アウディのモータースポーツ活動を担うアウディスポーツは、12月7日付けで“砂漠のハイテクコントロールセンター”と称し、2022年のダカールラリーに投入予定である『アウディRS Q e-tron』のコクピット画像を公開。ドライバーとコドライバーが操作を共有するべく、インストルメントパネル全体に配置した「飛行機のコクピットを想起させる」各種スクリーンやディスプレイを持つ、新たな“デザート・レンジエクステンダー”の司令室を披露している。
このアウディRS Q e-tronは、2020年までDTMドイツ・ツーリングカー選手権で使用された日本のスーパーGT GT500クラスを由来とする2.0リットル直列4気筒直噴TFSIターボエンジンを軸に、フォーミュラE用に自社開発した電動モーターユニット『アウディMGU05』と、こちらもアウディスポーツが開発した高電圧バッテリーを組み合わせるシリーズハイブリッド方式が採用されている。
ホンダ、ダカールラリー2022の参戦体制を発表/FIM世界ラリーレイド選手権
2021年6月末にシェイクダウンが行われた後、7月中旬にはドイツ、8月にはスペインと精力的なテストが続き、マティアス・エクストロームを筆頭にカルロス・サインツ、ステファン・ペテランセルらがステアリングを握っている。
そんな3名の“仕事場”となるドライバーズシートは、エネルギーコンバーターを備えたアウディRS Q e-tronの電気駆動システムにより、シフトチェンジの必要がないことからコンソール中央にはダブルクランクのアルミニウム製ハンドブレーキレバーを設置。油圧ブレーキと回生システムを組み合わせた革新的なブレーキ・バイ・ワイヤとし、これによりフットブレーキ使用時と同じくサイドを引いた際にも回生を行うことが可能となった。
ドライバーの正面にあるステアリングホイールには8つのコントロールボタンが設置され、ホーン、ワイパーなどに加え、ドライバーがタイムスタンプ付きで異常をメモリーに保存する際、ソフトウェアへのデータ入力に使用するエントリーボタンも配置。速度制限が設定されているゾーンで使用するスピードリミッターも用意される。
ステアリングホイール前方のディスプレイは、タイヤ空気圧、連続可変電気駆動システムによって選択されたシフトポジション(前進、後退、ニュートラル)、現在の速度に関する情報が提供され、システムのシャットダウンや高電圧バッテリーが切断された場合に、ドライバーがすぐに対応できるよう重要な警告も表示される。
また、ダッシュ前方上部に設置された小さなディスプレイの左側は、リピーターと呼ばれるコンパスの方向を示し、右側のディスプレイには速度を表示する。
コドライバーとの間に設置されたディスプレイには、タイヤ空気圧、選択したブレーキバランス、ブレーキ・バイ・ワイヤのシステム等、多くの機能に関する情報を表示。ここも機能またはシステムが正常に動作している場合は緑色で点灯、エラーが発生した場合は赤色で警告表示される。
■2022年大会最大の試練は、ルートに関する直前の通知
ダッシュパネルにある個々のスイッチはタッチ式で、自由に割り当て可能な24の機能が設定でき、一般的な速度制限ゾーンやエアコンディショナーの設定、さまざまなページをプログラムすることが可能となっている。
また、あまり使用されない機能は2ページ目以降でファンクションを呼び出すことができ、車両に損傷が発生した場合、個々のシステムのスイッチをオフにした緊急モード(フェイルセーフ)で、ステージの目的地まで安全に到達することも可能としている。
パネルのスイッチ類を操作するのは、基本的にコドライバーの役割となるも、起伏の激しい地形を最高170km/hの速度で何時間も走行する中で完璧に行なう必要があるため、ペテランセルのコドライバーを務めるエドゥアール・ブーランジェは「現在、私はエネルギーの半分をナビゲーションに費やし、残りの半分は車両の操作に費やしている。しかし、この新しいチャレンジをとても気に入っている」と語る。
そのコドライバーが直面する2022年大会最大の試練は、ルートに関する直前の通知と、デジタルロードブック形式への切り替えだ。翌日のステージに関する情報は、従来のように前日夜の発表ではなく毎朝ステージ開始の15分前に、その日のルート情報を受け取る形式となる。
そのため、コドライバー陣はこれまでの紙のロードブックに代わり、ふたつのタブレット画面を見ながら走行し、それら目の前に設置された端末をケーブルでつながれたふたつのリモコンで操作する。
左側の画面のロードブックは地形を通過する方法を示し、故障した場合にのみクルーは付属の封印された紙のロードブックを開いて使用することが許可され、それ以外の場合はペナルティが科される。
右側のタブレットにはGPSナビゲーションが表示され、各参加者が通過する必要のあるデジタルウェイポイントを確認することが可能で、車両がウェイポイントの円内に達すると、ドライバー向けにフロントウインドウ下の右側リピーターにウェイポイントへの方向を示す矢印が表示される。
主催者はコンパスの方向、距離、絵文字、特別な状況、および危険警告のみをロードブックに提供し、GPSシステムは参加者が数百kmを超える砂漠の真ん中で、正しいルートを通過して速度制限を守っているかどうかを確認する役割も果たす。
また、センターコンソールにはイリトラック(Iritrack/衛星位置情報システム)も装備され、主催者は速度と現在の車両位置を記録し、事故の発生を知ることができる。もし緊急事態が発生した場合、コドライバーはクルーが負傷していないかどうか、医療支援が必要かどうか、または事故を起こした別の参加者を救助隊が支援する必要があるかどうかを、主催者に直接通知することも可能となっている。
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