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【ヒットの法則445】アウディとポルシェの“スポーツ”に対する考え方はどこがどう異なるのか!?

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【ヒットの法則445】アウディとポルシェの“スポーツ”に対する考え方はどこがどう異なるのか!?

アウディとポルシェは同じフォルクスワーゲングループに属するが、メカニズムに大きな違いがある。そこに共通性、独自性はないのか、それぞれの走りの資質はどのように実現されているのか。Motor Magazine誌では、アウディA5 3.2FSIクワトロをメインに、アウディTTクーペ3.2クワトロ、ポルシェ911カレラ4S、ポルシェボクスターSをまじえて試乗を行っている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年7月号より)

その気になれば超ホット、普段はクールなアウディ
自動車の世界でスポーツモデルが高級車の条件となって久しい。それと同時に、ブランド性が高まってゆく。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

そういったことは個々のモデルラインアップだけではなく、もっと大きな枠組みの中でも起ころうとしている。たとえば、ポルシェとフォルクスワーゲングループ、である。

ゴールデンウイークの狭間、気持ちよく晴れ上がった平日、私はひとり、ブルーメタリックのアウディA5を駆って、東北道を北上していた。午後の、それもすでに15時を過ぎていたこともあってか、下りの東北道は3車線のコーナーをアウト・イン・アウトでも走れそうなほど、ガラ空きだった。それでも十秒に一度くらいは他車と遭遇する。前車に追いつくこともあれば、後車に煽られることもある。

そんな微量の流れの中を、できるだけブレーキを踏むことなく走り続けることができそうな速度帯を見つけてクルーズコントロールをセットし、左端の走行車線を一定速で流す。

この季節を待ちわびていた分だけ北の緑の方が鮮やかなのだろう。グリーンの様々なグラデーションが瑞々しく立体的に見えてくる。原稿に疲れた目が元気を取り戻すかのようだ。これぞグランドツーリングの気持ち良さ、ドライブ好きにとっては立派な癒し系だよなあ、とひとりで満足しながら、ふとあることに気がついた。

アウディというブランドの、特に6気筒以上の高性能エンジン搭載モデルには、こんな落ち着いたクルージングがよく似合う。青いプロペラやシルバーの星じゃ、こうはいかない。乗っている自分が、自意識が、それを許さない。ついつい頑張って走っているぞ感を見せつけたくなる。

いや、もちろんアウディだってガンガンに走ることは得意だ。クワトロモデルならば、天気を選ばず無敵に走ってくれる。シングルフレームグリルを手に入れてからは、押し出しも相当に派手に、立派になった。それこそ、代表的なドイツ車ブランドのように、そこのけそこのけと追い越し車線をかっ飛ぶことだって可能だ。

アウディが、例えばBMWやメルセデス・ベンツのように日本で台数を稼ぎたいのであれば、その技術力を前面に打ち出して、ヨーロッパのユーザーが実践しているように、イケイケどんどんに走る、という強面なイメージをもっと植えつけた方がいいと思う。その気になれば超ホットになれるが、普通はクールな、そんなブランドになる資質をアウディは十分に持っている。

アウディジャパンもそれはわかっているのだろうが、BMWやメルセデス・ベンツと同じ道は歩まないということだろう。それもあって、現在の日本市場におけるアウディはといえば、ブランドの立ち位置がまだ明確でないように見える。だからこそ、A5クワトロのようにスポーティなトップグレードに乗っていても(おそらくS5でも同じ気分になるはずだ)、こうやって心たおやかに、誰にも邪魔されることなく、ゆったりまったりと走ることができる。

ただゆっくり走るだけなら日本車にだってできそうだが、クルージングにも心地よいものとそうでないのがある。性能のレベルが高く、余裕があって初めて、本当の気持ち良さが出るものだ。

とにかく、今のアウディなら、たとえスーパーカーのR8であろうと、ドライブ最中の「全体の気分」を積極的に楽しむことができる。そう、A5のように格好のいい、そしていかにも速く走れそうな(もちろん、走れる)2ドアモデルならなおさらだ。

ただ単に運転を楽しむのでもなく、かといって過ぎる景色を楽しむわけでもない。もちろん目的は会話でもなければ、音楽などのエンターテイメントでもない。それらをすべてひっくるめて、格好いいクルマを流しているというドライブの「全体」。手足には機械の動きがわずかに、けれども確実に伝わり、意識はドライブに集中しながらも、視覚の隅で景色を何となく楽しんでいる。

鼻歌が自然と出る気分の良さ。アウディの、特に高性能エンジンを積んだスポーティモデルには、そういう楽しみ方もあると思う。

ポルシェに乗って感じるスポーツへの純粋な心
目的地である会津・磐梯山のワインディングで待っていたのは、オレンジも鮮やかなアウディTTのV6クワトロSラインと、2台のポルシェだった。

2台のポルシェとは、即ち濃緑の911カレラ4Sと真っ赤なボクスターS。この4台のドライブトレーン構成は見事に異なる。今回の企画では、今それらがどのような存在として成立しているのか、それが重要なはずだ。

さすがだと思ったのは、やはり911カレラ4Sだ。このクルマの「芯」には一点の曇りもなく、「自家用スポーツ」の高みを志す純粋な念がある。それは歴史性を備えているからでもあるが、と言うことはつまり、現時代性を踏まえたものであるとも言うことができる。997型の911で言えば、今の時代に必須とされるものとは、安定であり、信頼であり、乗り心地であり、ステータス性ではないだろうか。

それとは裏腹に、911の本質であると思われる、昂揚と興奮と刺激とスポーツ性にも、決してぬかりがないから、911をスポーツカーの代名詞として世界中のクルマ好きが認めるのだと思う。今、世界の名だたるスポーツカーが目指しているのは、実はこのカレラ4のコンセプトやパフォーマンスではないだろうか。

それではちょっと高尚に過ぎる、もう少し気軽に純な気分でスポーツを楽しみたい、という多くのスポーツカーファンのためにボクスター&ケイマンを用意したあたりにも、ポルシェのしたたかな戦略が見てとれる。

実際、ボクスターSに乗れば、たとえそれがティプトロニック仕様であろうと、スポーツカーに不可欠な肉体的・精神的なリスク、つまりは痛みの予感=刺激を、911よりもずっと多く感じることができるのだった。

もちろん、現代の乗用車に必要な安心感は、ミッドシップカーであるがゆえに余計、必要とされるものだし、実際に備わってもいる。けれども、今となっては重いステアリングフィールや細身のハンドル、精気に充ちたエンジンフィールとサウンド、ハンドリングなどが、純なスポーツカーの世界を、ドライバーの求めに応じて見せてくれる。マニュアルミッションなら、もっとそうだろう。パワーが小さい分、ノーマルのボクスターならもっと手軽に純なスポーツフィールが味わえるはずだ。

いずれにしても、ポルシェに乗って感じるのは、たとえそれがSUVのカイエンであっても、いかにも「腰で乗っている」というフィーリングだ。スポーツに大切な身体の部位は、やはり腰なのだった。

クルマの成り立ちよりもブランドのあり方
ボクスターSから乗り換えると、さしものアウディTTも、さらに安定ベースのスポーツカーである。ただ、内外から発せられるスポーツカーとしての存在感の大きさは、2代目となって中身がともなったことも手伝ってか、相当なものである。とくにリアビューの眺めは、スポーツカー以外の何者でもない。

ボクスターからすぐに乗り換えれば安定ベースだが、そんなフィルターを外せば、相当に楽しめるスポーツカーである。感覚的にはボクスターのアクセル開度からマイナス20%の領域で、すでに楽しい。腰で乗れる。ロードスターならばもっとだろう。そのかわり、汗をかくことはない。サウンドだってドライバーを煽り立てるものではない。ただ、これからあるべきスポーツカー像のひとつとして、TTの存在意味は大きい。

さらに、年内には日本市場にも登場すると言われるTTSなる過激なモデルは、迫力のサウンドとともに汗の出るスポーツカーだ(しかも乗り心地はV6のSラインモデルより上)。そういや、アウディのTFSIクワトロ系はすべて、最初のひと踏みが、アウディの中だけではなく、ライバルを含むすべての中で最も過激で勇ましい。

今回の取材にはなかったが、ゴルフGTIやRラインといったフォルクスワーゲン系のスポーツモデルはどうだろう。ブランドイメージの分だけ、案外、演出が過激でわかりやすかったりする。

ただしそれほど腰は入らない。それはフォルクスワーゲンがスポーツモデルで稼ぐというよりも、このモデルでブランドステータスを引き上げたいと考えているからだろう。やはり、クルマの成り立ち、ドライブトレーンの構成などよりも、ここでもスポーツがブランドを支配する。

北の新緑のグラデーションのように、そのスポーツ性が個々のブランドによって少しずつ、けれども結果的には明確に分けられているという点が、この巨大グループの強みだと思う。(文:西川淳/Motor Magazine 2008年7月号より)



アウディ A5 3.2FSI クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4625×1855×1375mm
●ホイールベース:2750mm
●車両重量:1670kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3196cc
●最高出力:265ps/6500rpm
●最大トルク:330Nm/3000-5000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:695万円(2008年)



ポルシェ 911カレラ4S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4425×1850×1300mm
●ホイールベース:2350mm
●車両重量:1560kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3824cc
●最高出力:355ps/6600rpm
●最大トルク:400Nm/4600rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:5速AT
●車両価格:1490万円(2008年)

ポルシェ ボクスターS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4330×1800×1295mm
●ホイールベース:2415mm
●車両重量:1420kg
●エンジン:対6DOHC
●排気量:3387cc
●最高出力:295ps/6250rpm
●最大トルク:340Nm/4400-6000rpm
●駆動方式:MR
●トランスミッション:5速AT
●車両価格:751万円(2008年)

アウディ TTクーペ3.2クワトロ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4180×1840×1390mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3188cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:585万円(2008年)

[ アルバム : アウディA5、ポルシェ911カレラ、ポルシェボクスター、アウディTTクーペ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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  • なぜ?12年前の記事を掲載してんのか理解に苦しむ。
  • プレイバック、プレイバック、なめんじゃないわよ❗️私、西川淳よ!
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