マツダロータリーを振り返るシリーズの第2回は、13B型ロータリーに迫る。2代目ルーチェに搭載されてデビューしたこのエンジンは、12A型の後継エンジン。
しかし、なぜ13Aではなく13Bになったのかは、ぜひ本文を読んでいただきたい。
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そしてRX-7の登場により、13Bはさらなる進化を遂げるのだ!
文/鈴木直也、写真/Mazda、ベストカー編集部
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■オイルショックに翻弄されるロータリーエンジン
1973年に13B型ロータリーエンジンを搭載して登場した2代目ルーチェ。丸目四灯のファストバックが時代を感じさせる
第2世代マツダREの主力となる13B型REは、1973年12月に2代目ルーチェグランツーリスモに搭載されてデビューする。
12A型REのロータ厚みをさらに10mm拡大して排気量を654cc×2に拡大。最初期モデルでは135ps/6000rpm、19kgm/4000rpmというスペックで、中低速トルク重視型の傾向をさらに強めている。
ちなみに、形式名称が13A型ではなく13B型になったのは、1969~1970年に少量が生産されたルーチェロータリークーペ用として、すでに13A型が存在していたからだ。
10A型をベースに、ローター厚さはそのまま偏心率の方を大きくして排気量を拡大したのが13A型。655cc×2の排気量は13Bとほとんど同じだが、共通部品のない独自バリエーションで、生産期間1年足らずと短命に終わっている。
さて、その13Bだが、石油ショックの大波をまともにかぶる最悪のタイミングでデビューしたのは痛かった。
しかも、2代目ルーチェは北米向けを狙った大柄なクーペ。マーケティング的にはすべてが裏目に出てしまった不運なクルマで、予想どおりというべきか販売は低迷をきわめ、街中リッター3kmといった燃費伝説だけを残してモデルライフを終えてしまう。
この13B型REは、その後2代目コスモや3代目ルーチェに継承されて生産が続くが、石油ショック後の市場環境は明らかにアウェイ。
レシプロのプレミアムエンジンを持たないマツダにとって、上級グレード用パワーユニットはREしか選択肢がなかったのだが、それがREにふさわしい使われ方だったかといえば微妙。石油ショック以降の10年は、REにとって雌伏の時期だったといえるだろう。
■低迷期の地道な改良があの名車を生んだ
レシプロエンジン併用を前提として設計された3代目ルーチェ。広いエンジンルームはロータリーエンジンにとってはやや大きすぎるスペースだった
ただ、マツダが立派だったのは、この低迷期にも地道なRE改良を続けたこと。ガスシール性を向上させるためのアペックスシールの改良や、“スーパーインジェクション"と名付けられた吸気脈動利用の共鳴過給、可変吸気ポートでトルク特性を向上させた6PI(これは12A型のみ)など。
電子制御燃料噴射システムの採用と相まって、さまざまな技術トライが行われている。そして、これらがのちにRE復活をアシストする技術要素となる。
REにとっての逆風が続く70年代中盤、マツダ社内では「RE本来の持ち味とポテンシャルを活かすクルマはどうあるべきか?」という議論が続いていたが、その結論は「もういちど原点に戻って考える」というものだったという。
REは高性能が大きな魅力だが、もうひとつ小型軽量というメリットも見逃せない。2代目コスモや、3代目ルーチェのエンジンルームは、レシプロエンジン併用を前提としているため、REにとってはスペース過剰。はたして、そこにREを搭載する意味があるのかという疑問が顕在化してくる。
そこから導き出される答えは、REは軽量・コンパクト・ハイパワーを狙ったクルマにこそ搭載すべし、というもの。そのコンセプトから生まれるのが、1978年登場の初代RX-7(SA22C)なのである。
■REの長所である『コンパクトなパッケージング』が活かされた
軽量、コンパクト、ハイパワーというロータリーエンジンの長所を凝縮したような車として誕生した初代RX-7
初代RX-7のエンジンルームを覗いてみるとわかるが、12A型REは前車軸より後ろ、いわゆるフロントミッドシップに搭載されている。低いボンネット内にここまでコンパクトにエンジンを収めるのは、レシプロではとても不可能。まさにREならではのパッケージングで、これこそがREの魅力なのだ。
初代RX-7に搭載されたエンジンは、最初期のサーマルリアクター型12Aから、希薄燃焼型12A、6PI型12Aへと燃費向上のための進化を続けてゆくのだが、なんといっても最大のインパクトは1983年デビューの12A型ターボの登場だった。
12A型ターボそのものは、約1年前に3代目コスモに搭載されてデビューしているが、軽量コンパクトな初代RX-7に与えられた165ps/6500rpm、23.0kgm/4000rpmのパフォーマンスは衝撃的。
いまでは考えられないが、発表当時マツダ主催の最高速チャレンジ試乗会(!)が谷田部テストコースで実施され、ぼく自身も実速220km/hオーバーを体験している。REはスポーツカー用高性能エンジンとして、まさに劇的な復活を遂げたのだった。
初代RX-7の成功によって、これ以降REの進むべき道がほぼ決まったといっていい。
1980年代前半の時点で、マツダのRE搭載車はRX-7、3代目コスモ、4代目ルーチェの3車種だったが、RX-7以外はレシプロエンジンとの併用モデル。
ソアラの2.7Lツインカムやセドリックのターボなど、ライバルのレシプロ高性能エンジンが充実してくると、レシプロ併用モデルではREの販売比率がどんどん低下してしまうのだ。
やはり、REはRE専用スポーツカーに使わないとその魅力が発揮できない。マツダが腹を括ったのがこの時期だったといえる。
それからのREは13B一本に絞ってスポーツカー用としてのポテンシャルに磨きをかけることに専念する。
■RX-7の進化と共に歩んだRE黄金期
1985年登場の2代目RX-7。新たにインタークーラーを装備してパワーを向上させている
RX-7は1985年に2代目FC3S型にモデルチェンジするが、搭載エンジンは13B型ターボに一本化(海外ではNA仕様も販売)。しかも、新たにインタークーラーを装備して185ps/6500rpm、25kgm/3500rpmにパワーアップしている。
2代目RX-7の13B型ターボはその後も改良を続け、後期型では205ps、限定モデルのアンフィニ仕様では最終的に215pに到達。馬力競争が盛んだったバブル期らしく、REもその戦いに参戦して気を吐いていたわけだ。
この13B型は1991年10月デビューの3代目RX-7(FD3S)ではさらに大規模な改良を実施。13B-REW型という独自のエンジン型式名が与えられている。
最大の特徴はシーケンシャルツインターボという新しい過給システム。ターボチャージャーに流れ込む排ガスは、低負荷領域ではプライマリ側ターボのみに導入されてレスポンスを向上。
アクセル開度が大きくなってくるとバイパス弁が開いてセカンダリ側ターボも働き出し、最大負荷領域でも十分な過給能力を確保する。バブル期らしく凝ったメカニズムが採用されていたのだ。
13B-REW型のパフォーマンスは、初期型の255ps/6500rpm、30.0kgm/5000rpmから順次改良を続け、最終モデルでは280ps/6500rpm、32.0kgm/5000rpmと当時の馬力自主規制リミットまで到達。
販売終了から20年近く経った現在でも、最後のロータリーターボとして多くのファンが憧れる名機といえるだろう。
RX-8、そして発電用ロータリーへ ロータリーエンジンの歴史を振り返る【最終回】
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