新しいメルセデスデザインの礎となる3代目CLSに一目惚れしたものの「さて、どっちのモデルを選べば良いのだろうか?」、そんな風に悩んでいる人は多いことだろう。そこで、CLS220dとCLS450、ふたつのグレードに試乗し、その違いについて考察してみることにした。
CLS220dとCLS450の違いは、たった3カ所しかない?
本題に入る前に、CLSのヒストリーを少しだけ振り返ってみたい。初代CLS は2004年にデビューし、「4ドアクーペ」という新しいジャンルを切り開いて一躍クリーンヒットモデルとなった。2011年には筋肉質なデザインを持つ二代目が投入され、2015年には初のディーゼルモデルを追加している。そして、2018年6月25日に新型CLSが日本市場に投入された。
三代目となる新型CLSの魅力は3つある。ひとつ目は、“Sensual Purity 2.0”と呼ばれる次世代のメルセデス・ベンツデザインの採用。ふたつ目はISGを搭載した新世代パワーユニットの投入、そして3つ目がSクラス譲りの最新安全運転支援システムを搭載している点である。
日本で発売されたばかりの新型CLSは、ふたつのモデルをラインナップする。日本市場に導入されたのは、CLS220dスポーツ(以下、CLS220d)とCLS450 4MATIC スポーツ(以下、CLS450)で、現時点でAMGモデルはラインナップされていない。ちなみに、先代モデルまでは4名乗りだったが、新型CLSは5名乗りとなっている点は大きなトピックと言えるだろう。
では、本稿の主テーマであるCLS220dとCLS450の違いを見ていこう。
CLS220dは、最先端のクリーンディーゼルエンジンである2.0ℓ直4ターボディーゼル(OM654)を搭載したモデル。軽量・コンパクトな設計の最新ディーゼルは、低速域からトルクを発揮するパワフルな加速と優れた環境性能を両立し、プレミアムモデルでありながら優等生的なモデルと言えるだろう。スペックは、最高出力194ps、最大トルク400Nmを誇り、駆動方式はRWDとなる。
一方のCLS450は、新開発の3.0ℓ直6ターボ(M256)にISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせた次世代のパワーユニットを持つモデルだ。ISGは、48Vの電装システムに電気モーターを組み合わせた、いわゆる「マイルドハイブリッド」と呼ばれるテクノロジーで、スムーズな加速とともに変速時も継ぎ目のないスムーズなドライビングが堪能できる。こちらの駆動方式は4WDとなる。
車両本体価格は、CLS220dが799万円、CLS450が1038万円。つまり、オプション装備などを考えなければ、単純な価格差は239万円となる。
では、ふたつのモデルのパワーユニット以外の違いはどこにあるのか? 資料を見比べると、その違いはたった3カ所しかない。
まずひとつは、19インチのAMG製5ツインスポークアルミホイールの色が異なる。CLS220dがマットなグレーなのに対して、CLS450は光沢のあるブラックとなる。もうひとつは「イルミネーテッドステップカバー」。運転席と助手席のドアを開けたときに、ステップ部分にあるMercedes-BenzのロゴがLEDで白く光るのがCLS450だ。
そして3つ目がCLS450に標準装備される「エア・ボディ・コントロール・サスペンション」である。このサスペンションは「Sport」「Sport+」を選べば、スポーツ走行はもちろんこなせるし、荒れた路面やロードクリアランスが気になる場所などで車高を上げる機能を持つ。こうした点が大きな違いである。一方のCLS220dはパッシブ制御がされる「アジリティ・コントロール・サスペンション」が採用されている。
このサスペンションの違いについては、CLS220dで「エクスクルーシブパッケージ」(57万5000円)を選べば、エア・ボディ・コントロール・サスペンション仕様となる。今回、試乗したモデルにもこのオプションが追加されていたため、残念ながらふたつのサスペンションの違いを体感することは叶わなかった。
新型CLSのキャラクターにピッタリと合っている「CLS450」
いよいよ今回試乗する新型CLSと対面した。まず正面から見ると“シャークノーズ”と呼ばれるサメのような大胆な造形に目を奪われるが、ボディには無駄なプレスラインを廃したクリーンな造形が採用され、光りの陰影で色々な表情を見せることが分かる。実車を目の前にすると、なかなか大きいボディであると感じた。
今回の試乗コースは、東京都内から箱根に向けて走り、箱根で車両を入れ替えて再び東京に戻るルートである。高速道路が7割、一般道が3割。往路がCLS220d、復路がCLS450だ。
まずはCLS220dで箱根に向かった。新型CLSの雰囲気を感じながらゆっくりと都内をクルージングすると、かつて取材で長距離をともにした新型Sクラスとの違いを感じた。懐の深い、なんとも気持ちの良い乗り心地のSクラスに対し、CLS220dは全体的に硬質な乗り心地であると思った。ダイナミックセレクトが「Sport」モードだったため、標準設定の「Comfort」に切り換えた。しかし、それでもやはり硬質感が残っているように感じた。
首都高を経由して東名高速を走るが、乗り心地の傾向は変わらなかった。CLSはEクラスをベースとしたプラットフォームを採用しており、この点がSクラスとCLSの乗り味の決定的な違いとなっているのだろうか? 12.3インチの高精細液晶パネルを2枚組み合わせたインテリアを採用し、Sクラスとまったく同じステアリングとなっていることも、乗り味の「違い」を感じた要因だったのかも知れない……。そんなことを考えながら目的地の箱根に着き、復路の相棒となるCLS450に乗り換えた。
その瞬間に……と言ったら大げさだが、箱根の街中を走り始めると、アイドリングからスルスルと加速していくときのフィーリングが素晴らしいことに気づく。信号待ちの停止状態から、アクセルを軽く踏み込んで国道を40~50km/hのスピードで走らせて、再び赤信号で停止する。その繰り返しで、ギヤか変わるときにISGがパワーやトルクを補完する「スムーズな変速」もハッキリと体感できた。
乗り心地も、さきほどまで乗っていたCLS220dとは明らかに違う。Sクラスにも似た、ボディに包み込まれるような乗り味なのだ。資料を見比べても、CLS220dにはエクスクルーシブパッケージの装着によってCLS450と同じエア・ボディ・コントロール・サスペンションとなっている。こうした乗り心地の違いが新車ならではの個体差なのか、それとも車両重量の違いからくるものなのか、理由は分からない。しかし、明らかに違う。ちなみに車両重量は、CLS220dが1860kg(エクスクルーシブパッケージ装着)に対し、CLS450が1970kgでその差は110kgだ(両車ガラススライディングルーフ装着)。
燃費は、カタログ値の比較でCLS220dが18.6km/ℓ、CLS450が11.9km/ℓ。当然のことではあるが、長距離を走れば走るほど、経済性では燃料代が安く済むディーゼルモデルのCLS220dに軍配が上がる。
しかし、結論としては、ぜひ予算が許せばCLS450をおすすめしたい。価格差は200万円以上あるが、その価格以上の価値を感じた。
ディーゼルとガソリン、直4と直6という違いに加え、抜群の仕上がりを見せるISG。久々のメルセデス・ベンツ製 直6エンジンのフィーリングとともに、367ps、500Nmにプラスして、ISGによる16Kw、250Nmのパワーが組み合わされた異次元の走りは、なんとも言えない贅沢で心地よいものだった。高速道路でも一般道でもストレスのない加速とスムーズで段差のまったくない走りは、まさに“極上”の乗り味といえる。
恐らく、CLS220dだけを試乗していたら、ディーゼルエンジンならではの走りの良さが際だっていたのだろうが、CLS450と比較した瞬間に「世代の違い」を感じた。逆に言えば、CLS450に乗っていなければ、新型CLSの魅力をここまで語れなかったのではないか、と思えるほどの仕上がりだった。次世代のデザインとISGの組み合わせは、新型CLSのキャラクターにピッタリと合っているのだ。
ここまで言い切ってしまって良いのか? と思ったが、試乗後に複数の方と話してみると、この感覚は間違いでないことが分かった。これを体感するのは……そう、次はあなたの番である。
SPECIFICATIONS
メルセデス・ベンツCLS220dスポーツ ■ボディサイズ:全長5000×全幅1895×全高1430mm ホイールベース:2940mm ■車両重量:1820kg ■エンジン:直列4気筒DOHCディーゼルターボ 総排気量:1998cc 最高出力:143kW(194ps)/3800rpm 最大トルク:400Nm/1600~2800rpm ■トランスミッション:9速AT ■駆動方式:RWD ■環境性能:燃料消費率18.6km/ℓ ■車両本体価格:799万円
SPECIFICATIONS
メルセデス・ベンツCLS450 4MATIC スポーツ ■ボディサイズ:全長5000×全幅1895×全高1430mm ホイールベース:2940mm ■車両重量:1950kg ■エンジン:直列6気筒DOHCターボ 総排気量:2996cc 最高出力:270kW(367ps)/5500~6100rpm 最大トルク:500Nm/1600~4000rpm ■トランスミッション:9速AT ■駆動方式:AWD ■環境性能:燃料消費率11.9km/ℓ ■車両本体価格:1038万円
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