ポルシェのミッドエンジン搭載車の頂点に君臨するのが718スパイダーRSである。 718シリーズとしてはおそらくこれが最後の内燃機関(ICE)搭載車となるわけだが、 500psの4Lボクサーをオープンで味わうことができる唯一のスポーツカーでもある。(Motor Magazine2023年11月号より)
スパイダーストップの開閉はマニュアル操作
ポルシェは718スパイダーをベースに、911GT3の500psを発生する4L NAエンジンを搭載した718スパイダーRSを追加した。すでにケイマンGT4 RSと同じプライスタグを付けて受注は始まっているが、デリバリーは早くても来年になるだろう。
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一方、ドイツで試乗会が開催されたのでそのファーストインプレッションをお届けしよう。
試乗車はパナジウムグレーメタリックと呼ばれる落ち着いたボディカラーで、左右にNACAダクトが開いたカーボン製ボンネット、左右フェンダーの峰に並ぶアウトレット、リアスポイラー、そしてミシュラン パイロットスポーツカップ2を履いたセントラルロックなどがスタンダードモデルとの差を際立たせている。
幸い一日中晴天との予報なのでキャンバストップを開けるが、標準のボクスターより7.6kgも軽量でシンプルな構造のスパイダートップは、ボタンひとつで開閉とは行かず、すべてマニュアル操作だ。
両サイドのフックを解除し、リアゲートを開けてリア部分を取り外してトランクの収納バッグにしまう。続いてルーフの主要部分を巻き上げフロントのフックを外してこれもトランクに収納する。このルーフ自体はおよそ8kgで取り扱いは簡単。慣れれば2分以内に脱着が可能だと言われる。
GT4 RSよりさらに軽量化。9000rpmまで続く鋭い加速
さて、こうして目の前に現れたインテリアは専用のCFRP軽量スポーツシート、各部の合わせ目はボディカラーと同色のステッチで仕上げられている。ルマン式スタートがその起源であるステアリングホイール左側のイグニッションキーを捻るとフラットシックスが目覚める。
センターコンソールのカーボンパネルから伸びる7速PDKのシフトノブで1速を選択し、軽くアクセルペダルを踏み込むと、チタンマフラーを介してスタンダードインスピレーション独特の低く、力強いボクサーサウンドが走行風に混ざって耳に届く。
さらにGT4 RSよりもなんと5kgのダイエットに成功した僅か1410kgの空車重量を達成したスパイダーRSは、まるで禽獣が獲物を捕獲するような、驚くほど鋭い加速を見せる。
1速、2速そして3速と9000rpmのレッドゾーンに向かってタコメーターの針が躍ると同時にスピードも上がって行く。それは電気自動車の唐突で短時間なものとは違い息が長く、内燃機関の楽しさを改めて感じさせてくれる。
日常使用に十分に耐える快適性も残されている
12時位置にイエローのマークが入ったステアリングホイールの操舵フィールは、センター付近ではやや抵抗感があるが、切り込んで行くとスムーズでダイレクト、フィードバックも確かでタイヤと路面の状況が手に伝わってくる。
基本的には1996年の誕生以来の前後ストラットのシャシだが、車高は30mm低められ、同時に2017年にGT3 RSのフロントアクスルを移植、さらに標準装備でPASM、メカニカルリミテッドスリップデフ、トルクベクタリングなどのモダンな制御システムが加わった結果、スポーティで敏捷な上にスタビリティも高いハンドリングが道路状況を問わず楽しめる。
ここまで書くとスパイダーRSはガチガチのオンロードレーサーかと思われるかもしれないが、やや低められたスプリング/ダンパーレートによって日常使用に十分に耐える快適性も残されている。
この718スパイダーRSはポルシェ最後のICE搭載の量産モデルとなるが、間違いなく歴代最高のパフォーマンスを持ったオープンスポーツカーだった。しかも限定生産ではなく、需要がある限り販売を続けていくと発表されている。
それでもこの価格ゆえに総販売台数は限られるはずで、すでにコレクターズアイテムの最有力候補としての名が挙がっている。(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)
ポルシェ 718スパイダーRS主要諸元
●全長×全幅×全高:4418×1822×1252mm
●ホイールベース:2482mm
●車両重量:1485kg
●エンジン:対6DOHC
●総排気量:3996cc
●最高出力:368kW(500ps)/8400rpm
●最大トルク:450Nm/6750rpm
●トランスミッション:7速PDK
●駆動方式:MR
●WLTPモード燃費:7.7km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後295/30R20
●車両価格(税込):2024万円
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