2021年4月、東京・池袋で起きた車両暴走事故。7月15日、検察側は過失運転致死傷罪に問われた飯塚幸三被告(90)に対し、同罪の法定刑の上限にあたる禁錮7年を求刑した。判決は9月2日に言い渡される。
飯塚被告は最終陳述で「アクセルとブレーキを踏み間違えた記憶はまったくない」と答えているが、ここで注目されるのは、車両の作動状況を記録する運転記録装置EDR(イベント・データ・レコーダー)の存在。飯塚被告が運転していたプリウスにもEDRが搭載されており、車両に異常がないことが確認されている。
「魔法の空気ばね」なぜ高級車で採用増? エアサスの進化と実情
このEDRの新車への搭載がついに義務化されることになったのだ。そのEDRの詳細を解説するとともに、2021年6月に一部報道が流れた「燃費記録装置の義務化」についても本当に義務化されるのか、迫ってみたい。
文/岩尾信哉
写真/トヨタ、ベストカーweb編集部、国土交通省
【画像ギャラリー】運転者の操作が一目瞭然!! 運転記録装置EDRの義務化決定と燃費記録装置義務化の動向
■装着が義務化される運転記録装置EDR
東京・池袋での事故車両は2008年式2代目プリウス
2代目プリウスの電子制御シフトの構成図。シフトレバーを操作すると、その操作信号をハイブリッドコンピューターが受信し、その受信信号をもとに各シフトポジションの切替を電気的に行う
トヨタは2021年6月21日、2019年4月に東京・池袋で発生した車両暴走事故に関して、同社初となる異例のコメントを発表、「車両に異常や技術的な問題は認められなかった」とした。今回のトヨタの主張を裏付けるのが、“事故記録装置”のデータの存在だ。
自動車関連の用語のアルファベット3文字で表される技術は数あれど、“EDR”というのはあまり耳にしたことがないという方も多いだろう。
国土交通省は2021年6月29日、四輪車の衝突事故時におけるブレーキやアクセルなど、車両の作動状況を記録する装置「イベント・データ・レコーダー:Event Data Recorder、以下、EDR」について、2022年7月から新車販売車両への搭載をメーカーに義務付ける方針を固めた。
国土交通省は2021年9月下旬に道路運送車両法の関係省令を改正する予定としており、車両の暴走事故が発生した際に車両の不具合や運転操作ミスなど、事故原因の検証が容易となり、収集されたデータの活用により、安全性向上に向けた技術開発が進むことが期待される。
EDR装着義務化の対象となるのは、乗用車とワンボックス(定員10人未満の乗用車と総重量3.5トン以下の貨物車)。当初はモデルチェンジを実施した新型車に適用、2026年5月以降は継続生産車を含むすべての新型車に適用される予定とされる。
【池袋暴走事故】事故記録装置で判明した“踏み間違い”は100%正確!? 誤データ「あり得ない」 認定アナリストの眼
■新車にほぼ装着されているEDR 世界的な規格統一が進む
エアバッグが作動するような事故を記録するEDR。EDRの多くはエアバッグコントロールユニットに収納されている。記録される主なデータは加速度、車両の速度、シートベルトの状態(運転者)、ブレーキのON/OFF、アクセルの開閉状態など(出典:国土交通省)
それでは、すでに日本メーカーの新車のほとんどに装着されているEDRについて、なぜこの時期に法律による装着義務化の方針を決定したのか、国土交通省自動車局に訊いてみた。
これまでの流れを辿ってみると、国土交通省は2008年から、技術指針として日本でのEDRの規格統一を含む技術的な検討作業を10年以上にわたって進めてきた。
いっぽう、国連欧州経済委員会(UN/ECE)に設けられた、世界的な車両規格統一を実施する自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、2021年3月に事故時のデータ記録装置の標準化に関する協定が締結された。
これを受けるかたちで、2021年6月末に開かれた国土交通省自動車局の交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会において「今後5年間の対策の方向性(ポイント)」がとりまとめられ、EDR装着の義務化の方針が定まることになった。
国土交通省は今回のEDR装着義務化の決定によってEDRの日本での標準化を進展させることで、事故時の車両の走行データを、保険や司法による事故分析などに関して広く活用しやすくなることを想定している。
同局担当者によれば「衝突被害軽減ブレーキなどADAS(先進運転支援システム)の進化が進むにつれて、EDRによる作動条件を確認するための規格統一を促すことになります」とコメントしている。
■広く運転データを記録するEDR
ドライバーがアクセルとブレーキを踏み間違えてはいないと主張してもEDRを検証すると嘘がバレる
EDRの機能について説明を加えると、後付けとして車両に装着される映像を記録するドライブレコーダーとは異なり、車両内部、具体的にはステアリングホイールのSRSエアバッグ内にあらかじめ装着され、内蔵されたエアバックの制御ユニットととともに、事故時に作動すべく装備されている。
データとして記録されるのは、車速(衝突速度の変化)、エンジン(モーター)回転数、アクセル/ブレーキ・ペダルの踏み具合、ABSやESPの作動状況、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の発動―などの状況を記録。
ブレーキオイル圧力、加速度、ヨーレイト、シートベルト着用の有無、ステアリングの操作角度など、データの収集は広範囲に亘る。
今回のEDRに関する改正省令では、100分の1秒ごとに速度の変化が確認できることや、SRSエアバッグが作動した事故などについて、少なくとも2回分が走行データとして保存可能であることを仕様要件とする。
ちなみにトヨタでは2012年以降のほぼすべての新型車にEDRが装着され、最新仕様では10回分の事故データを記録可能としている。
ここで国土交通省がEDRの利用について、2021年6月に開かれた検討会の資料のなかで示さえた方向性について一部抜粋しておく。
ドライブレコーダーなどの走行記録装置について「交通事故前後等の情報を保存する車載記録装置が広く普及している」としたうえで、「これら装置に記録された事故データは、車両安全対策における交通事故分析への活用に加え、保険料算出や交通事故に関する民事裁判などの責任関係の明確化や交通事故等の捜査への活用など、多岐にわたって利用価値があるものである」とされ、装着義務化のメリットの大きさを示している。
さらに「エビデンスに基づく車両安全対策の推進」として、ドライブレコーダーについて「あおり運転等の抑止効果や事故分析を通じた車両安全対策への活用などのメリットを踏まえ、普及拡大を図る必要がある」としている。
■燃費記録装置の義務化は?
すでにクルマには正確な燃費計がついているのだが……
最後に一部メディアにおいて、2021年6月末にも明らかにされると報道された「燃費記録装置の義務化」について触れておこう。一時は計測機器会社の株価に影響を与えたほどの話題だったので、目にした方も多いはずだ。
内容としては、自動車の実際の走行時の燃費(実燃費)を正確に把握するために「国土交通省は燃費を記録する装置を新車に搭載するよう、メーカーに義務づける方針を固めた」というものだった。
「早ければ2023年10月以降の新車から順次適用する方針」と法律の施行時期にまで言及していたのは先走った報道だったといえる。
レポートの内容としては冷静な見方も含まれており、「データの収集・公表には個人情報の問題があるうえ、データをどう比較可能なものにするかなどのハードルも残り、今後検討を進める。」というのは現状把握としては間違いないだろう。
国土交通省が燃費記録装置の義務化を検討しているとすれば、課題となるのは車両から得られた実走行時の燃費データを収集する方法について、部品/システムの共通化など技術上の課題に加え、プライバシーの保護やセキュリティの確保を含めた法律上の問題や従来のいわゆる「カタログ燃費」をどう取り扱うのかなど、各自動車メーカーと調整すべき要素は数多く存在することは容易に想像できる。
実燃費とモード燃費の差はこれまで議論され続けてきたテーマであることは間違いないが、まずはハード面での調整が不可欠となるはず。
前述の世界的な規格統一との関連性などを含め、WLTC燃費とどのように“折り合い”をつけるのかなど、今後の自動車メーカーがどのように取り組みを進めていくのか注目される。
【画像ギャラリー】運転者の操作が一目瞭然!! 運転記録装置EDRの義務化決定と燃費記録装置義務化の動向
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
「すごい多重事故…」 関越道で「トラックなど3台が衝突」発生! 2車線が一時通行規制で「通過時間70分」の大渋滞 圏央道も混雑
“45年ぶり”マツダ「サバンナGT」復活!? まさかの「オープン仕様」&斬新“レトロ顔”がサイコー!ワイドボディも魅力の「RXカブリオレ」とは?
「運転席の横に“クルマが踊っている”スイッチがありますが、押したら滑りますか?」 謎のスイッチの意味は? 知らない「使い方」とは
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ついにその瞬間がやってきた!!!!! シビックベースの70年代風GTカー[ミツオカM55]が限定100台800万円で販売!!!!! 即売必至か?
「前を走るパトカー」“追い越し”て大丈夫? 抜かす派VS抜かない派で賛否両論!? 「やっちゃダメ」な要注意項目とは
トヨタ「和製スーパーカー」がスゴイ! 約500馬力「直6」風エンジン搭載&“スケスケ”な超ロングノーズ仕様! ワイドでカッコイイ「FT-1」とは?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
義務化義務化と自動車メーカーに頼りすぎてる感じがある。国は自動車メーカーに命令してるだけじゃない?