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レクサス UX300eを国内試乗!トヨタ初の量産型フルEVの実力を渡辺慎太郎が探る

掲載 更新 15
レクサス UX300eを国内試乗!トヨタ初の量産型フルEVの実力を渡辺慎太郎が探る

Lexus UX300e

レクサス UX300e

レクサス UX300eを国内試乗!トヨタ初の量産型フルEVの実力を渡辺慎太郎が探る

“世界のトヨタ”初の量産型フルEV

ジャガーやボルボがEV専用メーカーになると宣言したり、フォルクスワーゲンが7割の車種をEVにすると明言したり、自動車のEV化はますます加速していくように見える。肝心の「じゃあEVを動かす電気はどうやって作るのか」という問題が若干置き去りにされているようでもあるけれど、EVや電動化パワートレインが市場に占める割合が今後増えていくのは確実である。そんな中で、レクサスはUXのEV仕様であるUX300eの販売を“おごそか”にスタートさせた。

UX300eはレクサス初のBEVであると同時にトヨタ初の量産型BEVでもある。メルセデスのEQCやポルシェのタイカンやアウディのe-tronなど、“初のBEV”ともなれば大々的にそれを広くアピールするものだけれど、UX300eの場合はちょっと様相が異なる。

ワールドプレミアは2019年11月の広州モーターショーだったが大きなニュースにはならず、2020年10月末には日本国内で発売となったものの135台の台数限定だったので告知は控え目、いまではようやくフツーに買えるようになったのにそれを知る人は決して多くない。

せっかくの初物なのだからもっと積極的にアピールすればいいのにと自分なんかは思ってしまうし、だから「トヨタはEVで出遅れている」なんて記事が躍ってしまうのだろう。UX300eの出来が悪くないだけに、なおさらこうした消極的なプロモーションはちょっと残念である。

「EVは誰でも作れる」のウソ

UX300eはれっきとした自動車メーカーが手掛けたEVである。すでにあるUXの、そのEV仕様だからといって、エンジンとトランスミッションを取っ払って代わりにモーターを置き、フロア下にバッテリーを敷き詰めて完成、なんて簡単なものではない。

EVなんて誰でも簡単に作れるみたいな風潮があるけれどとんでもない。衝突安全性や耐久性の保証、経年劣化による性能低下への対応にはそれなりの経験が必須であり、だからやっぱり自分なんかは連綿と受け継がれてきた実績のある自動車メーカーのEVに絶大な信頼を寄せる。

ボディの剛性を高める理由

ボディは見た目にもスペック上でも既存のUXとなんら変わりないが、中身はUX300e専用に作り替えられている部分が多い。フロントのサブフレームは新規で起こしているし、リヤのサブフレームも強化されている。フロア下に置かれたバッテリーパックは路面からの衝撃を守るために、すのこ状の鋼鉄製アンダーフレームで覆われている。この他にもリヤバンパーの強化やステアリングギヤボックスへのブレース(補強材)追加など、ボディ剛性の向上が図られている。

EVにコンバートすると、どうしてボディ剛性の改善が必要なのか。ポイントはフロア下のリチウムイオンバッテリーにある。前席の足元から後席のお尻の下辺りまで敷き詰められたバッテリーは、そもそもそれ自体が硬い塊なので、自動的にフロア全体の剛性が上がる。それもかなり頑強になる。バッテリーをボディの構造部材の一部と捉えた場合、通常のUXのボディのままではフロア付近と前後のボディ剛性のバランスが狂ってしまうというのが主な理由である。

静粛性の高さは流石のひとこと

バッテリーはボディ剛性アップだけでなく、路面からのノイズをカットする遮音壁のような効果ももたらす。そうなると、ホイールアーチ付近などで発生するスプラッシュノイズの類(水などの跳ね返り音)が目立ってしまうので、その対策も施されているし、そもそもEVの室内はエンジン搭載車に比べると静かなので、風切り音を軽減する遮音ガラスも採用。さらに各部の遮音/吸音材の厚みや配置もあらためて見直しているという。静粛性の高さはレクサス全車に共通する特徴のひとつであり、EVになってもそこは抜かりない。

この他にも、18インチホイール装着車はEV専用のダンパーを装着することでばね上の無駄な動きを低減したり、アンダーボディをカバーで極力覆うことで床下の空気の流れをスムーズにしたり、(エンジンは入っていないけれど)エンジンルーム内が外気によって冷えすぎないよう自動開閉式グリルシャッターを設けたり、リヤブレーキのピストン/ローターを大型化するなど、かなり細かいところまで専用設計となっている。

CHAdeMOなら80分で満充電に

モーターは永久磁石式で、最高出力203ps/最大トルク300Nmを発生する。これがギヤ比を最適化した3軸のギヤトレーンを介して前輪を駆動している。バッテリーはリチウムイオンで、容量は54.4kWh。AC200Vの充電器を用いた充電時間は30Aで約7.5時間、16Aで約14時間、急速充電器では125A/50kWで約75%まで50分、満充電まで80分、WLTCモードの航続距離は367kmと公表されている。

実車の見た目は基本的にこれまでのUXと同じ風情である。よく見ると、左右のリヤフェンダー上に普通充電と急速充電のポートが置かれていたり、後席ドア下に“ELECTRIC”のエンブレムが鎮座していたりする。EVだから“ELECTRIC”とはあまりに直球過ぎて、今後レクサスのEVすべてにこのバッジが付けられるのだとしたら、ちょっとどうなんだろうかと思ってしまう。インテリアに見える景色はUXのそれだけれど、メーターのグラフィックはEV専用になっていた。そして走り出そうとシフトレバーを握ったらLCとそっくりの形状になっていて、これはなんだか嬉しくなった。

「体幹」と「均整」を重視する

腰下に重量感と剛性感があって重心が低く、スルスルと加速していく様はUX300eならでの感覚ではあるけれど、同じようなパッケージのEVはおしなべて同じようなフィーリングでもある。エンジンのように動力源での魅力の差が伝わりにくく、床下にバッテリーを敷き詰める似たような構造のEVでは、メーカーの色や味を具現するのがことさら難しい。いまはまだEVが市場を席巻するまでの過渡期という判断のもと、EVを販売するメーカーのいくつかは、EVらしさよりも内燃機を積んだこれまでのモデルのテイストを引き継ぐ商品企画としている。レクサスもまた、UX300eにはその戦略を採った。

最近のレクサスは“慣性諸元”と“体幹”にこだわっている。慣性諸元とはパワートレインやバッテリーといった質量のあるもののレイアウトによって決まる重量配分や慣性モーメントを指し、車両の運動性能に大きな影響を及ぼす。体幹とは人間の身体で言えばいわゆる胴体の部分で、胴体がしっかりしていないと手足をいくら鍛えても使い物にならないのと同じように、クルマの場合はまずはボディを構成するアーキテクチュアをちゃんと作らないとサスペンションやステアリング系がそのポテンシャルを十分に発揮できないという考えである。UX300eはEV特有のパッケージのおかげで慣性諸元はいいところに収まっているし、前述のようなボディ補強を施すことで頑強な体幹を手に入れた。

雑味のない上質な操縦安定性

それはタウンスピードで流しているときでも実感できる。ステアリングの剛性は通常のUXよりも明らかに高く、ステアリング操作とクルマの動きの間に雑味がなくなって、操舵応答性が大きく向上している。操舵応答がいいと、ボディサイズを小さく感じたり、車両重量が気にならなくなる。“version L”同士で比較するとUX300eはハイブリッドより220kgも重いはずなのに、そこまでの差は伝わってこない。これには、スロットルペダルのレスポンスや出力/トルクの特性や加減速Gの影響もある。また、加減速時に起こるピッチング方向のボディの動きの抑え方は見事だった。少なくとも「走る」と「曲がる」の質感は、ノーマルのUXよりも上質になっているように思う。

一方で、若干気になったのはブレーキのコントロール性である。特に渋滞時などに見舞われる微低速でのストップ&ゴーでは、いわゆる“かっくんブレーキ”にならないようなブレーキペダルの微妙なコントロールが難しい。回生ブレーキと油圧ブレーキのやりとりが原因なのか不明だが、ここには改善の余地が残されている。

実質的な航続距離は約250kmなので、東京からなら箱根往復ぐらいはまかなえるものの、思いつきや突発的な寄り道をするには充電(と想定以上の旅行時間)が必要となる。ただこれはUX300e固有の問題ではなく、日本におけるEV全般に共通する課題でもある。ボンネットを開けてみたらつっかえ棒で支えるしかなく、600万円もする高級車だったらダンパーくらい付けなさいよとちょっと興醒めしたのはUX300e固有の問題だけど。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/北畠主税(Chikara KITABATAKE)、Lexus

【SPECIFICATIONS】

レクサス UX300e “version L”

ボディサイズ:全長4495 全幅1840 全高1540mm

ホイールベース:2640mm

車両重量:1800kg

モーター:永久同期式

最高出力:150kW(203ps)

最大トルク:300Nm

駆動用種電池:リチウムイオン電池

電池容量:54.4kWh

トランスミッション:1段変速

駆動方式:FWD

サスペンション:前マクファーソンストラット 後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤ&ホイール:前後225/50R18

航続距離:367km(WLTPモード)

車両本体価格:635万円(テスト車:662万5000円)

【問い合わせ】

レクサス インフォメーションディスク

TEL 0800-500-5577

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みんなのコメント

15件
  • 大笑いですね。
    テスラのモデル3にも大幅に劣る性能で600万越えって・・・・。
  • このクルマは現在販売されてません。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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