乗用車もさることながら、トラックにおいても自動運転に対する注目が集まっています。交通事故の防止やドライバーの疲労軽減などメリットが多い反面、安全性を担保するためには、乗用車以上に高いハードルを幾つも越えなければなりません。
ではトラックメーカーは、完全自動運転までのロードマップをどのように描いているのでしょう?
また、現実的なステップである自動運転レベル2とCACC(隊列走行など車々間通信による車間距離制御)について、トラックの大・中・小、各カテゴリーにおけるニーズ、デバイスのもたらす商品力についてどのように評価しているのでしょう? トラックメーカー四社に聞いてみました。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部 回答/トラックメーカー各社
ワンポイント解説/多賀まりお 写真/フルロード編集部
*2021年3月発売「フルロード」第40号より
【画像ギャラリー】安全のために越えなければならないハードルは乗用車以上!! トラックメーカー四社が目指す完全自動運転
■2020年代前半は安全運転支援装置の拡大に注力/日野自動車
協調型アダプティクルーズコントロール(CACC)の実証実験はすでに始まっている。大型四社が参加する後続車有人隊列走行、後続車無人隊列走行があり、商用化される日も近いという
まず、日野自動車に答えてもらいました。
技術としては2020年代前半に安全運転支援装置の拡大、2025年以降の早い時期に自動運転車の実現を目指しています。
日野自動車は2006年に商用車で世界で初めて衝突被害軽減ブレーキシステム「プリクラッシュセーフティ(PCS)」を採用した。これは日野レンジャーによるデモンストレーションの模様
事業性の強い商用車は、自動運転による社会・事業者の課題解決へのメリットが大きいいっぽうで、持続性・運用コストおよび利便性の観点から、産業への浸透・社会受容性の醸成が必要であり、そのためのインフラ・制度(法律や保険など)整備等の技術開発以外の課題も多く、社会実装に向けては関係各所との連携が重要と考えています。
では、いすゞ自動車はどうでしょう。
■高速道路での自動運転と限定地域での無人自動運転配送サービスに重点/いすゞ自動車
いすゞ自動車のエルフやフォワードに採用された「交差点警報」のデモンストレーション。ピラーに設置された警告灯が点灯し警告音が鳴動。交差点右左折時や出会い頭の事故を抑制する
トラックの自動運転は、高速道路での自動運転と限定地域での無人自動運転配送サービスを重点に、官民ITS構想・ロードマップに沿って2025年以降の実現を目標に開発を進めております。
高速道路での自動運転の実現には、車両の技術開発だけなく、支援インフラの構築や制度整備が必要となると考えております。また限定地域での自動運転は、事業者ニーズを踏まえて走行環境条件を設定し、実装可能なものからサービス実現を目指しております。
運転支援技術であるレベル2は、段階的かつ着実な取り組みが重要であると考えております。交通死亡事故ゼロを目指し、大中小の各カテゴリーでの使われ方に合わせて安全技術を商品化しております。
いすゞギガに採用されたレーンキープアシストは、車線維持支援機能に加え、自動運転レベル2に相当する車線逸脱抑制機能を有している。ただしドライバーがステアリングから手を離した状態が10秒間経過すると警報を発出し、25秒で作動をキャンセルする
例えば小型トラックのエルフは、街中での稼働が多く、歩行者保護のための交差点警報、歩行者検知機能を拡充し安全性の向上を目指しております。
いっぽう大型トラックのギガや中型トラックのフォワードは、高速道路での長距離移動も多いことから、ドライバーの疲労低減のためのLKA等の支援技術が事故防止につながると考えております。
CACCに関しては社会および物流事業者ニーズの把握を含め検討してまいります。
三菱ふそうの自動運転へり取り組みはどうでしょう?
■他社に先駆けてレベル4の自動運転の実現を目指す/三菱ふそう
三菱ふそうスーパーグレートは、国内で初めて自動運転レベル2の高度運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト」(ADA)を搭載。また、ADAとともに、障害物検知にレーダーとカメラを組み合わせて精度と機能を向上させた衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト5」(ABA5)を採用。写真はそのデモンストレーションの模様
自動車業界は現在急速に変化しています。柔軟性を維持し、新しいビジネスモデルとテクノロジーを活用してこれらの変化に対応していくことが重要です。
完全自動運転トラックへのロードマップは、製品、お客様、環境の側面が重要と考えます。包括的なロードマップを定義するには、短期的には道路上の安全要件、ドライバーへのサポート、自動車保険、法規といった点に焦点を置き、長期的には機械学習、AI、電動化技術に焦点を当てることが重要です。
三菱ふそうは商用車メーカーとして、自動運転レベル3をスキップし、他社に先駆けてレベル4の自動運転の実現化を目指します。レベル3の自動運転では、ドライバーはまだ自分の席にいる必要があるため、メリットはないと考えます。
つまり、ドライバーは他のアクティビティ(休憩、コミュニケーション、計画等)を同時に実行できないため、お客様はその恩恵を受けられません。レベル4では、ドライバーが他のタスクをできるようになるため、運転の安全性も高めることができます。
その三菱ふそうスーパーグレートには、この6月から車線内停止方式のドライバー異常時対応システム「エマージェンシー・ストップ・アシスト」、左折時の巻き込み事故の被害を軽減する先進運転支援システム「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」(写真)が新たに設定された
私たちは自動運転トラックとCACC技術の双方において、運転資格を持つドライバーの数と自動運転市場の進化が、今後の動きと発展を左右すると考えます。
三菱ふそうは自動運転レベル2に相当する高度運転支援機能を搭載したスーパーグレートを発売し、また国交省主導の公道での最初の有人隊列走行の実証実験にも2018年に参加しています。
トラックの各セグメントにおける自動運転技術は、アプリケーション本体によると考えます。大型車のセグメントでは高速で長距離の走行を可能にする機能が必要ですが、小型車のセグメントでは操縦とラストマイルの配達をサポートするテクノロジーが必要です。
シームレスな物流のバリューチェーンを構築するために、各セグメント間の連携を可能にするテクノロジーに焦点を当てることも重要です。
最後にUDトラックスの回答をご紹介します。
■最も重要なのは技術の安全性が充分に担保されていること/UDトラックス
UDトラックスは2019年8月に日本通運・ホクレンと共同で自動運転レベル4の実証実験を北海道で行なった。レベル4は限定領域での無人運転で、レーザー照射の散乱光を分析して人やクルマなどの障害物を高精細に識別する「LiDER」(ライダー)と呼ばれるセンサーやGPSなどを活用。約1.3kmの搬入ルートで計200回の自動運転走行を行なった
トラックの自動化は物流の効率化やドライバーの運転環境改善などの社会課題を解決していくためのカギとなるテクノロジーですが、最も重要なのは技術の安全性が充分に担保されていることです。
トラックの自動運転の主な目的は、安全運転の支援やドライバーの疲労軽減の2つに絞られると思うが、いっぽうでカメラやレーダーなどによる高度運転支援システムに頼らず、操舵輪に掛かる力を直接検知して補正することで、車両の安定性向上を図り、安全運転や疲労軽減につなげようとする最先端技術もある。このほどUDトラックスが主力車型に設定した「UDアクティブステアリング」がそれで、こういったアプローチも当然あって然るべきだろう
こうした意味において、レベル2とCACCは重要なステップです。しかしながら用途に応じて、これ以外の技術を提供していくことも大切だと考えています。
■トラックの自動運転/ワンポイント解説
すでに大型車にも搭載されたSAEレベル2は高度運転支援という位置づけ。ドライバーは常にシステムの動作や周囲の交通状況を監視している義務がありますが、レベル3になると限定的な環境ではドライバーに監視義務がない状態での自動運転が可能に……。
ただし制御の限界を超える場合など、システムに要請されたらドライバーはいつでも運転操作を行なわなくてはなりません。
さらにレベル4になれば、高速道路といった特定の状況下では運転操作はすべてシステムが行ない、ドライバーは関与しない状態となります。
レベル3は2とあまり変わらないのでスキップし、高度な自動運転であるレベル4を目指そうというのがダイムラーグループの方針です。
いっぽうCACCは、コオペレーティブ・アダプティブ・クルーズ・コントロールの略。
レーダーやカメラで先行車との距離を把握して車間距離を維持する機能を備えたクルーズコントロール(車速維持装置)であるACCに、車両間の通信機能(車々間通信)を加え、先行車の加減速情報を複数の後続車両が共有することで、車間距離の制御をより緻密に行なう仕組みです。
これにより安全に短い車間距離を保つことが可能になりトラックの隊列走行に於いて空気抵抗低減による燃費低減効果が高まります。
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これらの技術が安全運行の為に運送会社が積極的に導入する為には先ず運賃等の見直しが必要であり、その為には荷主が今のトラックを知る必要があると思う。