2024年シーズンのWRCマニュファクチャラータイトルを最終戦ラリージャパンで獲得したトヨタのヤリ-マティ・ラトバラ代表は、このラリーの大半でチームのために“絶対完走”が至上命題だった勝田貴元についてマネジメント能力を見ていたと説明した。
今年は結果になかなか繋がらない厳しいシーズンが続いたため、ラリーチリの欠場を経て前戦セントラルヨーロッパラリーで戦線復帰を果たした勝田。心機一転望んだ1戦ではステージ優勝2回で総合4位入賞を果たした。
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そして勝田は、自身の地元である日本・愛知県で開催された思い入れの強い最終戦ラリージャパンで、ヒョンデと僅差でマニュファクチャラーズタイトルを争うトヨタのため、チームプレーに徹することとなった。
マニュファクチャラーズポイントは各メーカーともラリーを完走した上位2台のみが配点の対象となるため、3台で臨むトヨタとしては、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組とセバスチャン・オジェ/ヴァンサン・ランデ組にもしもの事態が発生した場合に備えて、勝田が確実にラリーを走り切る役目を負うこととなった。
そのため、勝田は戦略に沿ってラリー序盤からスピードを抑えた走りに徹した。全開アタックの命が下ったのは、ボーナスポイントが与えられるパワーステージを含む最終2ステージを前にしたサービスだった。
最終パワーステージで勝田は、攻めたセットアップが故にタイムを失ったもののヒョンデの1台を上回り、オジェがステージ優勝を果たし5ポイントを手中に収めたことで、トヨタがわずか3ポイント差でマニュファクチャラーズタイトル防衛に成功した。
ラリージャパンに向けたレッキを前に絶対完走を目指すように伝えられたという勝田は「1番結果を出したいラリーでしたし複雑な思いはもちろんありましたが、色々聞いていくと自分を思ってくれている部分が理解できました」と語り、「チームが1番必要としてくれている仕事をすると決めて、自分の思いを捨ててきました」と明かしていた。
そして抑えるべきところで抑え、攻めるべきところで攻めた勝田だったが、「こんな精神状態で走ったことはなかった」という。しかし、これまでも勝田のスピードを高く評価していたラトバラ代表は、そのマネジメント能力を見るためにプレッシャーを与えていたと説明した。
「タカにはかなりのプレッシャーを与えてきた。それは本当だ」
ラリージャパンを終えてラトバラ代表はそう語った。
「一方で、我々はタカがこの状況をマネジメントできるかどうかを見る必要もあった。このスポーツではプレッシャーに対応していく必要がある」
「今年、タカのスピードが驚くべきモノだったというところを観てきた。しかし結局のところ、ラリーはスタートしてフィニッシュする必要がある。だから彼には指示に従い、コントロールし続けるよう伝えた」
「しかし最後のサービスで彼には『自由にやってこい。ここまで仕事をしてくれたから、アタックしてこい。ミスをしても文句は言わない。君のアタックが必要だ』と伝えた。そして、彼はステージで本当に素晴らしい仕事をした」
「しかしこれはセントラルヨーロッパラリーやここ日本で彼がやってきた取り組みであり、マニュファクチャラーズタイトル争いで結果を残したい時に必要なサポートだ。しかし表彰台に上がるためには、こうしたパフォーマンスが必要になるのだ」
なおラトバラ代表は、マニュファクチャラータイトルの行方を決定付けたラリージャパン最終日が2021年にトヨタのチーム代表に就任して以来“最も難しい1日”だったと振り返った。
「素晴らしい物語だ。こんな話は聞いたことがない」とラトバラ代表は言う。
「シーズンを通してこれだけ接近して戦い、最後のステージ、最後の1mまで戦った。チーム代表としてのキャリアの中で最も難しい1日だった」
「コーナーが映るたびに我々のドライバーがコースオフするんじゃないかと感じて、観ていて神経が本当にすり減った。常に『うわっ!』『おおっ!』という感じで、常に恐怖を感じていたよ。でも結果的に問題なく、彼らはとても良い仕事をしてくれた」
「でももちろん、最終日の朝を迎えた時は可能性がかなり高いとは考えていなかった。しかし我々は最後の最後まで戦い抜くと決意を固めた」
「それからオット(タナク/ヒョンデ)がコースオフして、状況が変わる可能性が広がった。運をみすみす手放してはいけないんだ」
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