毎年新年の始まりに開催されるラスベガスの「コンシュマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」は、2024年1月9日(現地時間)に開幕した。今回のショーの目玉はホンダ。8日にはソニーが独自の映像技術やAIロボティクスを使う魅力的なエンターテイメント・エクスペリエンスが発表したが、世界の自動車関係者が注目している「SONY HONDA MOBILITY」(以下ソニーホンダ)が開発する「AFEELA(アフィーラ)」も披露された。
その後にホンダの新EVシリーズも発表。以下、モータージャーナリスト清水和夫氏が現地からレポートをお届けします。
これが…ホンダの…新BEV戦略…?? ラスベガスCES2024で世界に語ったホンダの行く道と「鍵」を握る5つの要点
文/清水和夫、写真/HONDA、ソニー・ホンダモビリティ株式会社
■ソニーホンダから始まった2024CES
ソニー・ホンダモビリティ株式会社の最初のプレゼンターは、ソニーの吉田憲一郎CEO。流暢な英語でソニーの魅力をスピーチするが、ソニー・ホンダのパートナーであるホンダの三部敏宏CEOも壇上に上がり、ソニーとコラボすることの理由を語った。
同じベンチャーだった創業者同士(本田宗一郎氏と井深大氏)の仲もよく、ソニーとホンダはお互いに異なる業界で成長してきたが、CASE革命によって歩み寄ることとなった。三部社長はソニーと組んだ理由について「お互いの得意分野をシナジーさせる」と語り、うまく化学反応が起きると新しい価値が生まれることを期待している。
CES2024でAFEELA(アフィーラ)の前でスピーチする川西COO
実は「ソニーが自動車を作る」と発表したのが2020年のCESである。そのときはホンダと組むとは決まっていなかったが、きっとソニーと組むのが最高のシナジーになると筆者は睨んでいた。
同社の川西泉COOは「ソニーのセンサー技術とAIを使い、先進的なAD/ADASを実装すること」が最大の狙いと語る。そのために「畳み込みニューラルネットワーク」(CNN)といわれる機械学習を駆使し、画像認識の精度を高めてリスクをミニマイズできると考えている。
AFEELA(アフィーラ)の車内エンタテイメント。クルマの未来は「こっち」なの…か…??
川西COOは、もともとソニーではAIロボテックスのエキスパ―トだっただけに、AFEELAは走るスマフォのように思われがちだが、コアとなる価値は「予防安全」だと筆者は睨んでいる。川西COOの最後の言葉は「STAY Tune」(乞うご期待)。
これは2005年にスタンフォードで講演したスティーブ・ジョブスの言葉だった。
■ホンダの独自路線のBEV戦略が公開
ソニーホンダの発表の翌日には、ホンダのグローバルなEV戦略が発表された。プレゼンテーターは前日に続いて三部社長、商品を説明したのは青山真二副社長。二人とも筋金入りの原理主義者だと筆者はみている。ということで、2024年CESではホンダの三部社長がもっとも忙しいCEOだったのではないだろうか。
今回ホンダは2台のコンセプトカーを出展。そのうちの一台「SPACE-HUB」(スペースハブ)の前でスピーチする、ホンダの三部社長
ホンダは昨年末に、かねてより進めてきたGMとのBEVの共同開発プロジェクトの中止を発表した。詳しい理由は省くが、筆者の見立てではバッテリーに対するホンダとGMの考えの違いがあったのかもしれない。
すでにトヨタは次世代バッテリーのロードマップを明確に公表しているので、ホンダとしてもバッテリーの戦略を見直すにはラストチャンスだと気がついたのではないだろうか(筆者の予測)。もともとホンダはラージ系BEVを独自開発する計画だったので、CESではその二台のプロトタイプを公開した。
現地時間で午前10時半にアンベールされたが、事前に見た範囲では、黒い布でベールされたモデルはどうみても大きい。一台は「SALOON」(サルーン)であるが、シルエットから察すると、ノーズは低く、ワイドボディだと想像できた。まるでランボルギーニ・アベンタドールのようなシルエットなのだ。
もう一台の「SPACE-HUB」(スペースハブ)はフルサイズのミニバンのように見える。
■映画の世界から飛び出てきたようなスタイルに驚く
アンベールした瞬間に、会場からは歓喜のようにも聞こえる声が響いた。
「SALOON」のスタイルは3ボックスのフォルムではなく、まるで一筆書きで書いたようなフォルムだった。リヤモーターリヤ駆動なので、エンジンフードを低くでき、床下には薄く設計されたバッテリーが格納される。SUVよりも車高が低く、低重心なのでNSXよりも重心点は低そうだ。チーフデザイナーの南俊叙氏は、跳ね上げ式のドアの構造は量産では変更するものの全体のイメージは「このままです」と言い切る。
新たに発表されたコンセプトカー「SALOON」(サルーン)。え…「このまま出る」って…マジで??
他方、「SPACE-HUB」はさすがにデザインスタディなので、量産車はスタイルの変更があるものの、基本的なデザインのエッセンスは踏襲したいと述べている。せっかくの新規プラットフォームなので、大胆に「H」マークもデザインを変更した。
新しい「H」マークと「SPACE-HUB」(スペースハブ)。ミニバンだ…アメリカなのに……
筆者の印象ではウェッジシェイプが強いスポーツをイメージする「SALOON」はエクステリアデザインからはホンダのオーセンティックな空気を感じられないが、インテリアは本田宗一郎さんが守ってきたMM思想は踏襲されている。
バッテリーは「薄くて軽い」(Thin, Light)に設計し、クルマとしてはWISE(賢い)な製品を目指している。
■ホンダはどのように生まれ変わるのか
三部新社長のプレゼンテーションでは「HONDA 0」(ホンダゼロシリーズ)というコンセプトがわかりやすかった。
新たに発表されたホンダの商品戦略イメージ。「0」にさまざまな意味を込めた
従来の常識にとらわれずに、ゼロから物事を考えることで、新しい価値を作りだし、さらに環境負荷ゼロ、交通事故死ゼロをコアコンセプトとしている。BEV開発責任者の假屋満氏は「新しい発想でクルマの開発をゼロから始めることは、大きなチャンス」と考えている。具体的には次のような5つの価値を提供するだろう。
〇共感できるデザイン
〇安心できるAD・ADAS
〇使いやすいIoT・コネクテッド
〇操る喜びと快適なドライブフィール
〇高い電費性能(長い航続距離)
今回取材で分かったことは、ADASのようなインテリジェントなドライバーをアシストするADASとデジタルコクピットから提供されるユーザー体験に新生ホンダの新価値がありそうだ。
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