隣国アルゼンチンとの相互交流戦『ブエノスアイレス200km』の週末を迎え、同国首都に位置するアウトドローモ・オスカー・ファン・ガルベスにて10月6~8日に開催された2023年SCBストックカー・ブラジル“プロ・シリーズ”の第9戦は、選手権首位を行くガブリエル・カサグランデ(A.マティス・フォーゲル/シボレー・クルーズ)が2021年王者の意地を見せてレース1を制覇。続くレース2では、同国出身の“ホスト”でもあるマティアス・ロッシ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)が、アルゼンチン国民の大歓声と祝福を受ける今季3勝目、SCB通算5勝目を記録するお祭り騒ぎのホームレースとなった。
約6年ぶりの復活がアナウンスされた相互交流戦だが、ブラジル側の訪問は今回で5回目を数え、週末のSCBによる2ヒートは“世界最速のFFツーリングカー選手権”でもあるTC2000最大の祭典とタイムスケジュールを分け合いながら実施する。そのサーキットが提供するさまざまなレイアウトの中で、全長3380m、合計10のコーナーが設定される時計回りの“No.8”が初採用された。
TC2000/SCB併催戦の週末に特別枠。ユーロファーマRCのマウリシオ・ジロラミ組がFFシボレーで参戦へ
ブエノスアイレス市街にて、世界でもっとも広い『7月9日通り』にある記念碑オベリスクを中心に、両シリーズのドライバーがパレードを行う壮麗な雰囲気で幕を開けたレースウイークでは、現在もTCR最高峰で戦うウルグアイ出身サンティアゴ・ウルティア(スクーデリア・・キアレッリ/トヨタ・カローラ)もSCBデビューを果たすなか、FP1でのギリェルメ・サラス(KTFレーシング/シボレー・クルーズ)に続き、FP2では上位27台が1分18秒台という超接近戦のなか地元のロッシが最速を記録する。
しかし予選では、2017年の交流戦で現ディフェンディングチャンピオンのルーベンス・バリチェロ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)と組んで勝利を飾っているフェリペ・フラーガ(ブラウ・モータースポーツ/シボレー・クルーズ)が勢いを見せ、若きジャンルカ・ペテコフ(フルタイム・スポーツ/トヨタ・カローラ)を0.009秒差で抑え切り、今季2度目のポールポジションを獲得した。
「ブエノスアイレスでポールポジションを獲得できるなんて特別だし、本当にうれしいよ」とSCBキャリア通算10度目の最速としたフラーガ。
「今回の『ルート8』は、ストックカーでは前例のない新しいトラックだから、全員が30分×2回の練習セッションでコースを習得する必要があった。シミュレーターでトレーニングする機会もなかったから、クルマが最高だったことを示しているし、チームは素晴らしい仕事をしてくれた」
国際的な活躍も演じて来たフラーガは、今回採用された低速の序盤セクターと高速コーナーが組み合わさったレイアウトにも言及し、バランスの取れたクルマを用意することが重要だと述べた。
「このトラックにはすべてが揃っているし、とてもクールなトラックだ。序盤は非常にタイトなセクターで2速、3速、さらには1速のセクションもある。次に超高速コーナーのパートがあり、そこでは5速でのボトムスピードが190~200km/hになり非常に挑戦的だね。最後に250km/hから1速にブレーキングする。だから高速でも低速でも、ブレーキングでもすべてで優れたクルマが必要なんだ」
■母国ファンの前で勝利したロッシ「僕のキャリアにとって信じられないような日だ」
迎えた30分+1周のレース1は、スタートからポールシッターがリードを維持し、2列目から出た選手権リーダーが早めに若手を仕留めて2番手へ浮上する。そこからチームの効率的な義務ピットもトリガーとなり、首位フラーガを逆転したカサグランデが今季3勝目を手にする結果となった。
「非常にクールな週末で、僕らも最初からとても速いクルマを持っていた。ポールポジションまであと少しだったが、3番グリッドからでも勝てたのには驚いたね」と喜びを語った勝者カサグランデ。
一方、このヒートのファイナルラップで僚友バリチェロを先行させるなど、戦略的な10位フィニッシュでレースを終えていたロッシは、SCBのグリッドに並ぶ唯一のアルゼンチン出身者として、その重圧を一身に背負ってレース2へと臨む。
ロッシにとって狙いどおりのリバースポール発進ながら、季節外れの猛暑も絡みスタート直後からSCBで5冠の“帝王”カカ・ブエノ(KTFスポーツ/シボレー・クルーズ)らが絡むインシデントが発生し、セーフティカー(SC)が介入する。
一旦は4周目にリスタートが切られたものの、車両回収の位置が不十分としてふたたびSC出動とリズムが乱されるなか、7周目の再開後もリードを保ち続けた『シリーズ史上、もっとも成功を収めた海外ドライバー』ことロッシは、ピットウインドウが開いた直後、首位に居ながらも真っ先に義務ピット消化に向かう。
その数周後の11周目に作業を終えたバリチェロも、ロッシの背後でコース復帰しアンダーカットはならず。最後はブルーノ・バプティスタ(RCMモータースポーツ/トヨタ・カローラ)とセザール・ラモス(イピランガ・レーシング/トヨタ・カローラ)の事故により、SC先導の隊列走行でチェッカーとなり、地元の観客にとって完璧なストーリー展開の中でロッシがSCBでの5勝目を飾った。
「この勝利には心から満足している。(所属先の)フルタイム・スポーツは僕に素晴らしいクルマを準備してくれ、母国で勝つことができたんだ!」と、喜びを爆発させたアルゼンチン国内“5冠”のロッシ。
「とにかく、僕のキャリアにとって信じられないような日だ。TOYOTA GAZOO Racingブラジルと、この活動形態を許可してくれた皆にとても感謝している。一生のうちで、こんな日が経験できるなんて……夢のようだよ」
週末の最多得点者はレース1で2位、レース2で6位となったフラーガで、ランク首位カサグランデもバリチェロとの差を21ポイントに維持。続くSCB第10戦は、10月27~29日にブラジル・サンパウロ内陸部に位置するアウトドローモ・ヴェロチッタで争われる。
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