新規定車両“Gen3”の導入初年度となる2023年RSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップの第3戦『ボッシュパワーツール・パース・スーパースプリント』が4月28~30日に開催され、オープニングこそ王者“SVG”ことシェーン-ヴァン・ギズバーゲン(トリプルエイト・レースエンジニアリング)が、ライバルからの正式抗議を跳ね除け勝利を手にする結果に。
しかし明けた日曜は主役交代となり、今季よりコカ・コーラ・バイ・エレバスとして参戦する初代TCRオーストラリア王者のウィル・ブラウンとブロディ・コステッキ(エレバス・モータースポーツ/シボレー・カマロZL1)のペアが、オフテストからの好調を維持してチーム史上初のワン・ツーフィニッシュを達成。週末最終ヒートは、トップカテゴリー昇格2年目を迎えるレッドブル・アンポル・レーシングの新鋭ブロック・フィーニー(トリプルエイト・レースエンジニアリング)が今季2勝目を飾っている。
第3戦を前にCoG(重心位置)を微調整。カマロZL1の車体後部に約5kgのバラストを再配置/RSC
恒例のF1オーストラリアGP併催イベントとなった第2戦『メルボルン400』を経て、シリーズの一行は大陸内で1万kmに及ぶ移動を経て、西部を代表する主要都市パースに集結。そのイベント会期を前に、ディフェンディングチャンピオンは所属先のトリプルエイトと新たな複数年契約に署名したことをアナウンスした。
「レッドブル・アンポル・レーシングとの契約を延長することは、僕にとって簡単なことだった。ピットレーンで最高のチームと一緒にいることは確かにエキサイティングだし、ここに留まることができてうれしく思うよ」と、引き続きGen3『シボレー・カマロZL1スーパーカー』のステアリングを握ることが決まったSVG。
「僕の意思決定を真に強固なものにしたのは、先のF1オーストラリアGP併催戦でクラッシュを喫し、クルーが懸命に修復作業に当たってくれたことだった。FPの走行枠をひとつ逃しただけで、ポールポジションを獲得することができたんだからね」と、自身のエラーを挽回する働きを見せたクルーに、改めて感謝の意を伝えたチャンピオン。
こうして始まった週末はデビッド・レイノルズ(グローブ・レーシング/フォード・マスタング)のFP最速で幕を開けるも、最初の予選ではコステッキを僅差で降した王者SVGが、本領発揮とばかりにチームの結束を示すポールポジションを奪った。
迎えたレース1はスタートで抜け出たコステッキに対し、オーバーカットを成功させたレイノルズと、終盤レイトストップによりフレッシュなラバーで追い上げを図ったSVGの三つ巴となり、首位のコカ・コーラ・シボレーに迫ったレッドブル・シボレーは、お互いにコース全域にわたって再三テールとノーズを擦り付けての攻防劇を展開する。
このペア間の接触は、最終的にコステッキ側が「過度に防御的である」という判定を受け、終盤のオーバーテイクで前に出たSVGがパースでのオープニングを制する結果となった。
これに対し映像を提出して正式に抗議を申し入れたエレバス陣営だったが、検証の結果「97号車(SVG)のドライバーによる規則違反を立証する証拠はなく、この問題はスチュワードに付託されない」として棄却。早々にSVGの勝利が確定した。
しかし明けた日曜。その判定に奮起したのがコステッキの僚友ブラウンで、スーパーポールではフィーニーとともにポールを分け合うスピードを見せ、レース2はブラウン、レイノルズのフロントロウでスタートが切られる。
■18年連続表彰台獲得のコートニー「まずスカイフの記録を打破する」
するとオープニングラップの最終コーナーではレイノルズのドアが開いているのを見逃さなかったコステッキが華麗にパッシング。これでエレバス陣営が早くもワン・ツー体制を築き、続くラップではアントン・デ・パスカーレ(ディック・ジョンソン・レーシング/フォード・マスタング)も同様の動きを見せたが、これが現状のチームの勢いか。レイノルズのマスタングをグラベルに押し出す結果となり、タイム加算ペナルティを課されてしまう。
この接触劇により、3番手には2010年王者ジェームス・コートニー(ティックフォード・レーシング/フォード・マスタング)が上がり、義務ピット後もマージンを維持したコカ・コーラ・バイ・エレバス艦隊がレースを制圧。後続の僚友に6秒以上のギャップを築いたブラウンは実に自身2021年以来40戦ぶりの勝利を収め、2位コステッキとともにチームへ初のワン・ツーをもたらした。
「今日はマジで速いクルマだった。ただただ懸命にドライブを続けたし、あまりにもプッシュしすぎていたから、タイヤと燃料の節約が不充分じゃないかと心配にもなったけど、本当に本当に速いクルマだった」と、TCR上陸初年度にタイトルを勝ち獲っているブラウン。
「この速さは……僕とブロディにとってかなり非現実的だ。ワン・ツーを達成できたのは本当にクールだし、ここ最近はエレバスにとって初めてのことがたくさん起こっているね!」
一方、前日の5位に続いて3位表彰台を獲得したコートニーは、これでキャリア通算の連続表彰台獲得年数を、シリーズの英雄マーク・スカイフに並ぶ18年としている。
「恐ろしいぐらい良いシーズンスタートだ。開幕からここまでクルマはつねに速かったけど、グランプリでは(アクシデントで)表彰台が逃げていった。腹立たしかったね。でもここで取り返すようにそれを入手できたのは素晴らしいことさ」と続けたコートニー。これで22年連続のクレイグ・ラウンズを見据え、早くも来季は「まずスカイフの記録を打破する」と意気込む。
「僕は今、史上最高のスカイフと並ぶ連続表彰台記録を獲得している。つまり、ラウンズ、コートニー、スカイフの並びだ! これはかなり素晴らしい成果だよ。来年も表彰台を獲得しなければならないし、彼の前に立てれば最高だね」
続いて週末最後のレース3は、ポールシッターのフィーニーがスタートでポジションを堅持すると、若さに似合わぬ落ち着きでレースを走破し、背後のエレバス陣営を寄せ付けずライト・トゥ・フラッグで完勝。今季後半の耐久カップ戦では、シリーズのレジェンドであり現在は陣営内のマネージングディレクターを務める“セブン・タイムス・チャンピオン”ことジェイミー・ウインカップとのペア継続も発表された新鋭が、早くも今季2勝目を手にした。
「最初の5周で『ああ、僕らはかなり良いクルマを手に入れた』と思った。ドライブは楽しかったし、できる限りタイヤを管理することができて、最終的にはスピードを緩められた。それは最高の経験だったよ」と、余裕のコメントも残したフィーニー。
これでランキング首位コステッキに続き、チャズ・モスタート(ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッド/フォード・マスタング)、SVG、ブラウン、そしてフィーニーのトップ5と変わった2023年のRSCシーズン。続く第4戦『ネッド・ウイスキー・タスマニア・スーパースプリント』は、南部タスマニア島を舞台に5月19~21日に開催される。
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