮いているかのようだった。
速度抑止用のコブ、スピードバンプを通過しても、殆ど衝撃は伝わってこない。Eクラスから乗り換えても、外界からの隔離性に不満を感じることはないと断言していい。平日の教会のように車内は平穏だ。
外界から距離を置いたハイテク満載サルーン
ドライビングポジションは、フロア下に敷き詰められた駆動用バッテリーのおかげで高め。シートのサポート性は、Eクラスに及ばない。視点はクロスオーバーのようでもあり、低い運転姿勢を懐かしむ可能性はある。
車内はセンターコンソールが肉厚で、ウエストラインが高いためフロントガラスも小ぶり。空間的なゆとりは感じにくいようだ。
フロントシート側は、シンプルでゴージャスなダッシュボードを眺められる。MBUXインフォテインメント・システムも優秀といえる。
リアシートに腰を掛けると、広さはEセグメントのサルーンというより流麗なグランドツアラーに近い。荷室容量も大きいとはいい難く、多くのユーザーにとって実用性で勝るのはEクラスだと感じられるだろう。
一方で、喧騒の外界から距離を置いたハイテク満載のサルーンを運転したいと考える人にとって、EQEは魅力的に映るはず。リアシートは可倒式で、長い荷物も積めなくはない。
後方視界は今ひとつ。スーパーカーのフェラーリ296 GTBと比べても、劣勢といわざるを得ない。このサイズのサルーンとして、改善を求めたいところではある。
既存の概念を超えた新しい移動手段
ドライビング体験は、全体としては優れている。操縦性は正確といえるものの、長いホイールベースが与えられた後輪駆動のサルーンとして、バランスが秀でているわけではない。それでも、洗練性は素晴らしい。
ブレーキングの感触は、車重が2.3tもあることを考えれば、もう少し明瞭さがあっていい。全体的な動的能力は、英国価格7万3450ポンド(約1211万円)のモデルとして、平均よりは上にある。
ただし、ほぼ同じ英国価格が与えられたポルシェ・タイカンのエントリーグレードの方が、ドライバーズカーという点では1つ上の水準に仕上がっている。ツインモーターのAMG EQE 53なら印象を高めるはずだが、逆転することはないだろう。
駆動用バッテリーの容量は90kWhと大きく、EQE 350+の航続距離は555kmから634kmがうたわれている。得意とする高速道路でのクルージングなら、確かに600km以上は走行可能なようだ。日常的に暮らしやすい、BEVサルーンであることは間違いない。
初めてメルセデス・ベンツEQEを英国で試乗した筆者だが、EクラスやBMW i4などより、従来のクルマっぽく感じられなかった点にも触れておきたい。既存の概念を超えた、新しいラグジュアリーな移動手段と表現したいところだ。
メルセデス・ベンツEQE 350+ AMGライン(英国仕様)のスペック
英国価格:7万3450ポンド(約1211万円)
全長:4946mm
全幅:1961mm
全高:1512mm
最高速度:210km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:555-634km
電費:5.3-6.2km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2280kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:90.0kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:292ps
最大トルク: 57.5kg-m
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック
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みんなのコメント
大中小のEVプリウスですよ。