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勝者ハムリンに大ブーイング。ラーソンとの遺恨接触バトルの末に通算50勝到達/NASCAR第21戦

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勝者ハムリンに大ブーイング。ラーソンとの遺恨接触バトルの末に通算50勝到達/NASCAR第21戦

 例年トヨタ陣営が猛威を振るうペンシルバニア州ポコノ・レースウェイで開催された2023年NASCARカップシリーズ第21戦『ハイポイント・ドットコム400』は、残り7周でカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)とのタイトなサイド・バイ・サイドの末に、ウォールに弾かれたシボレーが報復行為に及ぶ“遺恨バトル”の結果、デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が今季2勝目を挙げてキャリア通算50勝に到達。

 自身が熱烈ラブコールで陣営内に引き入れたタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)と、僚友マーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)を引き連れてのコーション・フィニッシュにより、トヨタにNASCARでの3シリーズ合計600勝目をもたらしたハムリンだったが、ポコノの観衆は不満の声を挙げ、42歳のウイナーに大ブーイングを贈るエンディングとなった。

豪州RSCからNASCARカップへの“越境”加速。8月のIMSではSVG再戦、RCRからコステッキもデビューへ

 19号車をドライブするトゥルーエクスJr.が301周中254周をリードし、圧勝を飾った第20戦『クレヨン301』を終え、舞台は引き続きトヨタ勢が得意とする超高速“トライオーバル”での勝負に。

 そのレースウイークの週末を前に、8月11~13日にインディアナポリス(IMS)のロードコースで開催される第24戦『ベライゾン200アット・ザ・ブリックヤード』に向けては、すでに参戦表明済みだった小林可夢偉(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)の67号車に加えて、RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップ王者シェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)の再戦も決定。

 7月初旬のシカゴ市街地でカップ戦60年ぶりのデビューウインを飾り、世界に衝撃を与えた3冠王者SVGが、ふたたびトラックハウス・レーシングの国際ゲスト招聘枠『プロジェクト91』の91号車をドライブすることが発表された。

 さらにオーストラリアの同シリーズからは、現在ランキング2位でタイトル戦線に名乗りを挙げるブロディ・コステッキ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)の初参戦も決定。かつて下部シリーズで腕を磨いた若手有望株のカップデビューが決まるなど、南半球からの賑やかな話題が相次いだ。

 一方のレギュラー勢でも動きがあり、来季2024年に向けてはジャスティン・ヘイリー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)の移籍もアナウンスされており、新たにリック・ウェア・レーシング(RWR)との複数年契約を結び、心機一転のフォード陣営で戦うことが決まっている。

 こうして始まった週末は、やはりトヨタ・カムリが走り始めのプラクティスからスピードを披露し、レディックが最速タイムを記録。そこに立ちはだかったのはシボレーの雄ヘンドリック・モータースポーツ(HMS)のカマロZL1で、予選では「先週に失意のレースを終えたあと、水曜に(ポコノへ)現地入りして車両の組み立てやクルーとのミーティングに集中した」と語るウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、ポコノでの10戦中2回目、今季3度目のポールポジションを獲得した。

「僕らのチーム全員が費やした努力に感謝している。ここはまさにスピードレーストラックで、現地に来るのは緊張したんだ。トヨタは本当に強かったと感じているが、僕も少しずつ目標に向かって進んでいるし、望む場所に到達している」と手応えを語ったバイロン。

■決勝は11回のイエローで荒れ模様。ラーソンがハムリンに“体当たり”
 しかし明けた日曜の決勝はポコノには珍しく、マルチウェイバトルが多発する荒れた展開となり、ポールシッターはこの日最多となる60周をリードしたにも関わらず、終盤にはレギュラーシーズンの首位を争うトゥルーエクスJr.に同調して4本のフレッシュタイヤを履いたものの、最終的に14位に沈む結果となってしまう。

 レース全体で11回のイエローが発生したうち、ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が制したステージ1以降、リスタートでは3回連続のコーションとなり、これらのインシデントが複数のドライバーのプレーオフ進出状況にも影響を与えることに。

 ステージブレイク後の再開では、中段で5ワイドになったロガーノ自身とダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシング・チーム/シボレー・カマロ)が弾き出され、接触の相手だったマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)はレース続行が可能だったものの、スアレスの99号車はフロントを大破。残り5戦でランキング18位に後退し、戦前はわずか1点差だった16位マクドウェルとの差は23点へと広がってしまった。

「結局のところ、それは僕らのせいだ。あんな奴らとあそこに戻るべきではないよ……僕らはコントロールできるものしかコントロールできないんだから」と、肩を落としたスアレス。

 続く2回目のリスタートではオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、同3回目では最前列に並んでいたラーソンがまさかのスピンを喫し、その直後には2021年チャンピオンを背後から“押して”いた疑惑のあるクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)も、トンネルターンで単独のスピンオフを演じるなどカオスな状況に。

 最終ステージではチェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)や、残り12周で3番手にいたアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)も戦列を去り、この48号車のクラッシュに関しては、背後にいたハムリンに疑惑の目が向けられたものの「シボレーには一切ヒットしていないし、触っていない相手をどうこうすることはできない」と、ハムリン自身がダーティなドライブの思惑はないと否定する事態に。

 残り55周時点でケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)ともボディサイドを張り合わせるような際どい勝負を演じていたハムリンは、ここからラスト10周で優勝戦線に浮上していく。

 すると移籍発表を終えたばかりのヘイリーが残り7周でハードコンタクトを喫し、再度のコーションに。この時点でターン1出口で並んでいたハムリンとステージ2覇者のラーソンは、コンタクトの末にアウト側の5号車カマロZL1が壁に押しやられる格好となり、行き場を失いウォールにヒット。直後のイエロー中には“怒り心頭”のラーソンが、ハムリンのカムリに幅寄せし“体当たり”を食らわせる一幕を演じる。

 最終的に20位でレースを終えたラーソンは、プライベートでは友好関係にあるハムリンに対し「僕はこれまでのキャリアを通して、彼によって良いフィニッシュを何度も犠牲にしてきた」と、憤りを露わにした。

■最後のヒットを正当化するラーソンと「ふたりとも自滅」と主張するハムリン
「まず、僕のチームを本当に誇りに思うし、チームが勝利を目指してレースできる位置に付けてくれたんだ」と、開口一番にクルーを労うコメントを発したラーソン。

「レースの早い段階でスピンしてしまい、その後はマシンが以前とまったく同じ状態にはならなかったが、我々はそこに到達するために非常にうまく戦略を実行した。だからこそ……ただ残念だ」

「そう、僕らはともに友人だ。だからこそ事態は厄介になる。彼はいつも正しいし、デニーがつねに礼儀正しいことを僕ら友人たちは皆知っている。その友情をトラックの外で汚すつもりはないよ。でも僕は怒っているし、怒るべきだと思う。レーストラックで自分がしたことについて、彼に謝る必要があったことは一度もない」と、最後の“ヒット”は正当化したラーソン。

 一方、激しいブーイングのなかでヴィクトリーレーンに進んだハムリンも、その大観衆の盛大なブーイングに「大好きさ、大好きだよ」と応じながら、ボウマンとの疑惑にも触れつつ「ふたりとも自滅だった」と、故意の接触はなかったと主張した。

「48号車(ボウマン)を押してなどいないし、レーンは(5号車に対して)残していた。彼(ラーソン)は最初からコーナーを外れていて、明らかに右側のタイヤがクリーンではなかった」と状況を説明したハムリン。

「ふたたびアクセルを踏み込んだとき、そのポジションでは全開にしてフェンスに当てるか、またはリフトしてレースを続行するかという選択肢がある。それらは彼らが行った選択だ。どちらにも当らなかったし、彼らに触れてなどいないよ」

 併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第19戦『エクスプローラ・ザ・ポコノ・マウンテン225』は、レース序盤のピットロード速度違反ペナルティを生き延び、燃料戦略に賭けた末に延長戦でのサイド・バイ・サイドも制したオースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、長らく続いた未勝利の季節を抜け出す今季4勝目をマーク。

 同じくポコノで併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第15戦『CRCブレークリーン150』は、最終ラップで逆転劇を演じたカイル・ブッシュ(カイル・ブッシュ・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)が、今季5戦目にして2度目のトップチェッカーを達成。自身の率いるKBMも通算100勝の節目となった。

 また、服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、シーズン2度目の出走となったクリストファー・ベルを招聘し、61号車『群馬トヨペット・トヨタ・タンドラ』も走らせると、カップ戦レギュラーは堂々たる走りで僅差の4位フィニッシュを記録。同じく2台体制で挑んだレギュラーの16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRDプロ)も、ダメージを受けながらも12位で完走を果たしている。

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