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AMGらしさの難しさ メルセデスAMG EQE 53へ試乗 686psと516kmのBEVサルーン

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AMGらしさの難しさ メルセデスAMG EQE 53へ試乗 686psと516kmのBEVサルーン

最高出力はオプションで686ps

メルセデスAMGは、バッテリーEV(BEV)版のSLSを2014年に生産している。ロングノーズのガルウイング・ボディに、748psの最高出力と193kmの航続距離を与え、当時としては印象的な内容だった。

【画像】メルセデスAMGが手掛けるBEV EQE 53とEQS 53 欧米の競合サルーンと比較 全104枚

とはいえ、英国価格は35万5000ポンドと超高額。生産台数は、ひと握りに限られた。

それから8年後の2022年、メルセデスAMGは新しいBEVのサルーンを発売した。今回試乗した、EQE 53だ。最高出力はノーマルで625ps。AMGダイナミック・プラスというオプションパッケージを追加すれば、686psへ増強できる。

航続距離は最長516km。大人4名が快適に座れる車内空間と、不足ない荷室も備わっている。英国価格はまだ未定だそうだが、11万5000ポンド(約1920万円)前後になる見込みだという。

いよいよメルセデスAMGも本格的にBEVへ取り組むのか、と感慨深い一方で、少しの疑問も抱かないわけではない。馬力は確かに素晴らしいが、メルセデス・ベンツのチューニング部門は、BEVをどう料理するのだろうか。

通常モデルとの差別化も、簡単ではないように思う。EQE 53には、メルセデス・ベンツEQE 350+と同じ、90.6kWhの駆動用バッテリーを搭載している。1つクラスが上になる、メルセデスAMG EQS 53も存在している。

アクセルを傾けた瞬間に駆動モーターが反応

明らかな違いとなるのが、駆動用モーター。内部のコイル構造が異なり、より多くの電流を処理できるAMG専用設計のものが積まれている。その結果、EQE 53の0-100km/h加速は3.4秒がうたわれる。

ローンチコントロールが追加されるダイナミック・プラスなら、3.2秒へ短縮される。このBEVのラグジュアリー・サルーンは、メルセデスAMGが手掛けたモデルのなかで、最速の加速力を備える1台として数えられる。

実際、運転してみるとEQE 53には舌を巻く。助手席の同乗者だけでなく、ドライバーも思わず唸ってしまうほど。

最高出力は、ドライブモードによって制限を受ける。ダイナミック・モードで312ps、コンフォート・モードで500ps、スポーツ・モードで563psといった具合だ。625psの全力を引き出せるのは、スポーツ+モードだけとなる。

さらに、ダイナミック・プラスの686psを召喚できるのは、レーススタート・モードを選んだローンチコントロールの加速時のみ。とはいえ、モードを問わずとても速いと感じるはず。

この速いという感覚を生んでいる理由が、レスポンスの鋭さ。パワフルな他のBEVと同様に、アクセルペダルを傾けた瞬間、EQE 53の駆動用モーターが反応する。加速Gの調整スイッチのようでもある。

内燃エンジンとは異なり、駆動用モーター内部に機械的な慣性は殆どない。トランスミッションの変速も存在しない。瞬発力でいえば、従来のどんなスーパーカーを持ってきても敵わないだろう。

エアサスによる印象的なまでの姿勢制御

更に、標準装備のエアサスペンションが、印象的なまでの姿勢制御を実現している。車重は2600kgと驚くほどだが、穏やかな高速道路のクルージングから、意欲的に駆け抜けるワインディングまで、見事に処理してくれる。

重量のかさむ駆動用バッテリーが、シャシーの底部に並べられていることで、コーナリング時には重心の低さを実感する。EQE 53は、スルスルとノーズの向きを変えていく。

タイトコーナーを攻め込むとボディロールは生じるが、それも限定的。AMGの技術者によれば、このシャシーには必要ないため、アクティブ・アンチロール機能は搭載されていないという。

急な旋回を求めると、EQEの車重を感じることもある。カーブの続く道を積極的に走らせていると、重いクルマだということを隠しきれない。

スタビリティ・コントロールが若干緩くなるスポーツ・モードへ切り替えると、四輪駆動システムはリアタイヤ主軸でトルクを与えるように変化。道幅に余裕があれば、引き締められたシャシーの能力を目覚めさせることもできるだろう。

強い負荷がサスペンションへ掛かるような場面でも、乗り心地が乱れることはない。日常的な条件下の、コンフォート・モードでの洗練性も秀逸といえる。

メルセデスAMGは、オプションとしてカーボンセラミック・ブレーキを用意している。回生ブレーキが電気へ変換できる運動エネルギーは、最大260kWということだが、加速力を考えれば制動力は強いに越したことはないかもしれない。

BEVの技術的には非常に見事

高速ラグジュアリー・サルーンとして、同社がAMGたらしめる要素の1つだと主張するのが、人工的にデザインされたサウンド。スピーカーを介して、車内と車外へ走行音などを発する機能が搭載されている。

EQE 53の走行速度やアクセルペダルの角度などに応じて、音質やボリュームが変化する。静止時も、内燃エンジンのアイドリングのように、脈動する音が聞こえてくる。

エンジン音を模したものではなく、ジェットエンジンやダース・ベイダーのライトセーバーが発するノイズに近い。これが効果的だと感じるかどうかは、人それぞれだ。

内燃エンジンの音は、多少デジタル的に増強されていても、さほど不快に感じることはない。一方で完全に人工的な音には、リアルさが足りないというか、実態性が伴わないように思う。ハードコアなEQE感は演出できていたが、AMGらしいといえるだろうか。

BEVに対し、走りが静かで上質過ぎると不平をいうのは、的外れだとは思う。慣れの問題もあるだろう。しかし、サウンドやヴァイブレーションは、運転を楽しませる要素として重要だということも、事実ではある。

今後、BEVが解決すべき課題といえる。優れた頭脳を持つ技術者が、素晴らしい答えを導き出してくれることを期待したい。

メルセデスAMGが手掛けたEQE 53は、BEVの技術的には非常に見事だといっていい。その反面、身体の内面にまで響いてくるような、従来のAMGとは異なることも事実。動力性能で劣る、EQE 43も確かめてみたいところだ。

メルセデスAMG EQE 53 4マティック+(欧州仕様)のスペック

英国価格:11万5000ポンド(約1920万円)
全長:4946mm(標準EQE)
全幅:1961mm(標準EQE)
全高:1512mm(標準EQE)
最高速度:220km/h/239km/h(AMGダイナミック・プラス)
0-100km/h加速:3.4秒/3.2秒(AMGダイナミック・プラス)
航続距離:442-516km
電費:4.8-5.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2600kg
パワートレイン:ツイン同期モーター
バッテリー:90.6kWhリチウムイオン(実容量)
最高出力:625ps/686ps(AMGダイナミック・プラス)
最大トルク: 96.7kg-m/101.7kg-m(AMGダイナミック・プラス)
ギアボックス:シングルスピード・オートマティック

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みんなのコメント

2件
  • 良いね。
    出たらたぶん買う。
    ただ、もうちょっと車幅を小さくしてくれたら良いのになあ。
    G63に乗ってるけど、駐車場で車幅が結構厳しいんだよね。
  • 芸能人はこういうのを大量に購入して、充電ヵ所大量に増やしてください。 八ヶ岳周辺、尖閣諸島、北方領土全て、佐多岬、与那国島、小笠原諸島、初島、佐渡島、利尻島、長崎、九州全域、四国全域、中国地方全域、などで充電場所を増やしてください。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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