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先駆けは65年前の北海道!? 日本初の“寝台バス” どうも窮屈だった模様

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先駆けは65年前の北海道!? 日本初の“寝台バス” どうも窮屈だった模様

1960年、札幌市交通局が開発

 夜行高速バスで長年の夢とされていた「完全に横になれる」座席。一般的に高速バスではシートベルトを付けなければならないこともあり、実現は困難でした。

けっこう窮屈かも… 札幌を走った「寝台バス」の車内(写真)

 しかし高知駅前観光が2025年3月4日、夜行高速バス「スマイルライナー」のモニター便に「ソメイユ・プロフォン」と名付けたフルフラットシートを装備。日本初の試みとあって、大きな話題となっています。

 ただ、実はその65年前にも、「寝台バス」を目指した特殊車両が存在しました。作ったのは札幌市交通局で、1960(昭和35)年8月に日本初の寝台付き観光バスを完成させています。この寝台バスは「ゆーから」と呼ばれ、全長10.6m、車体幅2.5m、車高3.3m。参考までに現代の大型バスは全長12m、車体幅2.5m、車高3.5m(ハイデッカータイプ。スーパーハイデッカーや2階建ては3.8m)程度なので、比べてみると若干小型といえるでしょう。

 車内レイアウトは、当時の国鉄三等寝台車(現・B寝台)と同じような側廊下式で、進行方向と直角に、いわゆる枕木方向に三段寝台が並ぶレイアウトでした。諸説ありますが、寝台の長さは1.7m、寝台幅は50cm程度で、鉄道の寝台車より若干狭かったようです。定員は29名でした。

 車体は前方から三段寝台1セット、三段寝台が向かい合わせとなった6人区画(扇風機付き)、そして最後方に設けられた三段寝台1セットという、いわゆる3・6・6・6・3という寝台配置が基本です。ただ、これだけだと定数は24名。残りの5名はどこに乗ったのでしょうか。

けっこう狭い? スペックから寝台内部を推測

 寝台に乗らない残りの5名のうち3名は、3つある6人区画のあいだにそれぞれ補助寝台を展開することで収容。このほかに、最後部の三段寝台の後ろにリクライニングシートが2脚設置されることで、合計29名となりました。なお、各寝台には枕と毛布が備わっていました。

 車両はハイデッカータイプではなく、モノコック構造のセミステンレスボディ。なおかつ北海道向けということで冷房もないため、現代のハイデッカー夜行バスより天井の高さに余裕があったと思われます。ただ、「ソメイユ・プロフォン」が1+1+1列の二段寝台で定員23名であることを考えると、各寝台内の天井の高さは恐ろしく低かったのではないでしょうか。

 資料によっては、昼間時の定員を45名としているものもありますが、その際のレイアウトは不明です。寝台区画に5人並べて座らせたとして、8区画で40名。リクライニングシート2脚で42名。補助寝台3つを使えるなら45名ですが、6人区画内の寝台間に補助寝台を展開したら座れないはずで、区画幅もせいぜい1.5m程度でしょう。

 1.7m×1.5mに11人が入れるとは思えないので、昼間時も中段・上段寝台を使い、補助寝台を展開して、下段寝台どうしを接続したのでしょうか。側通路側にも、鉄道の寝台車のような補助座席があったようなので、補助寝台で接続した下段区画に6名、通路の補助座席に1名、中段と上段寝台で4名なのかもしれません。

 なお、車内の最後部には「キッチングルーム(原文ママ)」があり、内部に調理台やガスレンジ2基、洗面所、更衣室を備えていたそうです。ただ、トイレはないので、それはドライブインなどを利用したのでしょう。

料金を徴収して営業運行へ

 寝台使用料は1人200円。1961(昭和36)年における初任給は平均1万3000円、国鉄の三等寝台上段が600円でしたから、当時でも格安だったと思われます。

 なお「ゆーから」は1泊2日の場合、一般貸切車の18%増の料金で借りられたそうです。当時の観光バスは50~60名乗りが一般的ですから、こちらも格安といえるでしょう。

「ゆーから」は陸運局の許可を得て、1960年8月11日に運行を開始しています。翌年4月にテレビで紹介されたときの写真も残っているので、しばらくは運行されたのでしょう。資料によってはその間、横転事故を起こしたと記されているものもありますが、後に一般車に改造されているので、真偽のほどはわかりません。ただ、1960年当時は東京都内の葛飾区でも都道の舗装率は62.8%であり、北海道の、ましてや非舗装道路で発生するであろう騒音や振動では、とても眠れたものではなかったかもしれません。

 結局、「ゆーから」は成功を収めたとはいえず、日本の夜行バスは「フルフラット寝台」から遠ざかってしまいました。それから65年。「ソメイユ・プロフォン」開発時に制定された国土交通省のガイドラインによって、今後はフルフラットシートのバスが増えると考えられます。そこに至るには、「ゆーから」という先駆者の挑戦があったからだといえるのではないしょうか。

文:乗りものニュース 安藤昌季(乗りものライター)

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みんなのコメント

6件
  • ポンちゃん
    そんなバスがあったんですね。もっと話題にしてほしいですね、3段寝台枕木方向なんて素晴らしいですね。
  • ヒデ
    65年前の北海道の国道は未舗装なんてザラにあった。
    それにバス自体もエンジンの振動や騒音、道路からの
    車体の揺れ、振動、今の電車の荷物棚程度の狭い寝台
    、相当過酷だったと思います。
    でも今よりもおおらかな時代だったので楽しんでたのかも。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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