モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太が2022年に試乗したクルマは、100種類以上。そのなかから選んだ『2022年に印象に残ったクルマ』3台は、ホンダ・シビックe:HEV、ルノー・アルカナ、トヨタ・シエンタだった。それぞれの魅力を解説する。
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■ホンダ・シビックe:HEV「視界に優れて質感も良好。何より走って気持ち良い」
2022年もパワートレインの違いや駆動方式の違いも含めると100種類をゆうに超えるクルマに乗ったが、もっとも印象に残った1台はホンダ・シビックe:HEVだ。
ホンダのe:HEV(イー・エイチ・イー・ブイ)は、エンジン直結モードを持つシリーズパラレルハイブリッド車だ。基本はシリーズである。すなわち、エンジンは発電機能に徹し、タイヤから路面に伝える駆動力はモーターが受け持つ。バッテリー残量が充分にあり、ドライバーの加速要求が大きくない状況では、エンジンは止まったまま。電気自動車(BEV)と同じモーター走行をするので、極めて静かである。
車両重量に対するモーターとバッテリーの出力は充分確保されているので、発進や緩加速では出力を補うためにエンジンを始動させることなく、静かに、気持ち良く加速する。中間加速等ではエンジンが発電のために始動するが、ショックや振動の変化は一切ないし、エンジン音は走行音に紛れて耳に届かない(届きにくい)ので、メーター表示を見でもしない限り、エンジンが始動していることを意識する機会はない。
エンジン直結運転時も同様。全開運転時は発電のためのエンジンがATの変速よろしくステップを刻んで回転の上昇と下降を繰り返すが、ボリュームは控え目だし、振動をともなわない快音の様子から、機械部品が規律正しく動く様が感じられて心地いい。視界の作り方やインテリアの質感の高さ、よく動く脚なども含め、気持ち良く走って燃費がいいハイブリッド車だ。
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■ルノー・アルカナ「快適な走りを重視した独自のハイブリッドシステム」
ルノー・アルカナはE-TECH HYBRID(イー・テック・ハイブリッド)と呼ぶ、ルノーが独自に開発したハイブリッドシステムを搭載する(アルカナの発売後、キャプチャーとルーテシアにもE-TECH HYBRIDが追加された)。
E-TECH HYBRIDは駆動用モーターと、HSG(ハイボルテージ・スターター&ジェネレーター)と呼ぶ、主に発電を受け持つモーターを組み合わせている。エンジンと駆動用モーターがそれぞれ効率の良い領域を使うため、エンジン側に4段、モーターに2段のMTをベースにした変速機構を組み合わせているのが特徴だ。
どちらも車速や運転状況に応じて変速するが、その際、変速時間短縮とダイレクト感を重視し、F1をはじめとするモータースポーツ向けトランスミッションで一般的なドッグクラッチを使っているのが特徴。変速の際のショックを排除するため、現行段と次の段の回転を同期させるためにHSGを使う。
この手のハイブリッドシステムにしてはバッテリー容量が大きく、そのおかげでモーター走行の領域が広いのも印象的だが、ドライバーが要求する加速をアシストするためにエンジンが始動した際の、気分の盛り上がる加速感と小気味良く上下を繰り返すエンジンサウンドのシンクロが真骨頂だ。効率を重視するだけでなく、走りの気持ち良さを重視したシステムを開発してくれたことに拍手を送りたい。
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■トヨタ・シエンタ 「室内は気配りの宝庫。至れり尽くせりのやさしさ設計」
トヨタ・シエンタはノア/ヴォクシーより小さな全長4260mm、かつ5ナンバーサイズのコンパクトなボディに3列シートを収めた「小さいことに価値のある」クルマだ。シートは3列あるが、「3列目は滅多に使われない」ことに着目し、2列目の居住性を高めたのも特徴である。両側スライドドアなので、2列目以降の乗り降りが楽なだけでなく、荷物の出し入れも容易だ。
運転席シートバックにはスマホの充電に便利なUSB端子が2口あるし、その両脇にはスマホの収納に便利なポケットもある。前席は運転席の右前と助手席の左前に500ml入りの紙パックも入るカップホルダーが設置されている。気配りの宝庫だ。1.5リッター直列3気筒エンジンにモーターとバッテリーを組み合わせたハイブリッド車は静かで良く走るが、モーターの力を借りずに1.5リッター直列3気筒エンジンだけの力で走るガソリン車も静かで力強く、驚いた。
なにより驚いたのは「やさしい」乗り味である。路面のうねりに対する追従や突起を乗り越える際の動きがしなやかで心地良い。シエンタは見た目もやさしく、室内は空間そのものがやさしくて居心地が良いが、それにも増して乗り味がやさしい。インテリアショップ(本来ならホームセンターと書くところだが、ちょっと見栄をはって書いてます)で思わず感触のいいクッションに出会い、「これ持って帰りたい!」と感じたのと同じ気分を、シエンタに乗って感じた。それほどに印象に残る1台である。
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みんなのコメント
乗り心地、静粛性など文句なし、一つだけの不満は大きなリヤゲートがパワー式でないことです。